- シリアスさとエクストリームさ重視
- 直近作と同系統だがわかりやすさは多少減退
- 後半からラストにかけてのクライマックスが劇的
新世代メタルの旗手として活躍し、今やすっかりベテランと言ってもいいほどのキャリアを誇るまでになったメタルコア/正統派ヘヴィメタルバンド・TRIVIUMの、前作『What The Dead Men Say』からわずか1年半ほどのスパンで発表された10作目のフルアルバム。
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リリースペースがこれだけ早いのは、当然ながら新型コロナウイルスの影響でライヴ活動が停止してしまったからで、通常であれば楽曲制作の時間をツアーの合間に捻出しなければならないところを、うまく現状を利用してアルバム作りに取り掛かることができたようです。
ここ二作のTRIVIUMのアルバムは、彼らに求められる正統派のメロディックメタルに、メタルコアを出自とするエクストリームな要素がバランスよく配合された、極めて安定感あるもの。そして最新作である本作も、その路線の延長上にあるもので、ヘヴィでタイトなリフと疾走感、マシュー・キイチ・ヒーフィーによる血の気の多いスクリームが至る所に顔を出し、概してアグレッシヴな作風。
もちろん徹頭徹尾エクストリームになることはなく、サビではテンポを落としてメロディックに決める箇所が頻出。直近の作品を気に入っていた人であれば裏切られることはほぼ無いであろうアルバムです。
ただ前作にあったキラーチューン「The Defiant」「The Ones We Leave Behind」ほどキャッチーな(と僕が感じる)楽曲は無く、大体の曲がシャウトを織り交ぜヘヴィかつアグレッシヴに突き進み、サビではキイチの男らしいヴォーカルで彩る、と言うスタンスが共通しているためか(これは本作に限った話では無いかもですが)、アルバム全体の起伏、各楽曲の印象に残る度は前作ほどではない。
やっぱりライヴ活動が思ったようにできず、フラストレーションを溜めがちだったのか、全体的に「陰」の印象が強い感じですね。メロディアスではあるんだけれど、わかりやすく明朗な感はあまり無い。これまでと比べるとちょいととっつきやすさは減退したのかも。
とはいえ、これほどの完成度の楽曲を1年ちょいくらいの期間でここまで仕上げ、取り揃えることができるバンドの地力の高さは、充分以上というくらいに感じることができる充実作でしょう。捨て曲らしい捨て曲は当然ながら皆無。
特に後半、M7「No Way Back Just Through」〜M10「The Phalanx」の流れはかなり強烈。甘さのない強靭なシャウトのオンパレードでありながら、土臭い哀愁の効いたシリアスなサビで熱くなるメタルチューンの4連打です。
M7、M8「Fall Into Your Hands」はともにサビの哀愁が一際に強く、M9「From Dawn To Decadence」は出だしからかなりアグレッシヴな爆走を見せ、シャウトの気合の入りっぷりも見事。ラストのM10は最後にふさわしく大仰で神聖なムードをイントロの時点で醸し出し、最後の最後で一気に不穏なギターフレーズでスローになり、シンフォニックなサウンドとともにラストを美しく締め括る。
制作期間が長くなかったであろう中でも、キャリアに裏付けされた極めて安定感のある濃密な良作を生み出してくれました。もう少しキャッチーさや、「Anthem (We Are The Fire)」みたいなオールドスクール寄りの曲があった方が僕の好みではありますが、10枚もアルバムを重ねて、なお研ぎ澄まされゆくサウンドには感嘆するばかりです。このバンドは外さないですね!
個人的に本作は
"エクストリームメタルとメロディックメタル双方を取り入れた安定のTRIVIUMメタル。前作と比べ各曲のカラー、わかりやすいキラーチューンは若干控えめに映るかも"
という感じです。