ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

6/3 Jupiter / LIVE 「Heavenly Vision」 at 初台The DOORS

先日の摩天楼オペラの15周年記念ライヴに引き続き、またもやV系ロディックメタルのライヴです。別にギャ男ってわけでもねえのに。

 

V系界隈において、最も正統的なメロディックメタルを追求する姿勢を見せるJupiterのツアーファイナル公演。場所は初めて訪れる初台The DOORS。ツアーファイナルと言っても、柏と横浜、そしてこの日の初台と、3ヶ所しか周ってない上に関東に集中しているという、ツアーと呼んでいいかもわからないレベルのもの。

 

壁に貼っているポスターを見た感じ、V系サブカル色の強いアイドルなどが主な出演者らしく、ライヴハウスによくある国産ロック/パンク系アーティストのものは全くなかったです。Jupiterのようなメタルバンドでも出ない限り、足を運ぶ機会にはなかなか恵まれなさそう。

 

同じ日に下北沢にてSable HillsとGraupelという、国産メタル界トップクラスの若手有望株が揃い踏みするというライヴがあり、僕個人の好みで言うなら、そちらの方が興味深かったんですけどね。その2組はここ最近何度か観る機会に恵まれていたので、せっかくならあまり体感したことのないバンドを優先しようかと思いまして。着てたTシャツはCRYSTAL LAKEで完全に下北仕様だったけど(笑)

 

Jupiterのライヴは、2015年にDragonForceが『Maximum Overlord』のツアーとして赤坂BLITZでライヴした際、オープニングアクトとして出演をしたのを観て以来です。もう7年近く前になるのか...

 

当時はJupiterの曲は全くと言っていいほど聴いておらず、「VersaillesっていうV系なのにガチのメタルやってるバンドの進化系」くらいの認識しかない状態だったので、熱心には観ていなかったかな。まだKUZEさん加入前で、小規模ながらサークルピットができるくらいには盛り上がっていたのを覚えています。

 

そんなことを思いながら初台まで到着すると、すでにバンギャと思しき女性たちが店前で待機中。ネクラなメロスピファンっぽい男性客も何人かはいましたが、やはり大多数は女性客。

 

そしてお客さんの数はなかなか少なめなのが気になりましたね...。僕は当日券組だったので、会場時間ちょうどくらいに着いたんですけど、並んでいる人数は50人もいないくらい。スムーズに入場が進んで余裕で当日券も買えたし(ありがたいことではありますが)、ご時世的に来場者数の上限をだいぶ絞っているはずなのに、後方にはだいぶスペースがありましたからね。

 

まあ平日18時半開演というスケジュール感が、社会人的には合わなかったというのもあると思いますが、それでも金曜日で新宿から一駅で来れる場所なんだがな〜。

 

開演時間の18時半ちょうどに幕が開く(2階通路にいたスタッフさんが手動で開けてた) 次々とド派手な衣装とメイクを施したメンバーが登場するも、やはり一番目を引くのは女形ギタリストのHIZAKIさん。本人の見た目のインパクトもさることながら、真っ赤なボディに金色のバラをあしらったギターの存在感が凄すぎ。

 

真っ赤な衣装に身を包んだKUZEさんが登場してから、早速最新シングルのナンバーからスタートするわけですが、始まった瞬間からこのバンドのレベルの高さが手に取るようにわかる。

 

とにかく巧い。ヴォーカルも演奏も。本当にアルバムの音源と遜色ないパフォーマンスをしてくれるんですよ。ドラムはアルバムの音よりも打音の迫力が増していて、さらに印象が良くなる(音源のちょっと角が取れたような音があんまり気に入ってなかったので)

 

KUZEさんのヴォーカルは最初ちょっと演奏に埋もれてしまい気味で、聴きにくい瞬間もあったのですが、音のバランスが改善されると問題なく声が届いてくる。これがまた堂々としたパワーシャウトっぷりで、音程もバッチリだし、ハイトーンの力強さも申し分無し。CONCERTO MOONで鍛えられたであろうヴォーカルはきっとライヴでも良いものだろうと予想はしていましたが、ここまで楽曲のスケールをしっかり再現してくれるとは。

 

ただ「SHOW MUST GO ON」のようなモダンなタッチの楽曲で披露されるデスヴォイスは、やっぱり本業(?)がパワーメタルシャウターであり、エクストリームなスクリーマーではないからか、そこまでド迫力にはなりませんでした。まあデスヴォイスにパワーを求める音楽性ではないので大した問題ではないですけどね。

 

そしてバンドの音楽的中心人物であるHIZAKIさんですが、ギターの正確なテクニカルっぷりが凄まじい。高速なリフの刻みから速弾きソロに至るまで、本当に滑らかに手が動いていて、予想以上にヘヴィな歪みを効かせたサウンドと相まって、非常に迫力あるプレイを見せる。

 

リードギターソロにおいても音源にしっかりと沿ったメロディーラインを紡ぎ、ここまで生の現場で音源を忠実に再現できるメロスピギタリストって、なかなかいないのではないかと思わずにはいられない。

 

モダンプログレとかDjent系のバンドは、ライヴもかなり上手いのが当たり前みたいな感じありますけど、メロスピ/メロパワ系のバンドって、ライヴがテクニカルなイメージあんまりなかったですからね。

 

そして女形を極めているのもさすがで、しなやかに手を振り乱すパフォーマンスが実に美しく決まっている。リフはあれだけパワフルに弾き倒すのに、こういう所作は柔らかいんですね。

 

