メジャーデビュー後の1stアルバム『Termination』でロックシーンに鮮烈なインパクトを与えた9mm Parabellum Bulletが、そのわずか一年後にリリースした出世作ともいえる2ndフルアルバム。
前作の段階で、攻撃的なエッジを持つハードな演奏と、どこか古さを感じさせるような歌謡メロディーを融合させた、彼らならではの個性を出すことに成功していたのですが、本作をもっていよいよ本格的に9mmサウンドの方向性が決定づいたような感じです。
というのも、前述した彼らのサウンドの特徴のうち、攻撃的な演奏は据え置きで(音質の関係か、むしろギターリフの鋭さは前作の方が上かも)、そのうえで何と歌謡曲に通じる哀愁のメロディーを大幅に増量させたのです。
そのメロディアスさたるや、もはややりすぎと言ってもいいレベル。メタルやポストハードコアから影響を受けたテクニカルなアンサンブルと、凄まじい手数で連打されるドラムはさすがの一語ですが、それらのインパクトが霞んでしまうほどにメロディーが前面に出てくる。
そう、本作こそ9mm Parabellum Bulletというバンドの最大の魅力であり特徴の、ダサさが完全に開花したアルバムなのです。垢抜けない卓郎さんのヴォーカルで歌われるその歌メロ、サビにて繰り出される滝さんのリードギターの旋律やフレーズ、そのすべてが強烈に昭和歌謡クサく、ダサい!!
M1「Wanderland」から、早速テクニカルさ以上にメロディーの豊かさが目立った壮大な一曲。ヴァイキングメタルにも通じるようなメロディーに酔わされた後、本作のリードトラックであり、ダサい9mmを象徴するキラーチューンM2「Vampiregirl」へと続く。
イントロのリードギターから何とも言えないクセのあるフレーズを飛ばし、いかがわしさ満載の語りを挟んで、トドメとばかりに"You're Vampiregirl!"のシンガロング!ダサい!!それがいい!!!
ノイジーな歪みで狂ったように唸るサウンドに、怒涛のドラミングが重なるカオティックなM3「Trigger」、メチャクチャキャッチーなサビメロが飛び出すも、高速タッピングによるテクニカル要素も入れ込んだM4「Keyword」、やっぱりどこか垢抜けない哀愁に満ちたヴォーカルとギターフレーズで爆走するM10「We are Innocent」など、激しさの中にも芳醇な歌謡性がたっぷり。このメロディーの中毒性は尋常ではない。
その優れた楽曲の中でも、最たるものがM7「Supernova」とM12「Living Dying Message」の二曲。前者はインパクト絶大なツインギターに始まり、クリーンな伴奏とともに淡々と進んでいくものの、サビになると哀愁ダダ漏れ・フック満載のメロディーと共に、タカが外れたように爆走!後者はのっけから本作最高レベルの歌謡曲めいたメロディーをリードギターがド派手に奏でる!ヴォーカルもいなたさMAXで、ラストはツーバス連打とシャウトで突っ走る!
正直ここまでくると「ダサすぎて聴くに堪えない」というリスナーがいたんじゃないかと思うんですが、やはりこのやりすぎなまでのメロディアスさこそが9mmらしいと感じますね。
海外のポストハードコアやオルタナティヴロックのシーンからは決して生まれないであろう、近代日本のロックの名盤。彼らは他にも多数の作品を発表していますが、彼らの強みである"ダサさ"を堪能したいのならまずはこれでしょう。
個人的に本作は
"ハード&テクニカルな演奏に加え、過去作から覗かせていた歌謡曲的センスが全開になった、ダサかっこいいの究極系"
という感じです。
9mm Parabellum Bullet - Supernova