- メタル大革命に埋もれないパワー
- 陰鬱なヘヴィさを取り込みつつ超アグレッシヴ
- スラッシャー歓喜のスピード感にも不足なし
先日発売されたばかりの『ヘドバン vol.32』にて、METALLICA、NIRVANA、SOUNDGARDENと並んで、本作が大特集されていたので、改めてガッツリ聴きなおしてみました。
本作が発表された1991年は、NIRVANAが中心となってグランジ/オルタナティヴロックのムーブメントが勃発した年であり、世界のロックシーンの流れが激変して、ヘヴィメタルという音楽が死滅しかかってしまった時期。ヘドバンの言葉を借りるなら、まさに「メタル大革命」というべき年。
このムーブメントにより、メインストリームのロックは退廃的で暗いもの中心となり、今までチャートを賑わせていたセックス・ドラッグ・ロックンロール的HR/HMバンドの人気は急降下、80年代後半から過激に盛り上がっていたスラッシュメタルもガツンとスローダウンするなど、メタルバンドにとっては大変苦しい時代だったんだろうと思います。
まあその時には僕は生まれてすらいなかったので、「そういうことがあったんだなぁ〜」くらいにしか捉えられないのですが(笑)、ともかくヘヴィメタルという存在そのものが端っこに追いやられ、一気にダサいものと化してしまったらしい。
そんな中時代の最先端を行ったメタルバンドがMETALLICAで、グランジからの影響を強く受けたと思しきブラックアルバムを、メタル大革命の1991年にリリースしてメガヒット。そんな歴史的名作と同年に発表されたのが、日本のスラッシュメタルの代表格・OUTRAGEの4thフルアルバム。
ヘドバンのインタビューでも、盛んにNIRVANAやSOUNDGARDENの影響を語っており、METALLICAのブラックアルバムを聴いた時に自分らと同じルーツを感じ取ったのだとか。
show-hitorigoto.hatenablog.com
当人たちは住んでいる国すら違うけれど、それぞれが共通したルーツとなる作品に感化され、似たようなコンセプトを持つ作品をほぼ同時期に制作・発表したわけで、それがこの時代の最先端の音楽となったということですね。それをMETALLICAのようなビッグバンドと一緒に成し遂げたのが、日本のバンドだったと......そう考えるとすごいアルバムだなコレ。
前述の通り、内容的にはグランジに強く影響を受けた陰鬱なヘヴィさが支配的で、スラッシュメタルというジャンルから想起されるリフのザクザク感はさほどでもない。
しかし、いかにヘヴィさを強調しようとも、決してメタル的攻撃性と鋭さを失わない演奏、ハードコアパンクの素養も飲み込んだ荒々しい突進力、メロディーらしいメロディーをあまり感じさせなくともキャッチーに響かせてしまう歌やシンガロングの組み立て方など、全ての要素が高度な次元で構築されていて、決してオルタナ化を狙って己の本分を見失ってしまったような事になっていない。
M1「My Final Day」と、それに続くM2「Madness」の素晴らしさは今更言うまでも無いですよね。一緒に叫ばずにはいられないシンガロングを主軸に据え置いた爆速チューンM1に、聴き手の鼓膜を叩き潰すかの如く振り落とされるリフでスピードアップし、ラスサビへとつながるM2。このオープニングでアドレナリンはあっという間に沸点へ。
引きずるようなスローテンポ、低音部を強調したバキバキのベースで負の空気を形作り、どこかアジアンテイストなメロディーも盛り込んだM3「Follow」で、当時の時代背景に合ったヘヴィチューンを演出し、かと思えばハードコアの香りを如実に感じさせるスラッシーなM4「Wings」、M5「Sad Survivor」という強烈な二連打で、疾走好きリスナーの欲求を満たし尽くす。ドッシリしたベースを下敷きに、暴れ狂うギターソロが閉口するほどカッコいい。
そんな暗くスローなパートと、シリアスでアグレッシヴなパート双方を見事に交錯させたM7「Veiled Sky」も面白く、アルバムのラストを締め括るのが、超ストレート、小細工なしのスラッシュチューンM9「Fangs」だというのも痛快。
90年代を代表するメタルアルバムはもちろんブラックアルバムですが、僕の中では本作の方が輝いて聴こえます。
個人的に本作は
"時流に流される事なく自身の音楽を貫きつつも、90年代メインストリームになり得る音楽の要素を取り込む事に成功した、奇跡のバランスを体現した名盤"
という感じです。
僕が持ってるのは旧規格のCDで音が小っせ〜んですよね。
30周年記念盤新たに買うべきか...?