またギタープレイとは直接関係ないけど、「Theory of Evolution」のMVでも見受けられましたが、首をバッと振り向かせての視線がかなり強烈で、ギタリストとしての技量だけでなく、目力もパワフルなんだと思わされました(笑)  幸か不幸か、僕と目が合うことはなかった。

 

HIZAKIさんとTERUさんという、バンドの音楽の中核を成すツインギターの存在感はもちろんながら、ベースとドラムのリズム隊も安定感抜群。特にギターが結構ヘヴィで爆音にも関わらず、ベースラインがかなりしっかりめに聴こえるのが、ライヴでの音圧をパワフルなものにしている印象。

 

さらに言うならベーシストの方はサポートメンバーであるからなのか、他のフロントメンバーに比べて衣装があまりゴテゴテしておらず、メイクもさほど濃くない、そしてイケメンということで、僕個人の感覚としては、ステージ上のメンバーで一番シュッとしててカッコ良かったです。

 

あと最近知って驚愕したんですけど、ドラムのDAISUKEさんって、もともとROACHにいた人なんですよね...。JupiterとROACH、あんまりにもイメージが異なるバンドなので、にわかには信じがたい...。

 

そしてこれまた意外だったのが、MCの雰囲気。母体となったVersaillesのKAMIJOさんは「ボンジュール、ハニー!」なんて言葉をかける人だったらしいので、そこまでではなくともバンドの世界観をある程度守って、「さあ、私たちと共に麗しき世界へ...」的なこと(?)言うのかと思ってたんですが、MCで繰り広げられるのは予想外なほどにフレンドリーなやりとり。

 

HIZAKIさんが「メイクしていればお客さんも綺麗に見えるね〜」と言った後にKUZEさんが「関西人なんだから、もっと気の利いたこと言うのかと思ったのに」とチャチャを入れたり、TERUさんは爽やか系の体操のお兄さんかのような元気な呼びかけをするし、曲に入る直前になってセットリストを見ながら「次の曲なんだっけ?」とボソッとつぶやいたり、かなり親しみやすい感じで場内からも笑いが生まれる。

 

前述したDragonForceのオープニングの時も、そこまで浮世離れしたことは言ってなかったはずですが、このくらい力の抜けた感じではなかったと記憶してたので、「この人たち、案外フツーな感じの価値観を持ったイイ人たちなのかも」なんて思ってしまいました。いや、もちろん実生活は普通の人なんでしょうけどね。

 

そんなちょっと和んだMCや、Jupiterとしては久しぶりになるらしいインストを挟み、新作『Zeus 〜Legends Never Die〜』を中心としたセットリストを組み立てる。「The spirit within me」「TEARS OF THE SUN」のようなメロスピチューンはやはり高揚させられますね...。

 

ただやはりV系故なのか、サビでは一斉にジャンプしたり、手を前に差し出しながら横にフリフリしたり、サビ終わりのフレーズで両手を上げ下げしたり、決まった振り付けがあるかのようなオーディエンスの反応には慣れん(笑) 特に彼らは音楽的にはヴィジュアルロックではなく完全にメタルのそれなので、余計に違和感を感じるのかも。

 

特に2ビートで疾走するドラムに合わせて手拍子するというのは、他で見たことがない(笑) そこは髪を振り乱すヘドバンの方がよくない?

 

まあ楽しみ方は個々人で異なるし、あくまで見るべきはステージ上の演者なので文句は言うべきじゃないでしょう。高速リフに煽られるようにメロイックサインとヘッドバンギングで応えました。

 

アンコール前、およびオーラスには、10分を超える大作である「Zeus:Ⅰ. Legend Never Die / Ⅱ. Conversations with God」、そして新体制になって初の楽曲となる「Theory of Evolution」をプレイ。特にドラマチックなメロディーが聴けるナンバーなので、ラストに配されるのは納得。

 

特に「Zeus〜」の方は長尺にも関わらずダレを産まない展開、ラストのクワイアと共に壮大に締めくくる名曲で、この曲を聴きたかっただけに感動もひとしお。この曲が終わった後に深々と頭を下げた瞬間は、「もうアンコールいらないんじゃ...」と思うくらいの大団円。

 

これからしばらくバンドはライヴ活動を休止し、アルバムの制作およびバンドのブラッシュアップに努める期間に突入すると発表がありました。現時点で発表された最新シングルは、KUZEさん加入以降のスタイルをしっかりと突き詰めた楽曲に仕上がっていたので、ニューアルバムにも期待がかかる中での幕引きとなりました。

 

7年前の時点で良質なメタルをプレイするバンドだということはなんとなく記憶していましたが、今回改めて間近で観て、予想を超えるライヴでの音源再現力、歌唱と演奏のクオリティーの高さに驚かされました。意外なほどに親しみやすいMC含めて、見応えあるライヴでした。

 

しかし、これだけのクオリティーのライヴができるバンドが、300人入ればいっぱいになっちゃうようなライヴハウスのステージで、これだけの人数にしか観られないというのはもったいないですね。

 

今日本のメロディックメタル系統のバンドで集客力がありそうなGALNERYUSとかと比べても、スタンスの違いはあれど、ライヴパフォーマンスのレベルの高さは引けを取らないだけに、バンドのスケール感と会場の規模が明らかに釣り合っていませんでした。

 

やはりメタルファンにとってはあまりにもゴテゴテしすぎたヴィジュアルが敬遠され、V系ファンには男らしいメタルな歌声、およびメタルすぎる曲が好みに合わないのでしょうか。もっと多くの人が体感すべきライヴのはずなのですが。