- 前作からさらにコンパクトなエモ路線に
- メロディー、攻撃力共にワンランクダウン...
- シンプルかつソリッドな楽曲はまだ魅力的
前作『Fever』で全米チャート3位にランクイン、AVENGED SEVENFOLDなどと並び、新世代ヘヴィメタルバンドの顔役となったBULLET FOR MY VALENTINEの4thフルアルバム。
この作品、いろいろなレビューサイトなどで「微妙」「もはやメタルとは言えない」「ただのエモバンド」などなど、だいぶボロクソに言われている感のアルバム。商業的な成果も前作に及ばなかったっぽいし、なかなか厳しい1枚とされているようです。
本作がリリースされたとき、ちょうど僕は大学受験の真っただ中。札幌から関東の大学を受験するため東京にきており、初めて渋谷のタワーレコードに足を運び、その店舗の規模にウキウキしながら(札幌PIVOT店もそこそこ大きな店でしたが、やはり旗艦店は格が違った)本作の店展開を見ていた記憶があります。
まあ当時は今ほどメタルどっぷりではなかったしバイトもしてない学生の身だったので、このアルバムも多少気になりつつスルー。聴いたのは思いっきり後追いです。
そして僕個人の感想としては......うん、確かに微妙だ(笑)
前作『Fever』と比べると、音作りの変化か、ギターリフの鋭さは増しているように聴こえる。マットのクリーンヴォーカルも、中音域がしっかり安定した歌唱を聴かせ、楽曲の完成度自体は普通に高い。決して駄作と切り捨てるアルバムだとは思いません。
しかし、いかんせん勢いが弱い。普通のエモコアバンドに比べればまだ気合いの入ったメタルサウンドを出しているのかもしれませんが、前作までの彼らから感じられた勢いがだいぶ落ち、全体的に小さ~くまとまってしまっている。前作のパワーを10とすると、本作は7と8の間くらいだろう、という仙水みたいなことを言いたくなってしまう(仙水は6と7の間くらいだったけど)
何というかサウンドから放たれるパワー、突進力、メロディーのキャッチーさを、すべてワンランクダウンさせたような楽曲ばかりで構成されているんですよね...。一言で言えば、従来作にあった魅力が薄まったアルバム。
そのわかりやすい例が、1st収録の「Tears Don't Fall」の続編となるM10「Tears Don't Fall (Part 2)」。曲展開などモロに焼き直しの曲で(続編だから当然でしょうが)、メロディーも疾走感もPart 1を超えているとはとても思えない。決して悪くはないんですけどね...
とはいえ、タイトルトラックとなったM3「Temper Temper」や先行シングルのM8「Riot」などは、シンプルだからこそ伝わるストレートなカッコよさに満ちた良曲だし、M6「Leech」の弾むような軽快なヴォーカルワークはなんだかんだノせられるし、曲自体のクオリティーは低くはないです。
前述のM8を始め、一部の曲ではなかなかにドラマチックなギターソロを披露しているし、メタリックな要素を持つエモロックとして聴けば、程よくカッコよく、キレのあるバンドサウンドが聴けるアルバムとして評価できるかもしれませんね。
...まあBULLET FOR MY VALENTINEというバンドに「程よくカッコいいエモ」なんか期待していないのですが。エモとして聴くにはメロディーのキャッチーさが足らんし。
この出来でも最新作『Gravity』に比べれば全然良いと言わざるを得ないあたりがキツイところだな...
個人的に本作は
"適度にアグレッシヴなメタリック・エモ。従来作の突き抜けた魅力は希薄化..."
という感じです。
Bullet For My Valentine - Temper Temper