- 整合性よりも衝動重視のピュアスラッシュ
- 脳を斬り裂く殺傷リフの危険な快感
- 大半の曲を彩る疾走感に溺れる
「スラッシュメタルの魅力は何か?」と聞かれたら、なんと答えますか?
人によって答え方は色々あるとは思いますが、恐らく共通しているのは「スピード」「リフ」に関することではないかと思います。うんうん、やっぱそう思うよね
(全然違うことを考えていた人はごめんね)
猪突猛進という言葉がふさわしい疾走ビートに、ザックザクに研ぎ澄まされた切れ味抜群のリフ。これらが合わさって突っ走ることで、えも言われぬ興奮を生み出す......これぞスラッシュメタルの醍醐味です。
そんなスラッシュメタルの魅力を荒々しくもダイレクトに伝えてくれる有望株が登場しました。今回取り上げるカナダ出身の若手スラッシャー・TYMOの2ndフルアルバム(前身プロジェクトから数えれば3作目らしい)にして、日本デビュー作です。
このバンド、The Metal Archivesのページで見てみると、メンバー全員「元なんとか」みたいな経歴が無く、ギタリストのニック・シュワルツ以外は他バンドの兼業もしていないようなので、真の意味でキャリアの短いバンドなのだと思われます。
音楽性としては、ピュアと言ってしまえるほどオールドスクールなスラッシュメタル。メロデス的要素やモダンなサウンドにはほぼ目を向けず(前作はモダンだったようですが)、ひたすらクランチのようなザクザクバリバリのリフを刻みつけ、荒くれまくった吐き捨てヴォーカルと疾走するドラムで突っ走る!まさにスラッシュメタルとしか形容できない音を貫いていて潔い。
速弾きギターソロなどはそこまで整合感はなく、荒削りというか未整理と思しき部分もあるのですが、そういった部分も含めて、若いロックバンドらしい衝動、躍動感が激っている。聴いていて純粋にテンション上がります。
何より魅力的に思えるのがギターリフですね。適度なヘヴィさは保ちつつも、モダンな感触には目もくれず、巧みさ以上に攻撃力重視のリフが全編にわたって刻まれる。イヤホンで聴いていると、脳がギンギラの刃で血飛沫を上げながらズタズタに殺傷されていくかのような快感。この「リフの気持ちよさ」という点に関しては、スラッシュメタルとしてほぼ満点なんじゃないでしょうか。もっと斬り裂いてくれ。傷薬とガーゼと包帯が足りなくなるほどに斬ってくれ。
またアルバム中ほとんどの曲を疾走曲で固めてくれた構成も大変ありがたい。スラッシュメタルのキモである「速さ」ですが、アルバムによっちゃ半分くらいはミドル〜アップテンポの曲で締められている場合もあり、「あんまり疾走しねえじゃねえか」と思った経験も多い。
翻って本作はというと、大半の曲でアホみたいに疾走。多少テンポが落ちる瞬間もあるにはありますが、それにしたって小気味よいアップテンポで留まってくれる。バラードと呼べる曲なんか存在しない。ひたすらスピードとリフのコンビネーションに溺れさせてくれる曲ばかりで構成されている。スラッシュメタルのアルバムとして、こんなにありがたいことがあるでしょうか。
丁寧さよりも勢いを重視した演奏、悪ぶったヤンチャさマシマシの歌詞も含め、スラッシュメタルの快感要素を極限まで高めたような潔すぎる名作。とりあえずメタルで興奮したいならコレ聴いときゃ間違いないはずですよ。こういう音をスラッシュメタルに求めていました。
ただ国内盤ボーナストラックのリハーサル音源2曲については、本当に2022年のCD音源なのか疑わしい程音質が悪いので、ぶっちゃけありがたみは無いです(笑)
個人的に本作は
"徹底的にスピーディーかつリフ重視の王道スラッシュメタル。殺傷性激高のリフに斬り刻まれる快感を堪能しよう!"
という感じです。