ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

摩天楼オペラ 『真実を知っていく物語』

  • 新体制となって放つ過去最高傑作
  • 「美しい歌メロのメロディックメタル」という統一感
  • アルバム単位、曲単位双方において圧巻の完成度

 

ヴィジュアル系シンフォニック/メロディックスピードメタルバンド・摩天楼オペラの、前作『Human Dignity』以来3年ぶりとなるフルアルバム。フィジカル音源としてはミニアルバムの『Chronos』以来2年ぶり。

 

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2020年にギタリストのJaYさんが脱退し、その後のサポート期間を経てから、僕も足を運んだ15周年ライヴを境に新ギタリストとして優介さんが加入。再び5人体制となってから初の音源となります。

 

JaYさん脱退によりギタリストがサポートになった時期においても、大村孝佳さんを迎えた「儚く消える愛の讃歌」、そして優介さんがサポートの体で参加した「終わらぬ涙の海で」という、強烈なメロスピナンバーをリリースし活動を止めなかった彼ら。

 

そして上記した15周年ライヴで初披露された、本作のオープニングトラックである「真っ白な闇がすべてを塗り替えても」が、一度聴いただけですぐに素晴らしい名曲であることがわかっただけに、本作に対する期待値はかなり上がっていました。

 

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そして聴いてみて、その期待にしっかりと応えてくれた......どころか、大きく上回ってくれました。これは素晴らしい。まさに会心の出来と言っていい。

 

前回の『Chronos』の感想文の中で、「これが今の摩天楼オペラの作風なのだとしたらちょっと寂しい」みたいなこと書いたんですが、そんな僕の心境を知ってか知らずか(知るわけねー)本作で聴けるサウンドは、モダンな側面もありつつも、美しいメロディーセンスを柱とした流麗なメタルサウンド

 

透明感のあるキーボードと、かつての楽曲で多用されたクワイアによる装飾、演奏自体は非常にテクニカルにまとまりながら、主軸となるヴォーカルのメロディーはインスト以外の全ての曲で目立っている。この豪華絢爛さとメロディーの充実ぶりがまず嬉しい。

 

新加入となった優介さんによるギタープレイも、プログレメタルコアバンドで鍛えられた速弾きによる技巧はもちろん、メロディアスな泣きをも感じさせるリードの存在感もある。単純に音作りの面でも、かつてのAnziさんやJaYさんに比べて僕好みだということもあって、リフの聴きごたえも増している印象です。

 

新たな名曲となり得る前述のM1で華麗なスタートを切った後、そのテンションを落とさないよう、モダンなアグレッションを持つM2「零れ落ちていく未来」、M3「赤い糸は隠したまま」の二連チャンで前半の勢いを決定づける。こういった曲でも美しい歌メロが主軸になっているのがポイント。

 

そこからのM4「」が、これまた哀愁バリバリの歌メロが冴わたる、摩天楼オペラ流メロハーとも呼べるような曲。儚く狂おしいほど綺麗な歌が苑さんの声質にバッチリハマっているし、後半からエモーショナルなギターソロも素晴らしいです。

 

不穏で緊迫感あるイントロを持ったバラードM5「残された世界」、短いインストのM6「黒い海」という中盤二曲の存在で、しばし興奮を抑えてメロディーへ浸らせる。そこからシングル曲M7へシームレスに繋がって、弾けたように疾走する様もたまらない。

 

クワイアとブラストビートで幕を開け、徹底的に悲しみを演出した歌メロが光る、優介さん作曲のM8「悲しみは僕への罰」、そこから少し陽のムードを取り戻し、煌めくサウンドに心奪われるM9「流星の雨」、圧巻の完成度を誇る3拍子クサメロスピのM10と、クライマックスを彩っていく。

 

そしてラストに控えるM11「真実を知っていく物語」、これがまたアルバムを締めくくるに相応しい劇的なシンフォニックメタル。

 

従来のアルバムにはモダンなJ-ROCK風味を押し出したり、ノーマルなヴィジュアルロックっぽい曲もふんだんに取り入れたりと、必ずしもメタル然とはしていない楽曲も多かった印象でした。強いていうなら、PANTHEONシリーズは割とメロスピ的疾走感でまとめられていた感じでしょうか。

 

翻って本作においては、新体制になって気合いが入ったのか、「美しい歌メロを主軸としたメロディックメタル」という路線で統一感があります。それをどう評価するかは人それぞれでしょうが、僕としては好きな路線で焦点を絞ってくれているという感じで大変好印象です。

 

各楽曲はどれもこれも完成度が高く、さらに緩急をうまくつけたアルバムの構成もうまく、さらにさらに最初と最後にアルバムを代表するキラーチューンが収められていることで、聴き始めと聴き終わりの印象がグンと良くなると、全方位隙がない。

 

断言します。15年のバンド活動において本作は彼らの最高傑作です。いや、過去作全て聴いてきた訳ではないので、そんなおこがましいことは言えないんですが、それでもこう言いたくなってしまうんです。それほどの傑作です。

 

ちなみに本作は2枚組であり、2枚目のディスクは全曲のインストバージョン。各楽器の音がしっかり聴き取れる音源として良いのですが、あまりインストに興味を惹かれない者としては、1枚にして3000円台にしてほしかったというのが本音ではあるかも(笑)

 

 

個人的に本作は

"過去最高峰のまとまりの良さと、各曲のクオリティーの高さを実現してみせたバンド史上屈指の名盤"

という感じです。

 


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