ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ILLUSION FORCE 『ILLUSION PARADISE』

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  • 日・韓・米の多国籍バンドのメジャーデビュー作
  • 図抜けたハイトーンを武器とする流麗なメロスピ
  • 全体的に和のムードが支配的

 

メタルマニア歓喜のマイナーアーティストを数多く招聘してくれたものの、昨年春に2000万もの負債を抱え倒産、そして秋頃には完全とは言えずとも復活したEvoken de Valhall Production。

 

この会社は海外アーティストのライヴ事業だけでなく、メタルバンドのマネジメントも行っていて、社長自らメンバーとなるブラックメタルバンドEthereal Sin、和のメロディックメタルバンドRakshasaなどを抱えているとのこと。

 

そんなEVPに籍を置き、Evoken Fest 2019にオープニングアクトとして出演した実績を持つメロディックスピードメタルバンド・ILLUSION FORCEの最新作を取り上げます。日・韓・米の多国籍バンド、かつツインギターが兄弟で両方レスポール使いという、日本のメタルバンド(日本のバンドって言ってしまっても大丈夫ですよね?)としてはかなり珍しい感じ。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

2018年結成という若手でメジャーデビューを果たすというのは結構スゴイことなんじゃないでしょうか。しかも最近流行りの音楽性とは逆行するかのようなメロスピバンドが。

 

また本作にはDerdianのアイヴァン・ジャンニーニ、元ANGRAエドゥ・ファラスキ、いつの間にかNORTHTALEを脱退していたクリスチャン・エリクソンなど、キングレコードに縁あるバンドマンが参加しています。

 

しかしそんなゲストミュージシャンを迎えなくてもいいんじゃないかと思えるほどに、本作の楽曲の完成度は高い。

 

曲としてはSTRATOVARIUS辺りに通じる、パワーよりもスピード感や流麗なメロディアスさを重視したメロスピ。そこに雅楽っぽい和のフィーリングや、アジアンテイストを積極的に盛り込んだ感じです。

 

和の要素というのはあまりに入れ込みすぎるとクドく感じてしまいがちですが、このバンドはその辺のセンスが良いのか、そこまでしつこい印象はなく、スッと耳に馴染んでくる。

 

韓国人ヴォーカリスト・Jinnさんの伸びのあるハイトーンシャウトが大きな武器で、随所に高く高く突き抜けていくロングシャウトを披露してくれます。M4「Beast Of The Earth」や、リードトラックとなったM10「Cosmos」の出だしなんか凄まじいな!どんな肺活量と喉の作りしてるんだこの人。

 

明るさ重視で弾けるM1「Illusion Paradise」で幕を開け、よりリフに力強さを増し日本的なバッキングの音色と北欧風味のメロディーが混じり合ったM2「Unlimited Power」、爆発力のある疾走に、見事な高速の掛け合いを見せるツインギターソロが大きな聴きどころになったM3「N.E.O」、シリアスなムードを強め猛然と疾走する前述のM4と、アルバム前半からバンドの強みをフルスロットルでぶつけてくる。

 

後半に差し掛かると、"Sazareishi"と名付けられた組曲(普通に聴いてたら独立した楽曲なので、組曲っぽさは無いけど)な楽曲がM6〜M9にかけて4曲続く。キーになっているのは3曲目のM8「Sazareishi, Pt.Ⅲ :Infernal Chimera, Rabager Of Life」で、和のメロウさを強く押し出したメロスピを繰り出しつつ、中盤にはお経のようなコーラスとともに、スローで呪術的ムードを発散。さらにシンフォニックなサウンドをバックに、ブラストビートで爆走する様は、そこだけ抜き出せばシンフォニックブラックメタルかのよう。

 

個人的には、あまり趣向を凝らしすぎないストレートなメロスピナンバーの方が魅力的に感じるものの、アルバムのハイライトになり得る瞬間を作ろうという狙いは良いと思います。

 

ラストに差し掛かる段階でも、前述のリードトラックM10に、希望を見出す劇的なメロディーで彩られたM12「Awakening Your Universe」は間違いなくキラーと呼べるドラマチックな楽曲。ポップな中に程よく哀愁を効かせ、ドラマチックなコーラスと曲展開、透明感あふれるサウンドで突っ走るこれらの曲は、ピュアで明朗なメロスピ愛する人には必ずや刺さるはずかと。

 

歌唱力とハイトーンが見事なヴォーカルに、充分なスケールとスピード感を演出する演奏、楽曲のクオリティーの高さと、キャリアはまだ浅めであるにも関わらず、非常にハイレベルなメロスピ作に仕上がっていて驚きました。

 

クサメタルというほど哀愁バリバリではなく、全体的にポジティヴ寄りの作風、日本的なメロディーの多用は若干好みが別れてしまうかもしれませんが、メロスピが好きなら有無を言わせず取り込んでしまうほどのパワーがあるアルバムです。

 

しかし、今年は本作以外にもGALNERYUSHELLOWEENにEDU FALASCHIに、さらにMinstreliXも久々にアルバムを出すなど、メロスピの当たり年なのかもですね。

 

個人的に本作は

"和のムード、北欧メタル的透明感、超絶ハイトーンを絡めたポジティヴメロスピの秀作"

という感じです。

 


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リードトラックにして本作を代表するキラーチューン。まずはこちらを聴きましょう。