前回の記事の次となると、やはりこのバンドの作品に触れないわけにはいかないでしょう。
札幌のハードコアシーンの核であるSLANGが2010年に発表した5枚目のフルアルバム。"人生がおれをハードコアにする"というタイトルがまずカッコいい。KOさんの生き様を示したタイトルと言えるのでは。
ジャパニーズハードコアというと、痛烈なメッセージ性を秘めた日本語詞を武器に、疾走しまくる激しい演奏で短く駆け抜けるというイメージがあり、本作も概ねその例に沿った音を出しています。
しかしギターのKIYOさんが、もともとメタル上がりだったということもあるのか、ハードコアとしてはかなりヘヴィさを強調した音作りが特徴的で、全体的に低音部の音がかなり強力。他ではなかなか聴けないレベルでバキバキに歪んだベースが、さらに攻撃的な印象を強め、軽さは微塵もない極めてストロングなハードコアになっていますね。M1「木っ端微塵」からその破壊的サウンドを早速実感できるはずです。
また終始疾走しっぱなしというわけではなく、重厚なリフでミドルテンポで進みゆく楽曲が配されていたり、どこかシンガロングパートがキャッチーで耳に残りやすかったり、つんのめる勢いは抜群ながら粗雑にならないギターソロがあったりと、単に爆走するだけに陥っていないのもポイント。
ハードコアパンク、特にジャパコアと呼ばれるような音って、どうしても似たような曲だらけになってしまいがちなんですが(ジャンルとしての大まかな特徴なので悪いことではないんですが)、本作はそうならずアルバムの収録時間も長すぎにならない程度にとってある。そのため音楽的な聴きごたえがしっかり提供されているんです。
ライヴでも頻繁に演奏されるM3「Black rain」は疾走しなくともカッコいいSLANGサウンドは提供できるということを証明し切った名曲。不穏なフレーズを奏でるギターに、KOさんの"Freedom!!!!!!"の叫びがアツすぎる...!!M7「チェルノブイリの首飾り」は、基本的には疾走ハードコアなのですが、中盤から後半にかけてのギターソロ、そこからつながるややリズミカルなヘヴィリフの刻みがえらくカッコいい。爆走だけでは出せないカッコ良さ。
アルバム中盤にはM6「冬」という鐘の音とクリアなギターで、強烈な切なさを演出するインストが入っており、こういった小曲(歌入りの曲よりも長かったりするけど/笑)の存在が、ライヴ感ありきの一発ノリではない、音楽的に構成されたアルバムとしての印象を強めています。
ラストを飾るタイトルトラックM12「Life made me hardcore」は、終始ミドルテンポで進む楽曲。KOさんの生き方をしたためたリリックと共に、愚直に展開するリフとシンガロングが熱い名曲に仕上がっています。
大半が疾走チューンで痛快至極なサウンドの波に飲まれ、時折挟むミドルチューンのグルーヴ感に血潮が滾り、ハードコアらしい魂のこもったリリックに胸を熱くする。音楽的にも精神性としても、非常にタフで男らしいド硬派ジャパコアを貫いた傑作。これ1枚だけでもジャパニーズハードコアという音の真髄がわかるのでは。
個人的に本作は
"タフな力強さに満ちたサウンドで展開される、硬派一徹のハードコアパンク。疾走曲からミドル曲までパワーは一切落ちない"
という感じです。