ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

SECRET SPHERE 『Lifeblood』

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  • オリジナルヴォーカリスト・ロベルト電撃復帰
  • 疾走感を主軸としたシンフォニック&メロディックスタイル
  • メロディーの聴きごたえの良さが強み

 

イタリアのメタルシーンにおいて長いキャリアを持ち、必ずしもシーンのトップバンドという位置づけにはいなくとも、数度の来日を経験するなど、日本でもそれなりに知名度と人気を維持するSECRET SPHERE

 

2020年に、それまでヴォーカルを担当していたスーパーヴォーカリストのミケーレ・ルッピが脱退するという事件が勃発。その後フロントマンとして白羽の矢が立ったのは、バンドのオリジナルヴォーカリストであるロベルト・"ラモン"・メッシーナ

 

僕は彼らのライヴを観たことはありませんが、YouTubeにある彼らの来日時のライヴ映像、これを見ただけでミケーレ・ルッピという人がどれほど優れたヴォーカルだったのかというのがわかります。生で聴いた人は仰天したんだろうな。

 

 

 そんな実力派ヴォーカルを失ってしまった彼らですが、戻ってきたロベルトは、それはそれで良いヴォーカルであると思っているので(というかロベルト在籍時のアルバムしか聴いたことない)、本作の出来に関してはそこそこ期待していました。

 

そしてその期待には十分に応えてくれる良作と言っていいのではないでしょうか。適度にシンフォニック系の壮麗なキーボードがバックのアレンジを彩り、突き抜ける疾走感で駆けていくメロスピ。ギターの速弾きパートなどにそこはかとなくプログレッシヴメタルの要素も交えつつ、基本線はSTRATOVARIUSのようなメロディアスなスタイル。

 

ロベルトのヴォーカルも、どこか爽やかといえるような透明感ある、ピュアなメロディックメタルにマッチしていて、伸びやかなハイトーンから低音の堂々とした歌唱までしっかりとこなしている。ミケーレ・ルッピのヴォーカルを重要視していた人の評価はわかりませんが、過去作をほぼ聴いてきてない僕からすると、ヴォーカル面での不足は無いといっていい。

 

何より楽曲の良さが好感触の決め手ですね。疾走曲を多めに取り揃えつつ、ミドルチューンにおいても、キーボードによる美しいサウンドのアレンジと、豊かなヴォーカルメロディーで聴きごたえのあるものにできているのが強いです。

 

M3「Life Suvivors」の映画音楽のようなシンフォニックアレンジで描かれる緊迫感、M6「Against All The Odds」の開放感あるポップなメロディーと、スケールをさらに増強させる豪華なコーラス、M8「The Violent Ones」の青臭くエモーショナルなリフと、不穏さを演出するヘヴィなリフの交錯、非常にキャッチーで爽やかなサビと、疾走曲以外の楽曲の平均点がなかなか高い。

 

バラードであるM10「Skywards」は、アコースティックの美しい調べと、女性ヴォーカルとのデュオで進む曲で、この切ない感傷的なメロディーと後半のギターソロがよく響きますね(ただこの曲はミケーレ・ルッピの極上な歌唱力で聴きたい気持ちはある)

 

そして疾走曲の出来ももちろん良い感じ。ミドルチューンのメロディーも良いので、飛びぬけたキラーチューンという印象は薄いものの、タイトルトラックのM2「Lifeblood」は壮大なサビのメロディーで疾駆するメロスピチューンだし、よりシリアスな哀愁を聴かせるM5「Alive」、ネオクラシカルなキラキラシンセで幕を開けるM9「Solitary Fight」と、ストレートに突進する良質なメロスピが味わえる。

 

実力派ヴォーカルが抜けた痛手も何のその、という感じ。プログレ風味とシンフォアレンジを効かせたメロディックメタルという基本線を守り抜き、それでいてどの楽曲にも聴きどころが付与されています。かつての名盤『A Time Never Come』のようなド派手さはないけれど、安定感のある良作として楽しめる一作です。

 

個人的に本作は

"スピード感とシンフォニックさを適度に混ぜ合わせた、聴きやすく手堅い良質メロディックメタル"

という感じです。