- メロが弱いぞ!どうしたダスト!?
- ストレートなメロコアとしての質はちゃんと担保されている
- 最後の最後に強烈なキラーチューンが!
長年にわたりバンドのドラムを担当してきたREIJIさんが脱退。新たなドラマーであるYU-KIさんを迎え入れて、ミニアルバム『skyrocket』を挟んでからの、新生dustbox初のフルアルバム。
ガチのメタルファンであるため、メタルからの影響が非常に強い怒涛のドラムビートをブチかまし、バンドの個性に大きく貢献していたREIJIさんですが、そんな存在が抜けた穴を埋め、かつキャリアも人気も上の先輩バンド、そして自分があまり経験してこなかったメロコアというジャンルをプレイする、という役割を与えられたYU-KIさんのプレッシャーたるや、相当なものだったと思われます。
やはりアグレッシヴな突進力と連打を見せたREIJIさんのドラムと比べると、YU-KIさんのドラムは概してシンプル。テクニカルな印象もさほどではなく、良くも悪くもストレートになった感じがあります。そのことをして聴き劣りするという評価がされるかもしれませんが、プレイ自体に不足は無く、よりメロコアらしいシンプルさを表現しているとも言え、大きくマイナスになってしまっているということはありません。
メンバーチェンジ後初のフルということでフレッシュな気持ちになったのか、楽曲はすべて3分未満という潔さ。ド直球の疾走ナンバーから、メロウなヴォーカルを聴かせるミドル、性急なハードコアらしさを追求した曲、弾むようなリズムでポップさを表現した曲と、彼らの楽曲レパートリーをしかと踏襲した楽曲が立ち並びます。
やはりメンバーが変わろうが、20年近くのキャリアを積んで、スタイルを確立してきたバンドですから、今更個性が変化することなんかはあり得ません。
......しかし、僕は本作を聴いて、過去作と同様に心から満足がいっているのかというと、ちょっとそうとは言えないのです。前述の『skyrocket』を聴いたときにも、薄々感じていたのですが、本作にはかつての作品と比べると一点、どうしても物足りないことがある。
それはヴォーカルメロディーの哀愁度。非常に切なく、熱く胸を揺さぶってくる叙情性は、dustboxの最も大きな強みと言っても過言ではない点。これが「おい!dustbox!いったいどうしたんだ!?」と言いたくなるほど薄い。
もちろんそんじょそこらの無個性メロコアと比べれば充分以上クオリティーは高く、クリーンなヴォーカルパフォーマンスは相変わらず魅力的。その辺のセンスが失われたわけでは決してない。
しかし彼らはメロディーのキャッチーに関して、図抜けたものを常々感じさせてくれたバンド。それだけに本作の全体的なフックの弱さはかなり気になってしまうというもの。M7「Broken Toy」、M10「Maze -Struggling In The Darkness-」、M12「Refrain」あたりは、まだ従来の彼ららしい叙情性が強く出た楽曲と言えます。とはいえそれでも、過去のキラーチューンと比べると一歩劣ると言わざるを得ない...
ただ、アルバムのラストを飾るM13「Twilight」はイントロのギターフレーズ、SUGAさんによる甘く綺麗なハイトーン、サビ前で交錯するヴォーカルとコーラス、切なく美しい余韻を残すアウトロに至るまで、すべてにおいて極上の哀愁メロディーが堪能できる、dustbox節100%の疾走キラーチューン!この曲のおかげで聴き終えた時の印象が抜群に良くなるのですが、なぜ他の曲にもこの曲のようなフックあるメロを取り入れなかったのか...
前にも述べた通り、メロコアとしての客観的なクオリティーは普通に高いんですけど、いかんせん泣きのメロディーが全体的に弱い。これに尽きる。これまで名盤ラッシュであった彼らのフルアルバムにおいて、初めて期待を超えてこなかった作品になってしまった感があります。決して悪い作品ではないんですけど、彼らに「悪くない」レベルのアルバムは求めていませんからね...
個人的に本作は
dustboxらしい楽曲の骨組みは何ら変わらない。しかし泣きの哀愁、叙情美メロディーの質は過去作に比べだいぶ劣る..."
という感じです。
dustbox "Dive"『Thousand Miracles』2017.02.08