ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

FLATBACKER 『戦争 -アクシデント-』

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  • わずか数年で姿を消したバンドの名作1st
  • 鼓膜を直で突き刺す激高殺傷能力
  • いいかげんにしなさいよ 今にいたい目にあうわよ

 

前回はAIONの『HUMAN GRIEFMAN』という過去のJ-METAL名盤について書いたので、その流れに沿ってもう1枚。1985年に発表されたFLATBACKERの1stフルアルバム。

 

もともとはFLATVACKER名義で、北海道にて結成。コンテストの出場やデモの発表を得て、ビクターからメジャーデビューを果たしたのが今作です。

 

1986年に2ndアルバム『餌 -ESA-』を発表した後、海外進出のためにアメリカへと渡ってから、バンド名をE・Z・Oへと改名したことで、FLATBACKERとしての活動はすぐに終了してしまった模様。そんなE・Z・Oも1990年に解散してしまって、現在メンバーはミュージシャンとしての活動は終了させているようです。

 

ヴォーカルの山田雅樹さんのみ、近年までニューヨークでバンド活動をしていたようですが、それも活動休止しているらしく、現在どのように過ごしているのかはわかりません。知ってたら誰かおせーて。

 

活動期間も短く、今後再結成する可能性も限りなく低く、出したアルバムの枚数も決して多くはないという、なんともミステリアスな雰囲気を醸し出すバンドですが、そんな彼らの最初の音源。メンバーのビジュアルの強烈さはもちろん、サウンドから放たれる殺傷能力も並大抵のものではありません。もう40年近く前のアルバムになるのにもかかわらず、今聴いても新鮮なインパクトがある。

 

その最たる要因はやはりなんといっても山田さんの魂の絶唱っぷり。やたら耳に残るフレーズを活かした日本語歌詞を、尖りに尖らせまくったキレまくりのシャウトに乗せる様は、一度聴いたらなかなか忘れられない。耳に、鼓膜にダイレクトで突き刺さってくる。

 

演奏においても、ヘヴィメタルだけでなくスラッシュやハードコアからも影響を受けていたというメンバーの素養に裏打ちされたものになっていて(全員の共通項はMotörheadだったらしい)、メタルらしい硬質なリフを主軸としながらも、タイトさと同等に荒々しさも生み出す。ガンを飛ばす恐ろしげなジャケットに違わず、サウンド面の攻撃性はかなりのもの。

 

アグレッシヴな演奏に、アグレッシヴなヴォーカルが乗るんだから、楽曲が強力なものになるのは当然。そんな彼らの魅力が最大限発揮されたのが、なんといってもオープニングを飾るM1「ハード・ブロウ」でしょう。

 

"ハッハーッ!"という雄叫びからゴリッゴリのギターリフで爆走!一発で覚えられそうな"いいかげんにしなさいよ〜!今にいたい目にあうわよ〜っ!!"のシャウト!"エ〜〜ス!ウォ〜〜〜!エ〜〜ス!"からの"Deal A HARD BLOW!!"のシンガロング!

熱い熱い熱い!!!超カッケエエエエーーッ!!

 

この曲のカッコ良さ、熱さは理屈じゃ説明できんな!リスナーのメタル魂に直接訴えかける、魂の名曲!この泥臭くも爽快で中毒性のある楽曲は、全編英語詞のメタルじゃ再現できるまい。まさにジャパメタだからこそなし得たもの。

 

正直この曲のインパクトがデカすぎるきらいはあり、これ以降の楽曲において、オープニングと同等の興奮を得られる瞬間は無いのですが、もちろんそれはその他の楽曲が捨て曲であることを意味しません。

 

M6「宣戦布告」やM10「カムフラージュ」のような疾走感を武器にした曲の滾りっぷりは文句なしですし、LOUDNESSを思わせる正統派ナンバーM7「アクシデント」もカッコいい、M3「ミミズ」はスローテンポながら、地を這いつくばるような重低音がテンションの低下を一切感じさせない。

 

M4「ダンス」の"Da Da Da Dance! Dance! Dance!"というキャッチーなヴォーカルワークはともに歌わざるを得ないし、かといってM8「ガス」の狂ったような叫びは常人じゃ真似できない(笑) ヴォーカル面の面白さも一筋縄ではいかず、熱きジャパメタの普遍性と、バンドならではの個性がうまくミックスされたアルバムと言えますね。

 

やたら癖の強い日本語詞はやや聴き手を選びやすいかもしれませんが(それが魅力なんですが)ヘヴィメタルという音楽に熱さ、激しさ、感情の昂りを求めている人は是非とも遡って聴いてほしい傑作。スタイリッシュでクールなサウンドや、洗練されたモダンなバンドには出せない、いなたいジャパメタならではの魅力がここにあります。

 

 

個人的に本作は

"殺傷能力抜群のヴォーカル、破壊的演奏、類を見ない個性的歌詞が一体となった衝撃作"

という感じです。

 


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