ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

DIR EN GREY 『UROBOROS』

  • 極めて陰鬱かつ怪しき宗教的ムードを放つ怪作
  • 狂気と表現力が完成形となった圧巻のヴォーカルワーク
  • 鬱屈した中に差し込む、あまりに美しいメロディー

 

前回はヴィジュアル系において、本格的エクストリームメタル路線の先駆者であるNOCTURNAL BLOODLUSTについて取り上げました。

 

この次は、そんな彼らのさらに元祖的存在、ヘヴィなサウンドをプレイするヴィジュアル系勢の起源にして頂点と言えるDIR EN GREYについて書いてみようかなと。来月にはニューアルバムが出ますけど。

 

デビュー時から現在まで、音楽性もルックスも別バンドかと思えるほどに変容してきた彼らですが、僕が彼らの作品において最高傑作だと信じて憚らないアルバムがこの作品。まあ過去作全部洗った訳ではないので、偉そうなことは言えないのですが。

 

極めて陰鬱で重々しい空気を作品全体に漂わせ、そんな中にもアジア圏のバンドらしい湿った仄暗さと宗教的ムードも持ち、徹底的にヘヴィかつ狂気的に突き進む。クリーンヴォーカルにのみそれっぽさを残してはいるものの、これほどまでドロドロした邪悪さ、変態性を押し出してしまえば、もはやヴィジュアル系ロックの雰囲気はほぼ無いと言える。

 

バンドの看板である京さんのヴォーカルについては、常人には理解し難い凄まじいレベルに到達。十八番の低音グロウルから、悲壮美を見事に表現するクリーンへの切り替わりはもはや人間業とは思えない。金切り声を巧みに織り交ぜて、気が狂ったかのような絶叫をブチまける様は何度聴いても閉口してしまうほどの迫力を持っています。

 

ちなみに僕が初めてDIR EN GREYを聴いたのも、本作収録のM3「RED SOIL」のMVを見た時です。後半のイカれ切った叫び声的な何かは、彼らの存在が脳内にこびりつくのに充分すぎるほどでした(笑) プルッキャッキャッキャ!

 

しかし、それ以上に本作を名盤たらしめている要素は、サビなどで聴かれる美しく悲しいメロディーにこそあると思うのです。

 

M4「慟哭と去りぬ」のサビや、バラードのM6「GLASS SKIN」、M9「我、闇とて•••」、M15「INCONVENIENT IDEAL」などで特に顕著ですが、この狂おしいほどに悲しく、叙情的なメロディーライン。これこそ、彼らがただヘヴィで変態なことをやっているバンドではないことを如実に示すもの。メロそのものが良いこともそうですが、京さんの振り絞るような高音ヴォーカルに伴う感情表現により、美しさがより輝く。

 

前述のバラードナンバー以外だと、全編クリーンで通し、持てる感情を全て込めるかのような絶唱が聴けるM5「蜷局」、DIR EN GREY流ミクスチャーロックと言えそうな、スラップベースを主軸に弾み行くM7「STUCK MAN」、短い中に狂気のオーラをガッツリと詰め込んだM8「冷血なりせば」、キチガイ染みたヴォーカルにさらに磨きがかかり、本作中トップクラスのアグレッションでキレまくるM10「HYDRA 666」など、なかなかに曲調のバラエティも富んでいます。決して聴きやすいとは言えない音楽性ながら、聴いてるうちにズブズブと意識が取り込まれていく。

 

M13「凱歌、沈黙が眠る頃」は、そんな彼らの強みが全て活かされている名曲で、初っ端から狂気のホイッスル、グロウルと絶叫に塗れたパートでヘヴィに疾走し、突如として現れるハイトーンのサビの素晴らしさ!

 

インストを除けば実質的オープニングナンバーとなるM2「VINUSHKA」は9分越えの大作で、本作の核となるリードトラック。バンドのテーマである"痛み"を一貫して表現する名曲で、不穏なアルペジオに導かれるように呪術的に、怪しく、ゆっくりと、雄大に進んでいく。

 

そう思えば突如として疾走しエクストリームな疾走を見せ、そのまま静寂なパートへと急転直下。ラストのサビ、あまりにも痛々しい叫びへと至る展開が劇的で、長い曲を好まない僕ですら曲の世界観に魅了されてしまう、本作最高峰のキラーチューン。この曲の存在で、本作の名盤としての価値は決定づけられていると言っても過言ではないはず。

 

ヘヴィさと怪しさをゴチャ混ぜにして混沌の世界を描く演奏と、美と醜を完璧に表現する唯一無二のヴォーカルワーク、徹底的に陰鬱ながら、そこへ差し込む光を想起させるあまりに美しい叙情性。彼らの孤高の存在感、特別感は本作を持って完成形へと至ったと思っています。

 

なお、本作は2008年発売ですが、2012年にはリマスター盤が出ています。グロウルが奥に引っ込んでしまっているようなオリジナルの音質が劇的に良くなっており、サウンドもシャープで聴きやすいです。

 

さらに「HYDRA 666」はリマスターにしかありませんし、なぜかオリジナル盤では英語詞の収録となっていたシングル曲の「GLASS SKIN」「DOZING GREEN」が日本語詞に変わって、グッと味わい深くなってるのもオススメポイント。"奪われるまま 汚れるまま"の歌い回しが綺麗なのに、それを"please don't go, Ah, please don't go〜♪"って英語で歌われてもねえ...

 

そんなわけで、今から本作を購入するならリマスター盤を強く推奨します。

 

 

個人的に本作は

"陰鬱さと美しさを共存させ、唯一無二のヘヴィロックへと昇華することに成功した最高傑作"

という感じです。

 


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