ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

6/28 BRAHMAN / Tour 2021 -Slow Dance- at Zepp Haneda

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孤高のライヴバンドBRAHMAN。思えば彼らのライヴを観るのは久しぶり。配信ライヴの「IN YOUR 【      】 HOUSE」を別とすると、最後に観たのが2019年11月の音楽と人LIVEだから、実に1年半観てない事になる。

 

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いよいよ待ちに待った生のライヴですが、もちろんこんなご時世ですから、いつものようなモッシュピットに突っ込むことはできない。今回は全席指定、かつ彼らのスロー曲を主軸としたセットリストを組む、「Tour 2021 -Slow Dance-」。指定席でモッシュ無しのBRAHMANを観るのは武道館に続いて二回目です。

 

この日のために会社は有給(のはずだったけど休日出勤の代休になった)を取り、向かうは去年完成したばかりと言う新デカバコのZepp Haneda。羽田空港に程近い立地のため、もちろん空港に並ぶ飛行機が一望できる。特に飛行機マニアでもなんでもない僕ですが、やはり男子たるもの、この手のものには少なからず胸がときめくものです。

 

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グッズ販売の列にしばらく並び、お目当てのTシャツやタオルやらを購入し(最近はグッズ買うことはあまりなくなりましたが、いかんせん今はバンド側に少しでも儲かってもらわなきゃ困りますからね)、開演20分前くらいに会場入り。かなり早い段階でぴあの先行予約に参加したのに、1階席の一番後ろという位置にはいまいち納得がいきませんが(笑)、まあPA卓のすぐ近くなので音響に問題は無さそうだし、観やすいのでヨシとします。

 

ツアーのロゴが映し出された半透明の垂れ幕を見つめながら、開演時刻を少し過ぎたあたりで暗転。いつものSE「お母さん、お願い」はこの時点では流れず、すでに立ち位置にメンバーがいる中、最初にプレイされたのは「Kamuy-pirma」。

 

全編アイヌ語で歌われた、BRAHMANの楽曲の中でも一際優しく、繊細な1曲。クリアなギターのフレーズと、たおやかなヴォーカルワークが沁みる。垂れ幕に鮮やかな照明が映し出され、これがまた楽曲の叙情性とマッチして、感傷的な気分にさせられました。

 

Fibs in the hand」「空谷の跫音」と、淡々とバラードナンバーを投下していき、情感豊かなメロディーに身を委ねている中、スローながらも彼ららしい激情をサビで発散させる「終夜」は熱かった。マイクスタンドからハンドマイクにスタンスを変えたTOSHI-LOWさんは、普段のライヴと何ら変わらぬ大振りのアクションで熱量を振り撒き、それに応えるようにMAKOTOさんの頭を振り乱すパフォーマンスも激しさを増していく。

 

そして「終夜」が終わると、垂れ幕にライヴ開幕の映像が映し出され、ここでようやく「お母さん、お願い」のSEが流れ出す。MCは挟まず、雨が降りしきる映像が映されながら、名曲「霹靂」。

 

この曲は必ずややってくれるだろうと信じていましたが、クライマックス感満載の楽曲だけに、こんな序盤でやってしまっていいものか、この後しっかりライヴのハイライトが演出できるのか少し不安にも(結果としてそこは全然大丈夫でしたが)

 

本来であればモッシュにまみれながら、ラスサビのシンガロングを声を枯らしながらできたんだけどな〜と思いつつ、拳を握りしめて爆発しそうな感情を抑えながら、食い入るようにステージを観る。

 

今回はスロー曲主体ということで、今まであまりライヴで聴くことができなかった曲を多く聴けるだろうと期待していましたが、ここから先は正直聴いたことのない楽曲というのはそんなに多くなく、その点は少し残念。

 

