- 世界標準のブルータル・サウンド
- 勢い任せにならない展開の巧さ
- 王道デスでも不思議と聴きやすい
つい先日HER NAME IN BLOODとの対バンで、強烈・残虐・爆音なアクトを見せてくれたWORLD END MANの1stフルアルバム。
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本作以前より自主制作でEPなどを出していたようですが、全国流通音源は本作が初。リリースされた当初、渋谷のタワーレコードにJ‐PUNK系統のバンドの音源と一緒に、本作が陳列されているのを見てあまりの浮きっぷりに驚いたものです(笑)
日本のエクストリームメタルといえば、人気があるのはメロディックデスメタルやメタルコアで、メロディアスな要素を削ぎ落とした純正デスメタルが話題になることはそうそうありません。
そんな商業性の見込みにくい音楽をやる覚悟、そして海外での活動経験を持ったメンバーがやっているわけですから、当然ながらそのサウンドからみなぎる本格感はかなりのもの。完全に世界レベルのサウンドなのではないでしょうか。
ヴォーカルのKiyoさんは、もともとデスメタル一辺倒の人間ではなく、Limp BizkitやKoЯnといったニューメタルに傾倒していたそうで、その感覚があるからなのか、楽曲通しておどろおどろしいという印象は意外にも希薄。
「デスメタル」という言葉からは、ドロドログチャグチャした汚らしい音質、徹底してアンダーグラウンドな世界観というのをどうしても想起しちゃうんですが(ジャケットもそんな感じのグロテスク加減ですし)、本作で聴ける音は残虐で凶暴ではあるものの、それと同じくらい骨太でしっかりとした演奏力、パワフルな印象がある。
これはやっぱりギターリフがしっかりとした輪郭を持って、どっしりヘヴィに刻まれているから感じるのかもしれません。勢い任せの熱量でジャカジャカ弾き倒すのでなく(それはそれでカッコいいのでしょうけど)、あくまでメタリックな質感を損なわないパワフルなリフこそがキモ。ライヴでもそのピッキングの豪快さに魅せられたものです。その分速弾きソロの類いはまったくと言っていいほど無いけど。
また、疾走しっぱなしではなく、曲によってヘヴィなリズム落ちパートを積極的に設けたり、勢いを控えめにした楽曲を前半から中盤に配したりするなど、曲単位でもアルバム単位でもストップ&ゴーを意識して作られているのも、本作の完成度の高さを底上げしているように感じます。全方位隙が無く、高水準にまとまっている。
しかしいくら演奏面や完成度がしっかりしていても、そこはやっぱり残虐なデスメタル。Kiyoさんの地獄の底から湧き上がってくるような凶悪無比なグロウルは、それを高々に主張してくれています。華やかなメジャー感なんぞは微塵もない、本当に人間が出しているのか疑わしいエグい声は迫力抜群。
王道を行くデスメタルなので、当然ながらメロディアスさやドラマチックさなんてもんは無し。僕の好みからするとちょっと凶暴すぎるきらいはありますが、上記したような全体的な完成度の高さと、25分程度に収まったコンパクトさのおかげで、思っていた以上に聴きやすいな、と思わせてくれるのはありがたかった。
ピックスクラッチから一気に爆走し、リズミカルなリフでも聴かせるM6「Feed the negative」と、さらにそこからノンストップで駆け抜け、驚異のバスドラ連打を披露する超攻撃的なM7「Blackest end」の二連打は爆アガリタイムですね。理屈抜きにカッコいいです。
甘さ一切なしの残虐なデスメタルでありながら、邪悪なアングラ感以上にメタルとしてのパワー、爽快感すら感じさせるサウンドを持った、なかなか稀有な作品なのではないでしょうか。
個人的に本作は
"メロウな要素をかなぐり捨てた超ブルータルなデスメタル。パワー漲るメタリックな演奏と、曲展開の巧みさは聴き応えあり"
という感じです。