アメリカ出身プログレッシヴ・パワーメタルバンドの、今年発表された最新フルアルバム。
2013年結成という、そこまで長いキャリアを持たないバンドですが、同じアメリカのバンドであるKAMELOTのサポートアクトとして来日公演も実施しており、僕も名前くらいなら聞き覚えのある存在でした。
過去作は聴いてきていないのですが、タワーレコードの店頭に並んでいるのを見て、思わず手に取ってしまいました。帯には"ダーク・メロディック・メタル"と形容され、さらにやたらめったら哀愁を強調した宣伝文句が書いてあったもんですから......
『Curse Of Autumn』というアルバム・タイトルといい、薄暗く鬱屈としたジャケットといい、とてもうららかな陽気に満ちた春先にリリースされたとは思えん!(笑) さぞかし物哀しい叙情美旋律を垂れ流しているアルバムなのだろうと期待。
アルバム全体としては、確かに最初にイメージしたとおりの哀愁に満ちたサウンド。
ド暗い。
鬱屈としたメロディーラインに、どこか不気味なバックの高音コーラス。メインストリームの音楽にある快活さや、聴いていてワクワクするような高揚感は全くと言っていいほど無い。パラメーターのほとんどを喜怒哀楽の「哀」に振っている。
ただ元ICED EARTHのメンバーが在籍しているというのもあるのか(サウンドプロデューサーとして、先日バカなことやらかしてパクられたICED EARTHのジョン・シェイファーの名前が普通にブックレットに記載してある)、意外といっていいほどバンドサウンドがパワフルで驚きました。もっと内に内にとこもっていくような音を想像していたので。
イントロのM1「Deliver Us Into The Arms Of Eternal Silence」は、出だしこそアコギによる調べと、地下深くにズンズン埋もれていくような低音のサウンドでかな〜りド暗いものの、そこからノンストップで続くM2「The Last Scar」に差し掛かると、キレのあるリフで一気に疾走。気合いの入った速弾きのギターソロも飛び出し、思いの外エネルギッシュに突き進む。暗いけど。
その後のM3「As I Lie Awake」は、本作中でも特にわかりやすく、かつ哀愁のあるエモーショナルなメロディーが武器となるアップテンポ曲。決してポップにはならないのですが、かなりキャッチーでとっつきやすい。後半にはこれまた哀愁を演出するアコギと泣きのギターソロが待ち受ける。これはイイね。
ただこのM3以上にわかりやすいメロディーはこのあとは出てこず、ダーク・メロディックメタルの名に相応しい哀愁のオンパレードではありますが、ちょっととっつきづらい楽曲が続いてしまうな...。アコギによるメランコリックな旋律や、焦燥感を演出するヴォーカルなど良いんですが、やっぱりもうちょっとくらい明朗な方が僕の琴線には合うのかも。要所要所でつかみどころの見つけにくいプログレッシヴな展開が出てくるのも、とっつきづらさに拍車をかけているし。
ラストで哀し~い余韻を引きずるコーラスが印象的なM4「Another Face」、オモクソにプログレッシヴなインストから、勢いよく表打ちで疾走し、本作中特にパワーの漲っているリフとグロウルが聴ける(でもやっぱりプログレ全開の展開もあり)M8「The Other Side Of Fear」、彼らの哀愁のメロディーのセンスがバッチリと発揮された、儚いバラードのM9「The River」といった曲など、少なからず惹かれる瞬間はあるんですけどね。バラードが特に良い感じ!
クライマックスに鎮座するM10「...And They All Blew Away」は10分超えの大作。バンドとしては勝負をかけるハイライトとなる一曲としたかったのかもしれませんが、プログレメタルが苦手な僕が、彼らの大作を聴くのはだいぶダレを覚えてしまうのが本音。
あとM11~M12の2連チャンで「Long Time」という同曲のバージョン違いがあるのですが、途中までほぼ同じようなアレンジの曲を、2曲続けて聴くというアルバム構成もどうかと...
ネガティヴに感じる瞬間もありましたが、これは僕がメタルにキャッチーさ、ストレートさ、わかりやすさを求めているが故。とにかく陰鬱に彩られた哀メロで泣きたいという人、プログレッシヴな展開に没入したい人などには響きやすいかもしれません。一部の歌メロが強化された曲や、バラードの出来はかなり良かった。
個人的に本作は
"ダークなメランコリックメロディーと、プログレッシヴな展開を多用したパワーメタル。わかりやすさや即効性はちょっと弱め..."
という感じです。