ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

聖飢魔Ⅱ 『THE END OF THE CENTURY』

  • ダミアン浜田が大きく携わった初期の名盤
  • スピードナンバーはどれも秀逸の出来
  • ヘヴィな曲から哀愁寄りの曲まで様式美センスが息づく

 

悪魔教を布教するため、魔暦紀元前16年に地球へやってきた悪魔たちによるヘヴィメタルバンド・聖飢魔IIが、今年23年ぶりに大教典『BLOODIEST』をリリースするというニュースが入りました。

 

www.seikima-ii.com

 

僕は1994年という、それこそ世紀末の生まれなので、当然ながら聖飢魔IIをリアルタイムでは通っていません。

 

とはいえ1999年のバンド解散後も、ヴォーカルのデーモン閣下はテレビのバラエティなどによく出演されていたので、小さい頃から彼の存在は認知していました。当時は「奇抜なメイクをした変わったオッチャン」以外の認識はなく、まさかヘビメタバンドのヴォーカルだとは思いもしませんでした。

 

そしてヘヴィメタルを聴き始めてから、彼らの音源にも少しずつ手を伸ばし始めたわけですが、お茶の間でネタにされているイメージからは意外なほどに、非常にカッコ良く、かつハイクオリティーな正統派メタルをプレイしていることを知り驚いたわけです。

 

バンド名がバンド名なだけに、新世紀に入れば活動規模が縮小するのは仕方がないのですが、近年になって小教典のリリースは何度かあったので、ひょっとしたら大教典もいつの日か...?なんて考えもなかった訳ではありません。ただ、いざリアルタイムで彼らの大教典を聴く機会に恵まれることがわかると、なかなか感慨深いものがありますね。

 

そのニュースに触発される形で、改めて彼らの初期の名盤であり、ある意味バンド名を冠した作品である本作をリピートして聴いていました。

 

1986年に発表された、彼ら2枚目の大教典。デーモン閣下のお言葉によると本作は「"怪奇物語"というイメージ・テーマに基づき、聖飢魔IIの教えが聴くごとに心に刻み込まれている仕組みになっている」とのこと。物語というコンセプトゆえか、曲間にはデーモン閣下による語りが挿入されています。

 

現在はDamian Hamada's Creaturesを率いてメジャーデビューを飾った、ダミアン浜田が作詞・作曲を手がけた曲が多いのも特筆すべきポイント。先生になるために曲だけ作って、バンドの音源には参加しなかった彼ですが、曲作りの才覚はこの頃から既に非常に高いものがあったことを証明しています。

 

イントロのM1「聖飢魔IIミサ曲第Ⅱ番「創世記」」から、"フハハハハッ....聖飢魔II、The end of the century!"の掛け声と共に、実にドラマチックなギターリフで疾走開始するM2「THE END OF THE CENTURY」。これがいきなりの名曲。メロディックなツインリードが駆け上がる出だしからゾクゾクさせてくれます。堂々たる閣下のヴォーカルパフォーマンスも見事。

 

IRON MAIDENばりの劇的なメロディーを紡ぐツインリードが聴ける、文句なしにカッコいい正統派メタルM5「JACK THE RIPPER」に、アルバムのラストを締めくくる疾走ナンバーM8「FIRE AFTER FIRE」は、前述のM2と合わせて、本作を代表するキラーチューンと言えますね。デーモン閣下の強烈なハイトーンシャウトに、様式美メタルらしい美しくメロディアスな旋律が絡み合う名曲群です。

 

世間一般においては、M6「蝋人形の館」および曲前にある「お前も蝋人形にしてやろうか!」のフレーズが一人歩きしている感がありますが、本作を聴けば聖飢魔IIというバンドが蝋人形一辺倒のバンドではないことがよくわかるハズ。もちろん蝋人形は蝋人形で、不気味さとコミカルさがうまく混在した名曲ですけどね。

 

その他ミドルテンポの正統派メタルM3「DEMON'S NIGHT」に、美しい哀愁美旋律が大きく顔を出すM4「悪魔の讃美歌」、ずっしりとしたヘヴィさ、ダークさを重視したM7「怪奇植物」と、様式美HR/HMの枠に収まる形でバラエティにも富んでいるのも魅力。とにかく楽曲単体の魅力が大きい。

 

聖飢魔II氣志團と並んで「存在と見た目は広く知られているけど、曲は代表曲以外ほとんど知られていない」というバンドだと思っていて、こういう名盤を聴くたびに「もったいないよなあ...」と思う訳ですよ。

 

今回の大教典のリリースを機に、「蝋人形の館」以外の名曲たちが少しでも知られればいいのですが、SNS映えする音楽が話題の中心となり、イントロが長いのはうんたら、ギターソロがあったらなんたらと言われる今の日本の音楽シーンだとそれも望み薄ですかねえ...

 

まあそういう世間的な動きがどうこう関係なく、過去作を聴きつつ、どんな新曲が披露されるか期待しながら動向はチェックしていきたいと思っています。

 

 

個人的に本作は

"バラエティに富んだ各曲に、様式センスが息づいたメロディーを導入した正統派HR/HM。蝋人形だけが聖飢魔IIではない"

という感じです。