- ARCH ENEMYの記念すべき第一章
- 後期CARCASS由来のメロディックなギターが大盤振る舞い
- アングラなデスメタル風味も強め
ここんところ、amorphisにGladenfoldと、北欧メロデス(二組とも純然なメロデスとは言い難いですが)を聴き込んでいたので、その流れに乗って北欧メロデス界の代表格のアルバムも聴いていました。
日本のメタルシーンにおいては、もはや説明不要と言えるくらいまでのポジションにまで至ったARCH ENEMY。残念ながら延期になってしまったものの、今年発売のアルバムにも期待がかかるところです(「予期せぬ事態が発生したため」とのことですが、延期の理由ってどれも大体そういうもんじゃ)
そんな彼らの新作に期待をかけつつ、ここ数日よく聴いていたのが1stアルバム。メロデスの歴史を語る上では欠かせない名盤ですね。
もともとはエクストリーム極まりないグラインドコアをプレイするバンドだったCARCASSに加入し、残虐なサウンドに哀愁のメロディーという新たな血を流し込み、名盤を生み出したギタリストのマイケル・アモットが、友人であったヨハン・リーヴァと再会したことをきっかけに生まれたバンド(もともとはマイケルのプロジェクト的存在だったらしい)
本作はデスメタルというアンダーグラウンドな音楽らしく、ひしゃげて潰れたような歪みのギターリフが中心となり、過激で禍々しく、概して退廃的。CARCASSの名盤『Heartwork』のサウンドから大きくは変わらない雰囲気で、デスメタル志向の人にも受け入れられやすいかと思われます。
そして本作の、というかARCH ENEMYのキモであるマイケル・アモットの叙情性抜群のリードギター。これが、そんなデスメタルらしい邪悪なムードを邪魔せずに、バッチリ音楽の中へと溶け込んでいます。
M1「Bury Me An Angel」は、本作の路線をオープニングから高らかに示す、メロデス界永遠の名曲。ダイナミックに舞い踊る泣きのリードギターが大盤振る舞いで、途中のスローパートにおけるもの悲しい旋律にも、心震えるものがあります。
そのままの勢いを引き継ぎ、ARCH ENEMY流デスメタルの王道を進むM2「Dark Insanity」に、リフのヘヴィさとアグレッションがさらに強調されたM4「Idolatress」、IN FLAMESを彷彿させるアコースティックパートから、強烈な泣きを発散するツインリードが炸裂するM5「Cosmic Retribution」と、ダークでアグレッシヴ、かつメロディアスな楽曲が立て続く。
ボートラを除くラストのM9「Field Of Desolation」は、疾走感こそやや控えめながら、退廃的なムードをプンプンに放つリフがズルズルと進み行き、流麗なツインリードで泣きを表現する名曲。ただこの曲においては、3rd『Burning Bridges』において、ラストのギターソロを大幅に拡張させたバージョンが収録されているので、そっちを聴いた方がいいかも。
ボートラを入れても全11曲、そのうち3曲がインストで、総収録時間は40分に満たないというボリュームの薄さがネックになるかもですが、それはすなわち長時間聴き続けることによるダレとは無縁ということでもあり、必ずしもマイナス点ではないですね。
このアルバムが日本においてヒットし、リリース後の来日公演でかなりの好感触をメンバーが得たことにより、ARCH ENEMYを単発のプロジェクトではなく、継続したバンドにすることを決意した、というエピソードもあるらしく、日本のエクストリームメタルシーンにおいても特に重要作と言えます。
個人的に本作は
"退廃的なデスメタルを主軸に、強烈な泣きを帯びたギターを導入したメロディックデスメタルの歴史的名盤"
という感じです。
この映像ではヨハンがギターヴォーカルやってるっぽく映ってるけど、昔はギター抱えてやってたの?それともただの演出?