しかしバンドのパフォーマンスは、スローとはいえいつも通り激しく、ステージ上に感情の全てをぶつけようとする全身全霊感あふれるもの。足を振り上げ頭を振り乱すMAKOTOさん、バラード主体ながら圧巻の連打で曲に勢いをもたらすRONZIさんによるリズム隊のプレイは、普段モッシュに気を取られていてなかなか生では拝めなかった。

 

音楽的に一番良いなと思ったのは、やはりBRAHMANサウンド面での核と言えるKOHKIさんで、民謡的な叙情フレーズは今回も冴え渡る。特にギターソロにおいては音源通り忠実に弾くのではなく、結構アレンジを変えていて、より哀しくエモーショナルなリードをギャンギャンかき鳴らす。

 

ライヴ中盤には2nd収録の名曲「PLASTIC SMILE」が聴けたのは嬉しかった。ここでステージのバックに過去のライヴの写真が次々と映され、かつてはこんな風にグシャグシャになりながら爆音に身をひたせたんだよな...とセンチな気分になってしまう。ラストの疾走部の悲しい旋律が否応なく心に響いてくる瞬間でした。

 

その後は曲名不明の新曲で、BRAHMANとしてはかなりストレートな歌詞をもった、歌モノの楽曲で、民族音楽っぽさやハードコアさは(一度聴いた限りでは)ほとんど感じられない楽曲。今後アルバムのミドル曲として収録されたりするのかしら。

 

 バックにMVの舞台ともなった漁港と、そこで働く人たちの姿が映像で流れた「ナミノウタゲ」、そこから続く「今夜」は今のBRAHMANの"静"を象徴する曲。ただこの曲はやっぱりハナレグミと細美さんのヴォーカルがあってこそで、TOSHI-LOWさんひとりだとちょっと物足りないというか、若干の未完成感が漂ってしまうかな。

 

PLACEBO」「満月の夕」「鼎の問」というライヴでも定番のバラードでラストスパート。震災以降の彼らのキーとなっている「鼎の問」は、海辺で舞い踊るダンサーの映像(曲と比してちょっとアグレッシヴ過ぎたという気もするが)と共に、切なく力強いラストのサビで胸が熱くなりました。

 

ここで垂れ幕にエンディングのような映像が流れる。新型コロナウイルスによる寂れた街並み、ライヴ開催中止のニュースが映される中、すぐさま暗転しメンバーが戻ってくる。

 

最後の最後に新曲である「Slow Dance」をプレイ。次々と歌詞が映像で映され、これまでのスロー曲とは打って変わって、疾走するドラムに激しさを増す怒号のようなヴォーカルが乗る曲で、ここにきてBRAHMANのハードコアバンドとしての矜持、持ち味が炸裂する。

 

この曲を聴いて「ああ...やっぱりBRAHMANはこうだよな...」と改めて思い直しましたね。もちろん彼らのメロディーセンスが十分に活きたスロー曲も素晴らしいのですが、やはり彼らはパンク、ハードコアの人間たちなんです。痛烈なメッセージを含んだ歌詞を、徹底的に聴き手に叩きつけ、全身で表現する。この甘えの一切ない熱情を持った楽曲こそがBRAHMANの真髄なんだと、久しぶりの彼らのステージを観てそう確信しました。

 

曲のラストに「Slow Dance!」と叫び、高々と両の拳を突き上げたTOSHI-LOWさんの、赤い照明で形作られたシルエットには、神々しさとでも呼べばいいのか、圧倒される存在感がありました。

 

全部合わせて1時間程度、その場から動かずに観るライヴということで、言葉だけ聞けばボリュームの少ないライヴだったのですが、それを感じさせることはありませんでした。むしろステージを見つめ続け、ひたすらにバンドと正対したことによる満足感、充実感に満ちた時間だったと思います。

 

こういうBRAHMANも最高だな...と思いつつ、隣の席の男性がライヴ前に発していた「早くわちゃわちゃできたらいいよね〜」という言葉に脳内で深く頷きもしながら、次なるライヴへの思いを募らせておくとします。