- 従来の叙情性にうまく絡めた"喜"の要素
- 疾走曲の快感指数ががべらぼうに高い
- 音質や演奏技術面が目に見えて向上した名盤
前のHER NAME IN BLOOD解散の報を受けて書いた記事がブログを始めて以来、一際たくさんのアクセス数を出しています。やはりセンセーショナルな話題は注目を浴びるもんですね。
普通であればたくさんの人が見に来てくれることに対して感謝するところなのですが、いかんせん話題が話題なだけに、素直に喜べないのが辛いところです。
それにいくら注目されやすいとはいえ、ポジティヴでない話題がずっとブログトップに鎮座しているのはあまり気分の良いことではありませんからね。早いとこマイナスの感情を払拭してくれるようなアルバムについて書くことにしました。
国産パンクシーンにおける実力派として、メンバーチェンジを経つつも、長きに渡り活躍している3ピースメロディックハードコアバンド・Northern19。彼らが2010年に発表した3rdフルアルバム。
シーンに鮮烈なインパクトを与えた哀愁疾走メロコアの宝庫である1st『EVERLASTING』、そこで提示した強みを引き継ぎ、楽曲の幅を押し広げた2nd『FROM HERE TO EVERYWHERE』、そんな2枚のアルバムから、さらに楽曲のランクを一段階押し上げることに成功したのが本作。
『SMILE』というタイトルが示す通り、全体を通して感じられるのは陽の雰囲気。前2作が喜怒哀楽で言うところの"哀"が強い作風だったのに対し、どことなく"喜"のエッセンスが増量されています。
もちろんそれは「底抜けに明るい能天気ポップパンクになった」なんていう事ではなく、あくまでエモ的な哀愁がメロディーの根幹。そこへさらに温かみのあるポップさが大きく追加されています。
キレのあるギターリフと共に爆走しまくる突進力も一切失われておらず、疾走大好きコアキッズが肩を落とすなんてことも起こり得ない。メロコアとして、攻撃性と叙情性が理想的なバランスで混ざり合っています。前2作も充分な名作ではありますが、楽曲としてのクオリティーの高さは本作で一皮剥けたなと感じますね。音質もより整合感を増したものでクリアになっている感じ(スネアドラムの音はもう少し目立たせてほしいけど)
ストリングスの音色から始まり、ジャキジャキとリフが切れ込んできて爆走するM1「WE'LL BE ALRIGHT」は、哀愁を持ちながらもピースフルという、本作の路線を象徴する名曲。
M2「NEVER ENDING STORY」はライヴアンセムとしてもお馴染み。夏の郷愁を感じさせる、少し哀しくも温かなヴォーカルメロディーがたまらなく心地良い疾走ナンバー。この爽快感がある中にも、どうしようもなく切なく響く旋律は秀逸の一言です。バックで軽やかに鳴るアコギもポイント。
まるでネオクラ様式美かと言いたくなるほどの劇メロをギター、ヴォーカル共に発散する劇的疾走曲M4「RED FLOWER」、"スラッシュメタル meets メロディックハードコア"と形容できるアグレッシヴなM8「SLAVE TO ROCK」(歌詞が最高すぎるので是非和訳に目を通してください/笑)、ノーザンの王道を行く叙情疾走ショートチューンM10「WE ARE」、一層リフの切れ味に磨きがかかったM13「LOSERS WIN LAST」など、疾走曲の完成度は素晴らしいもので、グッドメロディーがスピーディーにブチ込まれる快感指数の高さは尋常ではありません。
そして疾走感を押し出していない楽曲でも、キャッチーなシンガロングと速弾きソロでテンションを底上げするM3「TRUTH」に、とことんポップにアルバムコンセプトを描くリードトラックM5「SMILE FOR PEACE」、小気味よいヴォーカル運びが非常にキャッチーなロックロールナンバーM7「ALL I WANT IS YOU」など、耳を引くメロディー、心地よいコーラスが目白押し。スピードを抑えても退屈させないソングライティングの妙が光ります。
全15曲と、この手のアルバムとしてはややボリュームのある構成ですが(それでも40分くらいだけど)、彼らの優れたメロディーセンスに、さらに向上した演奏技術と音質、爆走しまくる楽曲の完成度によりダレる瞬間は無し!メロコアというジャンルにおいて特に高いクオリティーを提示して見せた、まさしく名盤と言える内容です。
Northern19の最高傑作は?という問いには、1stか最新作の『LIFE』かでちょっと迷いますが、やはりコレを挙げるかなあ。
個人的に本作は
"前2作の哀愁爆走路線にポップさをうまく絡め、技術・音質・メロディー全ての面でクオリティーUPに成功した1枚"
という感じです。