- 北欧メロデス創世記の名盤
- 慟哭ギターの他、アコギを大胆に使った北欧情緒が満載
- 洗練とは無縁のアングラ臭が強め
前回ARCH ENEMYの1stアルバムについて書いたので、その次はまあこのバンドですかね。同じく北欧メロデスシーンにおける代表格であり、現在はオルタナティヴな音楽性で、ワールドワイドに活躍するIN FLAMESの1stです。
メロデス時代のIN FLAMESの音楽性における中心人物、イェスパー・ストロムブラードを有しつつ、現在のバンドの看板であるアンダース・フリーデンはまだこの時点で不在。ヴォーカルをとるのはDark Tranquillityのヴォーカルであるミカエル・スタンネ。
イェスパーとミカエルの組み合わせといえば、今年のDownload Festivalで来日も決定している、THE HALO EFFECTの活動にも期待がかかりますよね。先行されているシングル曲を聴く限り、イェスパーらしいギターはしっかり聴けそうで、アルバムのリリースも待ち遠しいです。
90年代初頭からどんどん隆盛していくスウェディッシュ・デスメタルのシーンの流れに乗るように、1994年にリリースされた本作。サウンドの質感は紛れもなくアングラ臭満載のデスメタルであり、音質もかなりチープ。演奏も疾走パートでイマイチリズムが安定していなかったりと、どうにもこなれていない印象が強い。
しかし、イェスパーによる叙情性を多量に含んだ哀愁のリードギターのフレーズ、チープながらも焦燥感、退廃的ムードをしっかりと醸し出すデスメタルらしいリフの魅力は、この時点で顔を出していることがわかります。
いわゆる「イエテボリサウンド」というヤツでしょうか。イェスパーがギタリストとして在籍していたCEREMONIAL OATH(1stアルバムのジャケットがメッチャキモい)あたりが土壌を作ったサウンドの質感。後年になって、このサウンドの最高到達点と言ってもいい傑作『Colony』をリリースするのですが、それはまだ先のお話。この時点では正直洗練されているとは言い難いです。
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しかしこのいかにもデスメタルってな感じの、ドロドロした音質は、これはこれで趣があって嫌いじゃないですね。洗練されたラウドでシャープな音も好きですが、こういった音にも味がある。
その魅力が端的に表されているのが、メロディックデスメタルというジャンルを語る上で外せない名曲M1「Behind Space」(大学時代のエクストリームメタル好きの講師が「奇跡の名曲」と言ってた)
叩きつけるようなアグレッシヴなドラムに、メロディアスな慟哭リフで疾走、ところどころテンポチェンジを繰り返しつつ、ラストにかけて一気に盛り上がってから、ストンと静寂に包まれ、メロウなアコギにより儚く締められる。
この曲は上述した『Colony』で再録されていますが、そこで聴ける洗練された音作りでは、この曲の魅力は100%出せていないと思っています。メロディックデスメタル黎明期だからこそ生まれた魅力です。
北欧土着的な民謡風フレーズからインパクト大であり、そこから叙情メロデスへとスタートさせるM3「Starforsaken」に、スピードを抑えてヘヴィなリフを主軸としながらも、どうしようもないほど悲しみに溢れたフレーズで満ちたM5「Everlost Pt.1」、リードギターに注目しがちな音楽性ながら、刻まれるリフがなかなかにカッコいい疾走曲M9「Upon An Oaken Throne」など、古き良きスウェディッシュ・メロディックデスメタルの連続。
そしてこのアルバムの特徴として、ノーマルなメロデススタイルのみならず、アコースティックサウンドと女性ヴォーカルを大胆に導入していることが挙げられます。
前述したM1のアコギの使い方はもちろん、M5と組曲形式となるM6「Everlost Pt.2」は、アコギの伴奏と女性ヴォーカルのみが淡々と歌い上げる楽曲で、メロデスのメの字もない。さらにそこから続くM7「Hårgalåten」は、弦楽器による同名のスウェーデン民謡のインスト。アグレッシヴな慟哭一辺倒ではない多様性が支配的で、他のメロデスアルバムとの差別化につながっています。
まあ、個人的には純然たる慟哭メロデスナンバーで固めている方が好きではあるんですけどね(笑) この北欧由来のクサメロは、心に強く響くものがあります。
なお、僕が持っているのは95年に発売された国内盤で、本編終了後にミニアルバム『Subterranean』の楽曲がセットで収録されていて、全16曲、1時間を超える収録時間になっています。
お得っちゃお得かもしれませんが、エクストリームメタルを長時間聴くのは疲れるんで、個人的にはさほどありがたくはないな。『Subterranean』持ってるし。
個人的に本作は
"北欧土着のスウェディッシュ・デスメタル黎明期の空気を色濃く残した慟哭メロデスの元祖"
という感じです。