ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

明日の叙景 『アイランド』

 

「J-POP?それともブラックメタル?」

本作の帯に記載されている文句です。

 

「これは普通のメタルじゃないんだろうな」

ジャケットと合わせて、すぐにそう思わせてくれました。

 

2014年に結成された日本のポストブラックメタルバンド・明日の叙景の2ndフルアルバム。僕は過去作は未聴で、彼らの音源はこれが初。

 

というかまず、ポストブラックメタルというジャンル自体に馴染みが全然無く、唯一聴いたことがあるのはDEAFHEAVENくらいのもの(それもアルバム1枚しっかり聴いた訳ではなく、数曲つまみ食い感覚で聴いたくらい) この手の音はほぼ無知と言っていいです。

 

そんな僕がなぜ本作に手を伸ばしたかと言うと、やはりこの異質さ。アニメのサウンドトラックにありそうなジャケットに、上記したいかにも中身が気になる文句。これが堂々とディスクユニオンのメタルコーナーに鎮座してたら、そりゃあ「これは何だ?」ってなりますよ。あと先日のDownload Japanの会場にも、このジャケットをあしらえたTシャツ着てた人がいて、それも印象強かったな。

 

そんなわけで、このジャンルには全く予備知識のない僕は、「ポストブラックメタルとはこうあるべき!」みたいな先入観なしに、フラットに本作の音に触れることができたわけですが......中身も何だか異質というか、だいぶ個性的なサウンドだなと。

 

ブラックメタルというジャンルは、どうしてもサタニックで不気味、リスナーに恐怖感を与えるようなサウンドを想起してしまうのですが、本作においてはそういった要素は少ない(曲によって無いわけではない)

 

ポストブラックというジャンルを軸としながらも、メンバーのルーツとなっているJ-POP/ROCKの要素を多分に取り込み、ブラックメタルというジャンルからは想像もつかないほど明朗なメロディーが根付いています。

 

金切り声で絶叫するヴォーカルはブラックメタル的ながら、衝動性と突進力、そして耳に馴染みやすい旋律を纏って疾走する様は、どちらかというとメタルというよりは激情ハードコア系統に近い。さらに言うなれば凛として時雨に代表される、いわゆる「残響系」と呼ばれるようなサウンドに通じるものもある。「夏」をテーマとした、明るくもどこか儚げな雰囲気とかがそんな感じ。

(凛として時雨って残響レコード所属のバンドではないですけど、何となく残響系の代表格ってイメージありますよね。ありません?)

 

Spotifyのプレイリストに、本作の楽曲を制作する上で影響を受けた曲を一挙にまとめていました。それを見るとDEAFHEAVEN、CRADLE OF FILTH、At The Gatesといったエクストリームメタル勢に加えて、9mm Parabellum Bullet凛として時雨THE BACK HORNなど、J-ROCK界隈で人気を集めているバンド、MUCCDIR EN GREYというV系界隈のバンド、さらにはLUNA SEAにL'Arc〜en〜Cielといった大物まで。

 

 

そして激情ポストハードコアバンド・envyの名も上がっていて納得。というのも、僕が本作を聴いてまず浮かんできたのがenvyの名前だったからです。激情ハードコアに通じる音作りといい、シャウトスタイルながらハッキリと日本語であることがわかるヴォーカルといい、語りの多さといい、かなり共通するものを感じたので。

 

高速のトレモロリフから繋がるギターのフレーズが、普通にJ-ROCKに使われていてもおかしくないほどキャッチーなM2「キメラ」、ダンサブルという言葉すらよぎるリズムに、あまりに爽やかでちょっぴり切ない煌めきを秘めたクリーンギター、そしてポップなメロディーが舞うM5「歌姫とそこにあれ」なんかは、本当にブラックメタルの一種なのかと疑ってしまうほど。ブラックメタルなのに希望がありすぎる。

 

しかしそんな楽曲でもヴォーカルだけはしっかり高音主体の金切り声であり、高速なビートとアグレッシヴなリフの存在感により、ポストブラックメタルという芯はブレずにある......と思う。

 

後半になると、猛然と疾走するドラムに寒々しい邪悪なリフが絡んでいくM7「忘却過ぎし」、よりヒリヒリとした緊張感をリフに宿したM8「甘き渦の微笑」という、ダークな楽曲が立て続いていく。いくらJ-POPルーツを出そうとも、やはりそこはブラックメタルバンドなのだなと思わせてくれます。

 

そしてラストを飾るM11「遠雷と君」は個人的に一番好きな曲。ブラストビートで爆走しまくる中、非常にキャッチーなリードギターが大胆に導入され、アルバムの幕切れをドラマチックに彩ってくれる。後半のクリーンギターによって演出される静寂から、語りを挟んでラスサビへと流れ込む展開が劇的で美しい。

 

楽曲のスタイルから、歌詞、ジャケット、さらにはバンド名に至るまでだいぶ個性的な本作。ポストブラックメタルというジャンルに造詣がなく、かつメロディアスなメタルを好む僕としてはなかなか気に入りました。本作を作る上でインスピレーションを受けたというバンドも好きなバンド多いですし。

 

しかし、本当にDEAFHEAVENをはじめとする、ポストブラック好きの人にはどう映るんでしょうね。「こちとらメタルが聴きたいんだよ。J-POPの要素とかいらねえよ」とか思われるのでしょうか。

 

明るい曲はかなり明るいし、語りが多いのもあって、結構好き嫌いは分かれやすいかもしれません。僕としてはその明るいフィーリングのおかげで、聴きやすくなってありがたいんですけどね。

 

 

個人的に本作は

"ポストブラックメタルサウンドに、激情ハードコア、さらには爽やかJ-POP/J-ROCK的メロディアスさまで取り入れた個性的な一枚"

という感じです。

 


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