ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BIGWIG 『Reclamation』

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アメリカはニュージャージー出身の、メロディックハードコアバンドが2006年に発表した、現時点での最新フルアルバム。ここ最近になってまた聴き出したので、感想として取り上げてみます。

 

本作は以前このブログでも扱った名盤『An Invitation To Tragedy』から5年ぶりとなるアルバムで、このときからヴォーカル以外のメンバーが総入れ替えされているらしい。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

前作はメタリックな要素を取り入れつつ、キャッチーなメロコアとしての本分を色濃く残した作品で、キッズ大喜びの仕上がりになっていましたが、本作はその基本線こそ同じながら、また一味違う方向性に舵を切っています。

 

なんと前作にもあったメタル要素、これを大幅に増量するという手段に及んだのです。ザクザクに細かく、アグレッシヴに刻み込まれるギターリフ、時折挿入されるピロピロした速弾きギターソロは(サウンドプロダクションこそパンクらしいものですが)紛れもなくメタルのそれ!バキンバキン高音のアタック音を散らすベースに、パンクらしい荒さもそこはかとなく感じさせながら、強靭かつタイトにまとまり、疾走しまくるドラムもかなりのカッコよさ。

 

どこか哀愁を纏ったキャッチーな歌メロと、それを歌い上げるヴォーカルの声質、および頻繁に上がるシンガロングは、完全にパンク・メロコアの系統のものなので、あくまで骨格はパンクロックであると主張しています。そこへガチガチにメタルなサウンドをブチ込み、見事なパンク・メタルを生み出しました。

 

前作がパンクバンドが武器としてメタルを持ち出していましたが、本作は武器どころか体にまとう防具に至るまで、ガッツリメタル武装をしてきています。曲によってはスラッシュメタルとしても遜色ないリフを掻き鳴らすのです。いかにもメロコアってな明るさはほぼ鳴りを潜め、全体的にダークなムードが支配的なので、純然たるパンクキッズは望まぬ方向転換かもしれませんが...

 

カナダのパンクバンド・SUM 41が部分的にメタル要素を取り入れた『Does This Look Infected?』、その後さらにメタル度を進行させた『Chuck』をリリースしましたが、印象としてはそれに近いですね。

 

本作に収録された疾走曲の破壊力たるや相当なもの。M1「A War Inside」から、粗野なパンクヴォーカルとメタリックなサウンドで爆走という、本作の路線を象徴する突っ走りっぷり。

 

2分に満たない時間ながら、凄まじいアグレッションの潮流をイントロからブチかまし、哀愁を強めたサビのヴォーカルと裏のギターフレーズが気持ちいいM4「Cross And Burn」、スラッシュメタルばりの切れ味を誇るリフがド頭から炸裂、「METALLICAがパンクロックバンドだったら」というありえないIFに思いを馳せることができる(?)M5「Follow The Leader」、カチャカチャいうカッティングギターと軽快なベースラインは紛れもないスカコアながら、それにしてはあまりにもバッキングが破壊的すぎる(笑)メタリック・スカコアナンバーM9「Last Song, Last Call」など、疾走曲はどれも素晴らしい仕上がりです。

 

弱点としては前述の通りメロコアらしい明朗な印象が希薄化したため、M6「Rat Race」やM8「Time Bomb」のような疾走感の無い楽曲の面白みが弱めな点か。ダークな中にももう少しわかりやすいキャッチーさは残しておいても良かったかも。

 

まあそんな不満も疾走パンク・メタルの前にはかき消されてしまいます。本作の路線の最高傑作と言えるタイトルトラックM7「Reclamation」は、緊迫感を募らせるベースのイントロ、ツインギターが絡み合うフレーズを経て爆走し、爆発力全開なサビを展開、そして後半に至っては、痛烈なエモーションを発散する劇的ツインリードまで登場!そしてダメ押しとばかりのラスサビ!これぞパンクとメタルの融合という試みの、一つの到達点と言ってしまって良いのでは!?

 

メタル色濃いパンクバンドといえば、前述のSUM 41の他にもSTRUNG OUTTHRICE(去年アルバム出してたこと全然知らんかった...)などがいますが、その中でも本作はパンクのアグレッシヴさ、メタルのタイトさ、劇的さの融合という観点で、非常にクオリティーの高い楽曲を提示していると思います。日本での知名度が今ひとつなのが納得いかんので、多くのパンクス・メタルヘッズ双方に聴いてほしい。

 

 

個人的に本作は

"メタル路線を大胆に推し進めた爆速チューン目白押しの名盤。タイトルトラックはパンク・メタル界のアンセム"

という感じです。