- デスコアからメタルコアへのキッカケ
- バンドを代表するキラーを収録
- メチャクチャヘヴィ、けど聴きやすい良質なバランス
前回久々のライヴハウスで、激熱ライヴを見せてくれたHER NAME IN BLOOD。彼らがテクニカルなデスコアから、現在のメロディックメタルコアへと音楽性を変容させるターニングポイントとなったアルバムを取り上げます。
ギタリストとしてTJさんが正式に加入し、さらにフロントマンであるIkepyさんが髪を伸ばす&トレーニングを積むことによって、現在のような屈強で男臭い見た目に変化したのも本作から。まさに今のハーネームへの足掛かりとなったアルバムと言えましょう。
本作を作成するにあたり、メインソングライターであるDAIKIさんは「今までのアルバムは難解でとっつきづらい」ということに気づき、音楽的な芯はブレずに、よりシンプルでわかりやすくしようという意志があったんだとか。
その結果デスコアからメタルコアへと楽曲の骨組みが若干変化するに至ったわけですが、これは難解で複雑なものより、わかりやすくキャッチーである音楽の方が好きな僕のようなリスナーには好ましい変化でした。アングラな音楽シーンのみに目を向ける人にはガッカリな路線変更なのかもしれないけど。
音楽性としてはヘヴィな部分ではしっかりとリフが重く刻まれ、極悪なメタルコアとしてのアイデンティティーは保ちつつ、合唱しやすいキャッチーなサビを導入。タフでマッシヴな王道を行くメタルコアを貫いています。充分に攻撃的で凶悪、それでいて安くならないキャッチーさを導入したサウンドは実に魅力的。
Ikepyさんのヴォーカルスタイルも、今のような整合性ある声とは違い、かなり荒々しい獰猛な叫びを披露していて、単純な勢いだけなら今以上かもしれない。とにかくアルバム全編に渡って、まさにBEASTという名に相応しい猛り狂う音の潮流が止まらない。マジでド迫力。
この頃はまだデスコア時代の名残みたいなものが残っているようで、ハードコアモッシュ誘発のメチャクチャ強烈なリズム落ちパートも所々で聴ける。特にM4「CUTS INTO PIECES」は随一のヘヴィさを押し出した楽曲で、のっけから野太いシャウトと共に爆走し、ラスト付近の極悪ヘヴィパートは、リスナーを脳天から叩き潰してしまうかのような豪快さ。エグい。
M1「UNSHAKEN FIRE」やM5「DANCING WITH THE GHOST」はゴリッゴリにヘヴィなリフで畳みかけ、鈍重なモッシュパートも存在するものの、それを邪魔しないメロディアスな要素をブレンドした楽曲。彼らの変化を端的に表している、これまた非常にカッコいい曲。M2「THE PIERCING EYES」も、彼らに期待される速さと重さを両立して破壊力バツグン。
M6「WE REFUSE」はリードトラックとなった楽曲。重く速く激しく進み行く出だしから、一気に解放感溢れるスケール感大のサビへと繋がり、そこからさらにヘヴィパートへと続いていく展開が気持ちいい。ラストのクリーン寄りなギターフレーズがまたクールなんですよ。ベスト盤で再録されたバージョンに慣れた耳だと、ラストのヘヴィパートがちょっと速めに聴こえるな(笑)
そしてM3「GASOLINES」はライヴでもキメ曲となっていてお馴染みですが、やっぱり圧倒的なカッコよさですね。怪しいギターリフからシャウトでアップテンポに展開し、リズミカルなAメロパートでは体を揺らさざるを得ず、そこからメロディアスなギターフレーズへと流れ、爆発力満点のサビへ!わかっていても気分が高揚する名曲中の名曲!
今のハーネームに通じるキャッチーなメタルコアの歩みを進めるも、初期のアンダーグラウンド臭漂うヘヴィさも色濃く残っている、ヘヴィなメタルコアとして非常に充実した内容になっていると思います。時間も6曲20分程度と短めでサクッと聴けるから、聴き疲れと無縁なのも嬉しいですね。
個人的に本作は
"ダークでヘヴィ、マッシヴでキャッチーなメタルコア。バンドのターニングポイントとなった充実作"
という感じです。