ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

THE BACK HORN 『アントロギア』

  • バンドの軸がブレない範囲で曲の幅は豊か
  • アッパーなロックチューンの聴き応えがポイント
  • なんだかんだバンドの王道的楽曲が一番ヨシ!

 

「KYO-MEI」をスローガンに掲げ、男らしい熱さと悲哀、歌謡的なメロディーにロックらしい荒々しい衝動を加えた楽曲で、国内の音楽シーンを突き進むTHE BACK HORNの、前作『カルペ・ディエム』以来3年ぶりとなる最新作。

 

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前作発表後のバンドの活動はとても平坦なものではなく、ヴォーカル山田さんの喉のポリープ発症により慣行中のツアーは中断。その後の振替公演は、皆さんご存知コロナ禍により中止。

 

しかし、そんな中でも楽曲制作を止めずにシングルや配信限定曲を発表しつつ、今年新作が届けられることに。本作に収録された楽曲もわずかながら聴けたROCK IN JAPANでは、かなりヴォーカルの調子が心配されたものでした...。また喉痛めてなきゃいいけど。

 

このバンドの音楽というのは、暗い曲はエグいほどにドロドロしていたり、明るい曲はかなりポップな光に満ちていたりと幅はあるものの、基本線は全くブレたことがないと思っていて。縦横無尽に動きまくるテクニカルなベースに、粗めの歪み方で曲に勢いを与えるギター、そこに疾走するドラムと熱量重視のヴォーカルが載る。そんなスタイル。

 

本作においてもこの基本的なスタンスは貫かれており、従来作を好んできた人であれば裏切られることはないでしょう。このバンドももう結構なキャリアを誇りますが、未だに曲作りの芯がブレず、シーンの第一線に立ち続けている。それだけで評価に値するはず。

 

彼ららしい、怪しくもキャッチーさを滲ませるメロディーを主軸としたサウンドが展開されますが、曲調の幅は結構広めで色々な要素を感じさせる。オープニングのM1「ユートピア」は、ダンスナンバーかのようなノリの良さこそあるも、メロディーは薄暗く不気味。どこか呪術的ムードも感じさせるような。

 

M3「深海魚」は暗めの昭和歌謡かと思うような濃ゆいメロディーが支配的で、M4「戯言」はディナーショーとかでかかっていそうな、艶やかでジャジーなムードを演じつつ、サビではシンプルに疾走する。カチャカチャいうギターリフに、気だるげなヴォーカルと爆発力あるサビの落差が面白いM8「疾風怒濤」なども特徴的ですね。

 

色々な音楽的要素を絡ませようという創意工夫は感じられますが、根底にあるのはバクホンらしい、土臭い男の哀愁を感じさせる暗めのキャッチーさ。アッパーに展開されるロックチューンは聴き応え充分です。

 

ミディアムバラードの分量もそこそこ多めで、中盤から後半にかけてはテンポが落ちる瞬間も多い。本作のバラードの出来は、過去作収録の楽曲に比べるとややメロディーの質は落ちる印象か。せめて前作収録の「I believe」「果てなき冒険者」くらいには綺麗な歌メロが欲しかった。

 

個人的に何気に好きなのがM6「ネバーエンディングストーリー」。まるでカントリーかというくらいに牧歌的な雰囲気で、ギターもクリーントーンオンリー。激しさ皆無の楽曲ですが、この軽やかなポップさがなかなか沁みるんですよ。以前のブログ記事で、激しいサウンドに疲れた時には、落ち着いたポップな楽曲をよく聴くと書きましたが、僕は結構こういう曲もアリなんです。

 

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ただまあ一番好きな曲となると、やっぱり王道のバクホン節が効いたM2「ヒガンバナ」でしょうか。静のAメロから一気に動のサビへと爆発する様が気持ち良く、熱い歌メロもバンドの旨味が濃縮されていて実にクール。やっぱりこのバンドはこうでなきゃって感じ。

 

同じようにM10「希望を鳴らせ」もシンガロングが実に彼ららしい。Aメロの淡々としつつ滲み出る熱さ、胸焦がす哀愁を奏でるギターフレーズも良い!

 

やや曲の幅が広めにとられており、曲によって色々な表情を見せてくれる作風ですが、根底にあるのは程よく歌謡的で熱いメロディーを武器とした、荒々しいロックサウンド。歌重視のミドル曲の面白みはもう少し欲しかったけれど、バンドらしさは存分に堪能できる、手堅い一作。

 

 

個人的に本作は

"バクホンらしいキラーチューンから、怪しさと個性が強めの曲まで、バリエーションに富んだ楽曲群。根底にあるバンドのキャッチーなセンスはブレない"

という感じです。

 


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