- 良くも悪くも3ピースらしい音作りに
- 必殺の哀愁メロディーと美しいヴォーカルワーク
- 爆走しまくりではなく曲調はバラエティー豊かに
locofrank、Hawaiian6という盟友と共に作り上げたスプリットアルバム『THE ANTHEMS』(もちろん僕も発売と同時に買い、渋谷の100円ショップにも足を運びました。タオルは未だに使ってます)で国産パンクシーンに新たな波を起こしたdustbox。そのスプリットからほとんど間を置かずにリリースした2013年作の7thフルアルバム。
正直『THE ANTHEMS』の楽曲は、彼らにしてはややパンチの弱いものが多く、本作の出来栄えにはちょっと心配していたのが本音。しかしいざリリースされてみたら、そんな懸念なんか吹き飛ばすほどの快作に仕上がっていました。
『Seeds of Rainbows』『Blooming Harvest』と比べるとやや音質は軽めで(ギターを何本も重ねて音圧を増すのはライヴで再現できないからか)、よりストレートなメロコアに近い感じになっています。この音作りには少し寂しさというか、物足りなさを感じるかもですが、まあ3ピースバンドらしいと言えるでしょう。ほどよく肩の力が抜けたような印象。
クリアなハイトーンヴォーカルで、ポップな中に強烈に切なくなる哀愁を帯びたメロディーを歌い上げ、パンクとは思えないほど美麗なコーラスで彩る、というdustboxの根幹となる音作りは当然変わらない。すべての曲において美旋律がこれでもかと封じ込められ、それが軽快な疾走感で駆け抜ける。
イントロから続くM2「1+1=∞ -One Plus One Is Infinite-」~M3「Rewrite」~
M4「Riot」という"美メロメロコアdustbox"の王道とも言うべき必殺の3曲で、出だしからグイグイとテンションを上げていく。
「Wall of Ice」に通じるエモ的な質感を持った哀愁がメインのM6「The Red Sun And The Blue Moon」、より軽快なリフでポップに弾けるM9「Dance Until Morning」、ジリジリと盛り上がっていく叙情リフからアップテンポに展開し、浮遊感あるサウンドとコーラスで彩るM12「Like A Phoenix」、ハードコアパンクと叙情メロコアの融合といえる爆速ナンバーM13「Want A Kanojo」など、単純な疾走メロコアでは語れないバラエティーを保持しながら、根底にあるdustboxらしいメロディー、美麗なクリーンコーラスは一本芯が通っているかのように変わらず。
これまでのアルバムにあった「Try My Luck」「Tomorrow」「Jupiter」「Break Through」のような、アルバムを代表するキラーチューンは無いものの(しいて言えばM8「We Will Surely Meet Again」か)、楽曲の平均点の高さは過去作に何ら劣るものではありません。これまでの作品が気に入っている人や、メロコアに胸焦がす哀愁を求めている人には相変わらずマストと言える充実作。
個人的に本作は
"哀愁たっぷりのメロディーのセンス、叙情性を強化するコーラスは変わらず、重厚さを抑え軽快なメロコアらしい音作りに近づいた"
という感じです。