ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

STRATOVARIUS 『Episode』

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  • メンバーチェンジにより演奏力レベルアップ
  • 疾走曲は押し並べて完成度が高い
  • ミドル曲の出来はもう一歩...だけどラストに名曲が

 

今年に入ってから、ほとんどヘヴィメタル関連の話題を出していないので、そろそろメタルCDについて書かないとな〜...ということで、冬らしく北欧メタルの決定盤を。

 

去年はHELLOWEENカイ・ハンセンマイケル・キスクという、かつての中心人物を呼び戻してアルバムをリリースし、日本ではGALNERYUSの新作が出て、ILLUSION FORCEがメジャーデビューしてと、メロスピ/メロパワと呼ばれるジャンルの力作に注目が集まりました。

 

そんなパワーメタルシーンの盛り上がり(言うほど盛り上がってもないと思うが)に合わせて、過去作のメロスピ名盤も取り上げてみたくなりました。フィンランドの...というかメロディックスピードメタルというジャンルの代表格であるSTRATOVARIUSの5thフルアルバム。

 

当時のバンドの中心人物であるティモ・トルキは、キーボードとドラムの技量に不満があったようで、本作発表前にバンドから解雇(ドラムのトゥオモ・ラッシーラはオリジナルメンバーでバンドの名付け親だというのだからお気の毒...) 代わりにスウェーデンのキーボーディストであるイェンス・ヨハンソンと、多くのジャーマンパワーメタルバンドで活動してきたヨルグ・マイケルという名プレイヤーを迎え入れて、本作を制作しました。

 

イェンスによるキラキラしたチェンバロ風キーボードは、まさに様式美メタルの正しき姿を描く劇的なもので、ネオクラ的シュレッドギターと組み合わさることで、流麗な鼻旋律の舞うスピードメタルとしてクオリティーが非常に高く体現されています。

 

ヨルグのドラムは、スピードメタルに相応しい突進力を備えつつテクニカルで、以前『Visions』の感想でも書いたと思うんですが、とにかく音が良いですよね。スパァン!と抜けの良い音で叩かれるスネアは大層好みです。

 

こうした凄腕のメンバーが加入し、バンドに新たな血を流し込んだのが功を奏したのか、本作にはB級メロスピ的な垢抜けなさはほぼ払拭されています。とにかくスピードチューンの出来には目を見張るものがあるでしょう。

 

M1「Father Time」は、そんな彼らの成長ぶり、および本作のメロスピとしての完成度を高らかに宣言する名曲。ギターリフがしっかりと主張し、かつネオクラシカルな速弾きとキーボードが交錯しながら疾走、やや細めながら軽やかに舞い上がるヴォーカルが綺麗に歌い上げる見事なナンバー。

 

その勢いを殺さぬまま、明朗さよりもシリアスな哀愁を際立たせたM2「Will The Sun Rise?」、ギターとキーボードの音数が加速度的に増していくネオクラスピードメタルM5「Speed Of Light」、ティモ・トルキのネオクラ素養が全編にわたり炸裂した速弾き満載インストM8「Stratosphere」、シンプルに王道の北欧メロスピを貫くM10「Tomorrow」と、疾走感に溢れた楽曲はどれも素晴らしい出来に仕上がっています。

 

そして疾走曲以外は、基本的にダークな雰囲気を纏ったスロー〜ミドルテンポの楽曲が主体。上述した楽曲と比べるとメロディーのフックはやや弱めで(下手に明るくならず仄暗さを保っているのは良い)、疾走曲がどれも良いだけにちょっと聴き劣りしてしまうか。こういった楽曲の輝きが増せば、有無を言わせぬ名盤と断言できるのですが。

 

ただラストを飾るバラードM12「Forever」は、イントロから強烈にクサく咽び泣くメロディーを垂れ流し、切ないアコギと合わさったヴォーカルが哀愁バリバリ。これは名曲。

 

ちなみにこの「Forever」、なんでも土曜の深夜にやっていた伝説のお色気番組『ギルガメッシュないと』にエンディングとして使用されていたとか、ヨン様(懐かしっ)が出演した韓国ドラマの劇中歌として韓国内で人気を博すも、このCDを買ったドラマファンが「Forever」以外のスピードメタルナンバーに面食らって返品騒動に発展したとか、なかなか香ばしい話題を振りまいた曲のようです(笑)

 

韓国ドラマの件はWikipediaに記載されていたことなので、ホントかどうかはわかりませんが、確かに「ヨン様〜!💖ヨン様〜!💖」と黄色い声援を上げるマダムにメロスピは合わんだろうなぁ...

 

 

個人的に本作は

"演奏力強化によりA級の輝きを得たネオクラシカル・北欧メロスピの力作。スピードチューンとミドルチューンの魅力の差がやや大きめか"

という感じです。