- ギターシンセで最大級にモダンでポップに
- どの曲にも息づく良質なキャッチーさ
- IRON MAIDENらしさはまったく損なわれていない
前回ヘヴィメタルの代表格であるJudas Priestを取り上げたので、それと並ぶメタルの顔となる存在についても書こうと思い立った次第です。
ヘヴィメタルというジャンルのトップの座を不動のものとする、みんなお馴染みIRON MAIDEN。彼らが1986年に発表した6thフルアルバム。『Seventh Son Of A Seventh Son』『Fear Of The Dark』と並んで、特に完成度が高いと思っている名盤です。
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リリースした当時はギターシンセが大々的に導入されているという点で、賛否両論分かれたらしいんですけど、それ本当なんですかね?サウンドこそモダンな質感になっているとはいえ、メイデンらしい楽曲のオンパレードだと思うのですが。
この問題の(個人的には問題でもなんでもないですが)ギターシンセの音色ですが、M1「Caught Somewhere In Time」から早速大々的に鳴り響き、ジャケットから想起されるサイバーパンク的というか、近未来的な世界観を演出するのに大いに役立っている感じです。
さらに全体的にポップというか、聴きやすいキャッチーさがかなり強くなっていますが、このポップさもあざとい売れ線メロではなく、メタルとして相応しい壮大な印象を損ねないもの。メイデンらしいプログレッシヴな展開を持ったメタルサウンドを、小難しさを抱かせないように聴かせることに作用しています。
全8曲で50分超えということで、1曲ごとの時間は決して短くはないのですが、この一聴して魅力が伝わる良質なメロディーのおかげで、冗長な印象はほぼない。今の彼らもこの頃の作曲能力があればなあ...(ーoー)ボソッ
前述のM1はもちろん、M2「Wasted Years」もサビのブルースの歌唱がとても雄大に響く名曲だし、続くM3「Sea Of Madness」も劇的なメロディーを奏でるギターとヴォーカルのコンストラストが実にカッコいい。さらにポップさに比重を置いた軽快なM4「Heaven Can Wait」も良い感じ。
そしてメイデンらしい荘厳なイントロから緊張感を高め、性急なリフと弾むベースラインで駆け抜け、ドラマチックなサビの歌メロでリスナーの胸を射抜くM5「The Loneliness Of The Long Distance Runner」は、中盤の山場を見事に彩る名曲。サビ終わりのギターソロの旋律も、美しくキャッチーで最高なんだな。
その後後半に差し掛かっても緊張感は途切れることなく、軽快さの強い本作の中では、割とズンズン重めに進むM6「Stranger In A Strange Land」、本作イチわかりやすいキャッチーさが耳を引く、文句なしにカッコいい疾走曲M7「Deja Vu」、長尺のギターソロを絡めてラストを壮大に締める大作M8「Alexander The Great」と名曲のオンパレード。
とにかく全曲に渡って非常に聴きやすいキャッチーさがありつつ、安っぽくならないメロディーに満ち溢れており、各曲ごとの仕上がりの良さが際立つ。そのうえでどんなにポップになっても、従来のメイデンらしいと感じる曲調には何ら変わりがないときたもんだ。
「The Evil That Men Do」「Fear Of The Dark」のようなアルバム中ひときわ輝く図抜けたキラーチューンはないですが(しいて言えばM5かM7)、曲の平均点で言えば本作が一番高いかも。
個人的に本作は
"モダンなサウンドを導入しても、メイデンらしさは変わらない。聴きやすいメイデンの理想形"
という感じです。
Iron Maiden - Wasted Years (Official Video)