去年の暮れに発表されたスクリーモ/ポストハードコアユニットのメジャー3rdフルアルバム。
前作『CLARITY』は、本来そこまで興味を引かれるような音楽性ではない電子音多用のポストハードコアというジャンルにも関わらず、そのフックあるメロディーで彩られた良質な楽曲が魅力的で、年間ベストアルバムにも選出するほど気に入りました。
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そのため本作に対する期待もおのずと上がっていて、また前作のような適度に激しくアッパーで、それでいてキャッチーなポストハードコアを期待していました。
そして結論から言えば、その期待に概ね応えてくれる作品と言えます。
ダンスミュージックやトランス、レイヴのような電子音を多用し、バンドサウンドも適度にヘヴィで疾走感もある。密度の濃いサウンドにも負けずに通りやすい声質により、メロディーはダイレクトに響くし、頻繁に飛び出すシャウトも相変わらず攻撃的。1stから続くPassCodeらしさにブレは無く、従来のファンは変わらず満足できそう。
ただ前作『CLARITY』はあからさまなピコピコ電子音を控えめにし、より歌重視の楽曲が多く(少なくとも僕はそう感じた)、メロディー重視の僕としてはそこが嬉しかったのですが、本作はそれと比較するとややトリッキーな楽曲が多い。
特にアルバム前半にその傾向が強くて、過去の楽曲「MISS UNLIMITED」を彷彿させるM1「SPARK IGNITION」は、サビメロのキャッチーさは実にわかりやすいのですが、中盤の目まぐるしい曲展開は一筋縄ではいかない、本作を象徴するような曲。
その後も1曲ごとにコロコロとテンポチェンジし、メロディーも結構な数にのぼる。これはこれで面白い曲になっているし、メロディーがキャッチーなので充分に聴けるんですが、個人的には前作くらいストレートに歌を聴かせるスタイルの方が好みだったかな。
その流れが変わるのが1分半のショートチューンであるM5「Yin-Yang」から。この曲は短いのがやや残念ながら、キャッチーなギターフレーズに爆発力と哀愁を同居させたサビが強烈な疾走ナンバー。そこから本作中抜きんでて爽やかなポップさを持つM6「ATLAS」に、ダンスミュージックっぽいリズムに何とツインリードが乗り(このギターをじっくり聴きたいからヴォーカルは被せないでほしかった)、その後の疾走パートも文句なしにカッコいいM7「Stealth Haze」へと続く。
この3曲が本作屈指のキラーチューンであるので、前半の「良いんだけど、前作のわかりやすい痛快さに比べると少し物足りないかな...?」というちょっとしたモヤモヤを一気に解消してくれるのが強いですね。
楽曲の完成度はおしなべて高く、曲調に多彩さを出しつつも、一本芯の通ったPassCodeらしい作風はしっかりと貫いているアルバム。前作のストレートさの方が好きではありますが、こちらもまた充分に良作と言えますね。
個人的に本作は
"従来のサウンドイメージとクオリティーは一切変えず、より多彩でトリッキーな展開を目立たせた作品"
という感じです。