- G4N脱退後の初の音源
- パンク的な破壊力のバンドサウンドは薄い
- ほんのり切ないメロによるエモ路線を徹底
前回感想を書いたばかりのGOOD4NOTHINGから、2019年に脱退したヴォーカルギターのTANNYさんが立ち上げたバンド(プロジェクト?)の、記念すべき1stフルアルバム。
正式なメンバーは中心人物のTANNYさんのみで、サポートメンバーとしてベースにはSHACHI(懐かしッ!と思ったら、2015年から再結成して活動中らしい)のHIDETAさん、ドラマーは二人いて、僕はどちらも知らない人でした。
彼がG4Nを脱退した理由として、「音楽性の違いが大きくなっていった」「このバンドでは表現できない音楽をやっていきたい」というものであり、脱退後はちょいちょい弾き語りなどを行っていたそうですが、ここにきてようやく「G4Nではできなかったこと」を本格始動させていこうという気になったのでしょうか。
そんな彼の生み出した新たな音楽は、シンセやピアノなどのソフトな音色を要所で取り入れたエモ/メロコアと呼べるもの。
G4Nは「パンク要素を取ったらほぼ何も残らない」と言ってしまっていいほど、真っ直ぐなメロコアサウンドでしたが、本作で聴ける曲はメロコアを基調としながらも、あそこまでバカっぽいパンクらしさは薄い。ギターの主張も控えめで、歪みも軽くギターソロも無し。メロコアというよりは、LOCAL SOUND STYLEやFAT PROPなどのエモバンドを聴いた時の感覚に近いです。
本作の中では特にストレートなメロコアチューンであるM2「Believe」や、1分ほどで終わるショートチューンM9「1 minute blast」のような曲でさえ、攻撃性よりも軽やかさの方が強いくらいです。これはやはりギターの存在感が薄いからかな。G4N時代から彼のギタープレイは前面に出てくるタイプではありませんでしたからね。
僕としてはやはり、愚直に突っ走り、骨太な音色でリフをかき鳴らすG4Nタイプのメロコアの方が好きなんですが、本作で聴けるほんのり切ないエモ的なメロディーと、それを活かしたバックのアレンジはなかなか悪くないと思えました。今まで悪ガキっぽさを感じさせてきたTANNYさんのヴォーカルも、こういうウェットでソフトなサウンドにも存外ハマっている。
ただ、似たタイプの楽曲が立て続き、かつ飛び抜けたキラーチューンも無い本作は、アルバム1枚聴き通すと若干刺激が足りなく感じてしまうのが正直なところ。破壊的な勢いであっという間に聴き通せるメロコアスタイルとは違い、聴かせるタイプのエモ路線だと、どうしても物足りなさが顔を出してしまう。収録時間が短いため、ダレるというほどでもないのが救いですが。
あと、こんなことを書くのもどうかと思いますが、確かに本作で聴ける音はG4Nとは別物ではありますが、「絶対にG4Nで出来ないタイプの曲か」と言われればそうでもないので、「脱退しなくてもこういう曲の発表の場はあったのでは...?」という思いがど〜〜〜しても頭をよぎってしまう。リスナーって身勝手でイヤですね。
当人たちは何度も話し合い、覚悟を決めた上でそれぞれ別の道に進んだハズですから、内情を知らない外部の人間があーだこーだ言うのは野暮だと百も承知ですし、今更「G4Nに戻ってくれ!」とは言うつもりは全く無いんですけどね。如何せんいまだに"3ピースのGOOD4NOTHING"というものに違和感が拭えないもので...
ただまあ本作の曲をG4Nでレコーディングするとしたら、せいぜい変わり種の曲としてアルバムに1曲入れるくらいが関の山だっただろうから、単体のアルバムとしてリリースできたことは、TANNYさんが新バンドを始動させた意義となるはず。
個人的に本作は
"メロコアっぽさを多少見せつつ、ダンサブルな要素やシンセを導入した叙情ポップエモ"
という感じです。
この曲が一番メロコアっぽい
本作の路線を象徴するのはこの曲かな