ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ulma sound junction 『Reignition』

  • 新曲と過去曲を混ぜたメジャーデビュー作
  • ロディアス&プログレッシヴ&ヘヴィ
  • 破壊と激情を表現するヴォーカルワーク

 

2005年に沖縄県石垣島で結成された4ピースプログレッシヴメタル/カオティックハードコアバンドの最新EP。

 

これまでにもバンド名自体は目にしたことがあり(最初に存在を知ってからしばらくは「ultra sound junction」とバンド名を誤読していました)、インディーズバンドコンテストのEmergenza Music Festivalにおいて優勝するなど、実力派バンドなのだろうな〜と思ってはいました。

 

しかし、すっかり情報が溢れかえり、仕事もどんどん忙しくなっていった昨今。SNSとかでチラッと見かける程度の接点だけでは、なかなか音源を聴くまでには至らないというのが現状です。チラッとMVを見るくらいはしたものの、音源をしっかりと聴くことはありませんでした。彼ら以外にも「名前はなんとなく知ってるけど触れてない」という存在のなんと多いことか...

 

結局彼らとのファーストコンタクトは、キングレコードからのメジャーデビュー作ということで話題になった本作からとなりました。

 

本作は純粋な新作とは言い難く、新曲はM1「Modern Breed」のみ。残りの4曲はインディーズ時代に発表した曲のリレコーディングトラック。メジャー一発目の音源で再録モノから入るというのも珍しい気がしますが、まずは自分達の音楽がどのようなものなのか知らしめる目論みがあるのでしょうか。

 

収録曲数はわずか5曲ですが、複雑怪奇にねじれ回るサウンドの妙により、全体的に長尺傾向にあり総収録時間は30分以上に及ぶ。正確無比かつ高い水準の技巧により、変拍子もものともせず構築する演奏、シャウトもクリーンも達者なヴォーカルが織りなす楽曲群。ニューメタル的なヘヴィさ、国産ラウドらしいメロウなアプローチ、カオティックハードコアとしての情報量により、かなりのインパクトを放つことに成功しています。

 

ちょっと語弊のある表現になってしまいますが、「プログレメタル化したPay money To my pain」と言いたくなるような感じ。クリーンヴォーカルのパートについては、どことなくPTPのKさんに通じる雰囲気がありますよね。PTPよりヘヴィ志向ですけど。

 

まず前述した新曲のM1ですが、これがまずオープニングとして強力。Djent的にも思えるモダンでヘヴィ、かつプログレッシヴに動き回るリフと、その奔放さを以上にテクニカルに支えるリズム隊の応酬が飛び交うサウンドから早速圧倒されます。そこにデスヴォイス・クリーンヴォイス共に達者な(これをテクニカルなベース捌きをしながらというのが恐ろしい)田村ヒサオさんのヴォーカルが乗っかる。インパクト抜群の演奏に負けないほど雄大、かつ攻撃的にヴォーカルラインを彩る。

 

やたら入り組んだ展開に、かなりヘヴィに刻まれるパートを経てから続くサビは、今までから一転して非常にキャッチー。まるで視界が一気に開けたかのように雄大な歌メロが響き渡るのが印象深く、つい聴いていてメロディーを口ずさんでなぞってしまいたくなる中毒性があります。

 

その後のリレコーディング曲についても(僕は過去作を聴き込んでないので実質新曲)同様にバンドの個性が息づいた楽曲で構成されています。M2「Rotten Apple」はリズムの掴みづらいドラムに翻弄されながら聴き進めていくも、サビになるとストレートかつメロディアスな展開へと移り変わる様が美しい。緊迫感を高めるベースから、やたら高密度に暴れ回る演奏力に意識を振り回されるばかり。

 

M3「Utopia」は、前曲に比べるとノリやすいリズム("bury and bury and bury"のトコとか)で縦ノリやモッシュを誘発させ、きめ細かなギターソロを挟みつつ、穏やかなクリーンパートを利用した、明確なストップアンドゴーも目立つ楽曲。これまたメロウなサビで聴きやすさを演出し、ラスト付近ではバスドラ連打による爆走パートも。

 

M4「Idea」は10分近くに及ぶ本作最長の楽曲。基本的にアグレッシヴなパートが多い本作にあって、スローさを全面に押し出したナンバーです。基本クリーンギターを基調として淡々と進み行き、途中で絶叫と共にヘヴィリフが刻まれ徐々にテンポアップしていく様に高揚させられます。ただ、やはりプログレを得意としていない僕としては、少なからずダレを覚えてしまうのは事実か。

 

M5「Elem-5/6/7」は、曲名からしてなんか小難しそうな臭いがプンプンするんですが、蓋を開けてみると最もサビのメロディーが美しい哀愁に満ちていて、一番とっつきやすい曲と言えるかも。ヴォーカルの表現力の高さが、こういったエモーショナルさ重視の曲もアリにしてしまっていますね。激しく複雑な演奏だけが武器でないことを物語っています。ラストのシャウトが迫力がありつつ切ない...!

 

一手先をまったく読ませない複雑な展開を見せるバンドサウンドに、激情も破壊衝動も見事に表現せしめるヴォーカル、モダンでヘヴィなプログレサウンドなのにエモーショナルとすら言いたくなるメロディアスなサビと、わずか5曲ながらかなり濃密な内容。これは世界で認められるのも当然と思えるハイレベルな1枚でした。

 

プログレッシヴロック/メタルというジャンルには、どうしても苦手意識が拭いきれない僕ですが、そんな人間さえ不可思議な中毒性に侵されてしまっております。

 

 

個人的に本作は

"テクニカルでモダンヘヴィなプログレと、アグレッシヴでメロウなハードコアの融合"

という感じです。

 


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