- ヘヴィリフとシャウトが大幅増量
- でもメタルらしさは依然として少なめ
- モダンな歌ものロックとしての方向性をキープ
デスコアという限られた人間にしか聴かれないような音楽性からスタートし、アルバムを重ねるごとに大衆的な要素を増強。そして一昨年発表のフルアルバム『Amo』において、エクストリームな音像から完全に脱却、全米・全英チャートで1位を獲得し、グラミー賞にノミネートされるなど、すっかり現代のロックシーンのアイコンと呼べる存在になったBRING ME THE HORIZON。
配信という形で去年10月に、CD形態では今年になってようやくリリースされた本作は、全9曲入りのEP。なんでも『Post Human』というタイトルで4枚のEPをリリースするプロジェクトが始動しているんだとか(ヴォーカルのオリヴァーは「アルバムは制作するのにスゴくたくさんの時間を要するんだ。2年間も曲を作り続けるなんてことはもうやりたくないんだよ。ハード・ワークすぎるよ。太陽の光も見ないでうちにこもって毎日制作するなんて嫌だよ。」と思いっきりインタビューで嘆いてました/笑)
本作は多くのゲスト・ミュージシャンを迎えて制作されているのも大きな特徴で、日本のリスナーとしてはやはりBABYMETALの参加が一番の注目ポイントですね。2019年のBABYMETALのライヴにゲストアクトとして来日したり、対談形式のインタビューを受けるなど、以前から親交があったようです。BABYMETAL以外だと、恥ずかしながらEVANESCENCEのエイミー・リーくらいしか知ってる人いなかった...
前述の通り、前作『Amo』では思いっきりヘヴィネスを後退させた作風で、メタル要素は微塵も残っていないロックアルバムに仕上がっていましたが(そういうバンドだと割り切ってしまえば、決して悪い作品ではないと思っています)、本作では怒りの感情をベースとした作品であるためか、ヘヴィで攻撃的なリフ、ヒステリックなシャウトというエクストリーム要素がかなり存在感を増しています。
まずオープニングであるM1「Dear Diary,」がシャウトでアグレッシヴに突き進む、ツービートの爆走チューンであることにまず驚き。初っ端からテンションを底上げしてくれる実に良い幕開けですが、メタルというよりかは、激情ハードコア系の音像なのでメタルヘッズに受けるかは微妙かも(まあ今更彼らにメタルであることを求めてる人なんかいないでしょうが)
楽曲全体で見れば、前作で提示したデジタルサウンドや、モダンでポップなヴォーカルワークを闇鍋的に混ぜ込んだ、独自路線のオルタナティヴロックが根底としてある感じ。『Amo』をより直情的で攻撃的なロックに磨き上げたような印象を受けます。
重心の低いヘヴィなパートでヘッドバンギングを誘発させ、緊迫感あるヴォーカルの掛け合い、シンガロング必至のサビで魅了するM4「Obey」、インダストリアルメタル的な質感を持ったバッキングのサウンドに、SU-METALによる日本語歌唱のインパクト、歌メロのキャッチーさが秀でたM6「Kingslayer」が個人的にお気に入り。
攻撃的なサウンドが目立つようになったとはいえ、決してデスコアやメタルコアが好きなリスナーが満足するような作風ではありませんが、モダンな歌もののロックと、シャウトによるアグレッシヴなパートの溶け合い振りはなかなか魅力的。収録時間の短さも相まって、スッキリ楽しめるEPになっていると思います。
個人的に本作は
"前作の闇鍋的モダンロックの方向はそのままに、ヘヴィロックとしての攻撃性をうまくブレンドしたバランスの良い作品"
という感じです。
Bring Me The Horizon - Dear Diary, (Lyric Video)