- 盟友二人の音以外存在しない
- ソングライターとしての資質の違いが顕著
- 素朴な音色とメロディーのマッチングは抜群
BRAHMAN/ OAUの絶対的フロントマンであるTOSHI-LOWさんと、ELLEGARDEN/the HIATUS/MONOEYESで日本のロックシーンの最前線を駆ける細美武士さんによるアコースティックユニットの1stフルアルバム。
3.11の震災をきっかけに親交を深めだした二人が、福島でのライヴの共演で組んだthe LOW-ATUS。これまではずっと弾き語りライヴによる活動のみで、反戦歌のカバーなどをやっていたそうですが、ここにきてようやくオリジナル曲の制作が始まり、自主レーベルを立ち上げた上でのリリースとなりました。
オリジナルを始めたのは本当に「ただなんとなく」という感じで、明確な理由は無いらしく、本人たちも活動開始当初はアルバムが出るとも思っていなかったようです。ライヴを観たことが無い者としては、こうして音源を出してくれるのはありがたい話です。
本作は二人の歌声と演奏以外は何も入っておらず、純粋に二人が奏でる音のみに聴き入ることができる。ゲストミュージシャンの参加、アコギ以外の弦楽器や管楽器の類によるアレンジも全くなし。唯一TOSHI-LOWさんのハーモニカがいくつかの曲で使われる以外は、声とアコギのみ。潔い。
OAUにおいて優れた楽曲を作っているTOSHI-LOWさんに、ELLEGARDENがバリバリ精力的に活動していた時から親しみやすいキャッチーな曲作りに定評があった細美さんの二人が組んでいるだけに、耳によく馴染む歌メロが終始鳴り止まない楽曲が連なる。それが切なく素朴なアコギの音色とマッチして、じんわり染み入るような作品になっています。
作詞・作曲ともに二人がやっていて、よく聴いてみるとTOSHI-LOWさんの曲は全体的に昭和テイストといえば良いのか、古き良き歌謡曲フレーバーを漂わせていて渋みがある。細美さんはより現代的なキャッチーさが強調されて、今のJ-ROCKにも通じる匂いを感じる。
普段ならTOSHI-LOWさんと細美さんではTOSHI-LOWさん派な僕ですが(笑)、本作においては細美さんが作った楽曲の方が、普遍的なキャッチーさが感じられる分気に入りやすかったですね。
MVが作られたM2「サボテン」における声が揃った瞬間のサビの入り、M8「丸氷」のドラマチックと言ってもいいほど哀愁あふれるフックに富んだメロディー、ラストのM11「いつも通り」の心が安らぐような歌詞とメロの相乗効果は、普遍性というか、誰が聴いても「良い曲だね」と思える出色の出来栄えなのでは。
TOSHI-LOWさんの曲は先述したとおり渋みのあるスタイルで、そこへやや強いメッセージを含んだところがパンク/ハードコアを出自とした人間らしいところ。現在の日本の現状を痛烈に描いたと思しきM7「オーオーオー」や、鬱屈とした現代において、どんなことを思っていくのか、考えていくのかと投げかけるM10「ロウエイタスのテーマ」などが顕著。しかしそんな曲にあっても決して重苦しくはならず、楽に聴かせてくれるメロディーと演奏が良い。
二人の友情とともに生まれた珠玉の作品ですが、それを抜きにしても純粋に「良い唄」が揃ったアルバムですね。間接照明つけて座椅子でくつろぎながら、ゆっくりと音に身を預けたい時に重宝しそう。
個人的に本作は
"ギターとハーモニカのみ引っ下げ、盟友二人の歌心で勝負した不純物のない潔い一枚"
という感じです。