- 見事なフックを持ったメロディーが最大の魅力
- 歌メロを彩るヴォーカルも輪をかけて強力
- ヴォーカル面に比べバンドサウンドの主張は少し控えめ
AMARANTHEフォロワーといえるモダンなエレクトロ風味のサウンドを武器に、Evoken Fest2017で来日公演も行った、イタリア出身のモダンメロディックメタルバンド・TEMPERANCEが去年発表した5thフルアルバム。
Evoken Festでのライヴは僕も代官山UNITで観たのですが、当日は風邪で体調を崩しており、狭小なライヴハウスにすし詰め状態という劣悪な環境、しかも後ろの方で観ていたために、前の人の頭と頭の間からちょっとだけ女性ヴォーカルが確認できたというだけなので、どんな曲をどのくらいやったかとかは全く記憶にないです...
そんな体たらくだったので、このバンドが新作を出したことを知っても、FREEDOM CALLを観る前に早退した苦い記憶を呼び起こすだけなので、特にチェックしようという気が起こりませんでした。
そんな僕がなぜ一年経ってから本作を聴いたのかというと、リードトラックであるM4「My Demons Can’t Sleep」がメッチャクチャ良かったからです。男女混合による豊かなヴォーカルが繰り広げる、スケール大のダイナミックなサビメロは僕のハートをガッチリと掴みました。仕事終わりにダッシュでタワーレコードに直行しましたとも。
そしてアルバム全体としても非常に優れた出来だなと。これは去年聴いてたら年間ベストにランクインさせても良かったのではと思うほどですね。
とにかく歌メロが良いのです。ときにヘヴィさを押し出したり、ときにエレクトロっぽいモダンなサウンドが顔を出したり、さらにはシンフォニックサウンドも使用したり、はてはバスドラ連打で疾走したりと、一本化されない程度のバラエティを持たせつつ、どの楽曲にも非常にキャッチーでフックのあるヴォーカルメロディーが際立つ。
そしてその歌を担当する男女ヴォーカルが実力派揃いなのも頼もしいですね。高音域で伸びやか、かつ力強く響き渡る女性ヴォーカルに、パワーよりも深みや味わい深さが目立つ男性ヴォーカル。良いヴォーカルが良いメロディーを歌う、それで悪い曲になるわけがない。
前述したキラーチューンM4はもちろんのこと、メロディアスなツインリード(どことなく往年のIN FLAMESっぽい?)で幕を開けるメロディックメタルチューンM2「I Am The Fire」、荘厳なサビのコーラスがインパクト大のM5「Viridian」、いきなりバスドラ連打で疾走し、これまた分厚いコーラスでゴージャスな雰囲気をプンプン漂わすM8「The Cult Of Mystery」、どこかフォークメタルにも通じるようなシンフォサウンドと、ドラマチックなサビの合唱で圧倒するM9「Nanook」など、どこを切っても素晴らしいメロディーの応酬。ここまで劇的な楽曲を生み出せるバンドだとは思ってもいませんでした。
歌メロが良いということは、ヴォーカル重視のバラードナンバーの出来も良いということ。特にM7「Scent Of Dye」の儚く美しいシンフォサウンドと、より深みをたたえた男性ヴォーカルが紡ぐサビの旋律は見事という他ありません。
不満点を挙げるとするなら、M1「Mission Impossible」がモダンなヘヴィリフを重視した曲で、中盤の流れを変える働きを持たせるのならまだしも、オープニングにするのはちょっとツカミとして弱いのではないかという点。
もう一つはヴォーカルに注目してしまうのも要因の一つですが、楽器陣の主張がそれほど強くないので、バンドサウンドがちょっと印象に残りづらい点でしょうか。ところどころメロディックなソロとかも弾いてくれますが、楽器もヴォーカルと対等に主張できるメタルというジャンルだけに、もう少し技術的なエゴを出しても良かったかな。とはいえあまりに主張しすぎて、せっかくのヴォーカルパートの存在感を削いでしまうより遥かにマシなのは言うまでもありません。
モダンメタルとしてできる色々なスタイルに手を出しサウンドの幅を広げつつ、メロディーの良さ、ドラマチックさという点で非常にクオリティー高くまとめ上げたアルバムと言えるでしょう。歌メロ重視のリスナーは必聴盤。
個人的に本作は
"サウンドのバラエティの豊かさに、キャッチーかつ劇的な歌メロ、実力派男女混声ヴォーカルを加えたモダンメロディックメタルの名作"
という感じです。
TEMPERANCE - Start Another Round (Official Video) | Napalm Records
TEMPERANCE - My Demons Can't Sleep (Official Video) | Napalm Records
名曲!去年聴いてたら年間ベストチューンに選んでいたはず。