前作『VAMPIRE』で"ダサい"というアイデンティティーを完全に確立し、商業的にも成功。日本武道館公演を挟み、シングル曲「Black Market Blues」で地上波進出も果たした(当時のMステ、リアルタイムで見てました。地上波テレビでクラウドサーファーの姿が映されたのを覚えています)9mm Parabellum Bulletが、破竹の勢いそのままにリリースした3rdフルアルバム。
そんな本作、前作とはまたちょっと異なる方向性に進んでいることを実感させてくれるアルバムになっています。
一言でいうと洗練された印象。前作までにあったどこか垢抜けない野暮ったさはだいぶ払拭され、音質もよりクリアに。卓郎さんのヴォーカルも独自の味は残しつつ、多少たくましくなったように聴こえます。
そしてメロディーラインも、全体的にストレートなカッコよさを打ち出したものになっています。もちろん前述したシングル曲であるM5「Black Market Blues」のようなメチャクチャにダサい9mm節が炸裂した曲もありますが、多くの楽曲であからさまな歌謡曲っぽさは明らかに減退。
メロディー自体はキャッチーなままで、ダサい歌謡曲の要素を減退させた本作は、一般的なJ-ROCKリスナーにはかなりとっつきやすくなったのではないでしょうか。演奏の上手さは相変わらずで、ロックとしてのダイナミックさも担保された本作もまた、充分に良作といっていいでしょう。
ただやはり彼らのやりすぎなまでのダサクサいメロディーに魅力を感じていた者としては、ちょっと寂しくなってしまったというか、クセになるほどの中毒性は少し薄れてしまったかな~という感じです。まあ垢抜けなさを払拭したため、客観的な楽曲の完成度は明らかに向上しているので、そこの両立はなかなか難しかったということか。
とはいえ上記したM5を始め、ダークで怪しいムードに包まれた大作M6「命ノゼンマイ」、前作で花開いたダサいリードギターの強みを活かしたイントロから、強烈な哀愁を帯びたヴォーカル、アウトロのドラマチックなツインリードに痺れるM7「光の雨が降る夜に」(名曲!)、歌謡曲風味に加え、どこか官能的な印象も植え付ける展開が怪しさ全開のM8「Finder」、メインのメロディーを堂々となぞるイントロのギターからインパクト抜群のM9「キャンドルの灯を」と、後半に一気に仄暗い哀愁のメロディーの保有率がグッと上昇。このメロディアスな楽曲の連打が素晴らしく良い。
そしてラストのM10「The Revolutionary」、落ち着いたヴォーカルワークから発せられる劇的なメロディーラインと、圧巻のツインリードで盛り立てる本作随一のドラマチックな楽曲で、アルバムの最後を締めくくるに相応しい名曲となっています。
彼ら特有のダサいメロディーで胸をガシッと掴まれるような衝撃はやや薄らいでいるのは認めざるを得ませんが、終始マイナーキーで彩られた哀愁を帯びたメロディアスさはやはり強烈。M5、M7、M10といったキーとなるキラーチューンもしっかり生み出せるバンドの強みが遺憾なく発揮された一作です。歌謡曲要素は減退しましたが、9mmらしさは色濃く残っているのが嬉しいですね。
個人的に本作は
"歌謡曲に通じるダサさは目に見えて減退。哀愁溢れるメロディーと、派手な演奏による9mm節は健在"
という感じです。
9mm Parabellum Bullet - Black Market Blues