- ヴォーカルの危機を乗り越えた起死回生のアルバム
- より強靭になったリフとメロディーの応酬
- 曲調が広くなりメタルコアっぽさはほぼほぼ消滅
前作『The Poison』で一躍脚光を浴びる存在となったBFMV。ヴォーカルのマットが喉にトラブルを抱え、一時は歌うことができなくなるかもしれないというところまで症状が進んでしまうものの、その危機を乗り越えて制作された2ndフルアルバム。
前作はエモ的なメロディーラインが目立ちつつ、メタルコアとしてのアグレッシヴなリフワーク、粗野なシャウトが飛び交う攻撃的な作品でした。続く本作ですが、サウンド全体から感じられる活きの良い突進力はそのままに、よりクリーンヴォイスによるメロディアスさを強調。メタルコアというよりも王道のメタルらしさを強めたリフの出番が多くなり、コアな音楽性からより大衆性の高いサウンドに変化しました。
またシャウトを減らした影響なのか、メロディーラインの質感自体が変わったのか、前作に比べると全体的に明朗な印象を与える作品になっている気がします。なんだかんだ前作はアングラっぽさが感じられましたが、本作に至ってはコアなバンドとしてのアングラ感は一掃されています。
メタルコアリスナーとしてはこの変化は必ずしも好ましいものではないかもしれませんが、僕個人としては、この王道ヘヴィメタル路線はむしろ望むところ。楽曲のバラエティーも広がったため、ダーク一直線ではないメロディアスなメタルとして大いに楽しめます。
オープニングを飾るタイトルトラックM1「Scream Aim Fire」は、キレのあるリフと疾走感、前作のメタルコアの要素を残したリズム落ちパート、荒っぽいシンガロングにエモ的なキャッチーさを放つメロディーと、彼らの強みが100%発揮された代表的キラーチューン。ライヴでもお馴染みの曲であり、もちろん僕も彼らの楽曲の中で1, 2を争うほどに好きなナンバーです。
M1の勢いをそのまま受け継ぐ疾走エモメタルM2「Eye Of The Storm」、強烈なシャウトでAメロを飛ばし、サビになるとどこか怪しく、そして美しく響くメロディーで圧倒するM4「Waking The Demon」、本作中最も切れ味鋭い殺傷能力を秘めたリフが抜群にカッコいいM10「Last To Know」など、攻撃的な楽曲では有無を言わせぬ勢いでリスナーに迫ってくる。
その反面、メタル要素のほとんどない爽やかエモのM3「Hearts Burst Into Fire」、メロディーは穏やかさを保ちつつ、メロコアのような軽快な疾走を見せるM6「Deliver Us From Hell」、アメリカンハードロックばりにカラッとした爽快メロディーで締めるM11「Foerver And Always」など、前作路線ではなかなか作り得なかったであろう楽曲の存在感も強い。
総じて前作からすべての面でワンランクアップしたような、メジャー級のクオリティーを得たエモメタルの好盤と言えますね！もはやメタルコアとは呼べない音楽性ですが、このキャッチーさと適度なハードさのバランスが心地良いです。
個人的に本作は
"メタルコアとしてのアングラ感を払拭し、リフ・ギターソロ・メロディーをより正統的なメタルらしくクオリティーアップさせた作品"
という感じです。
Bullet For My Valentine - Scream Aim Fire (Official Video)
