- モダンさやハードコアテイストも味方にした"Nu-Deathmetal"
- 聴きやすくも残虐非道なデスメタルらしさはバッチリ残存
- ブルータルとキャッチーは両立できる
デスメタルの本場・アメリカでのバンド経験を持つ実力派ヴォーカルKiyoさんを中心に結成され、来年にはインドネシアのメタルフェス、さらにはアジアツアーも決まっている国産デスメタルバンドの最右翼WORLD END MAN。
彼らの前作から4年ぶりとなる最新2ndフルアルバム。まず最初に言っておきますが、かなりの強力作ですよこれは。
前作『USE MY KNIFE』は、30分弱の短い時間内にヘヴィで残虐、それなのにリフ重視のメタルとしてのカッコ良さも担保された充実作でした。そのため、メロディック要素のないデスメタルはほとんど聴いていない僕ですが、本作への期待値は高かった。
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そして本作は、そんなリリース前の期待にしっかりと応えてくれた力作だと言えます。前作で提示された「容赦無しにブルータル、それなのに不思議と聴きやすい」という奇跡のバランスを完璧に体現している。
ヴォーカル含め曲のスタイルは完璧にデスメタル。それも強烈に残虐でグロテスクなやつ。人外レベルのフルブラスト系爆走パートはあまりなく、ヘヴィなリズム落ちと疾走メタルの範疇に収まる程度のスピード感が主。このあたりの音作りのおかげで、昨今のエクストリームメタルにありがちな無機質さは感じられない。生々しい人間味を帯びている印象。
そんなガチのデスメタルに、本作はグルーヴィという形容が似合いそうなヘヴィリフ、それもHATEBREEDあたりのニュースクールハードコア(死語?)にも通じるような、ガッチリとタイトにまとまったリフが大幅導入されているのがクール。M3「Breathless」や、M9「Whore Mutilation」あたりとかが特にわかりやすいですね。
これのおかげで必要以上にドロドログチャグチャせず、純粋なヘヴィミュージックとしての魅力が浮き彫りになっている。落とすところはとことんヘヴィに、速いところとことんファストに刻まれる、切れ味鋭い重音リフの聴きごたえが抜群です。
自身の音楽性を"Nu-Deathmetal"と表しているようで、「なるほど!」と膝を打ちましたね。このバッキングのサウンドのヘヴィでクリア、ズンズンとリズミカルに響きゆく様は、確かにどこかニューメタルにも通じるような雰囲気があります。
このモダンさやハードコアテイストを含んだバンドサウンドのおかげで、アンダーグラウドなムードが必要以上に深くならず(もちろんそれが無くなることはない)、ある種「キャッチー」と呼びたくなる聴きやすさを演出することに成功しています。残虐なデスメタルらしさは損なわれていないというのに。本当にこのバンドの作曲面のセンスはすごい。もっとメタルシーンで評価されていい。
これだけサウンドの完成度が高くなると、本当にアングラなデスメタルを愛好する人たちからは「ケッ、デスメタルのクセにリフが綺麗すぎるんだよ」とか文句言われたりしないだろうか(笑) そんな輩をねじ伏せるだけのパワーがあるとは思いますけどね。
ピックスクラッチから爆速で展開し、容赦なき猪突猛進っぷりを聴かせつつも、ガッツリとリズムを落としたヘヴィパートもきちんと用意されたM2「Dance Under The Noose」を筆頭に、思わず頭を振りたくなる中毒性とノリの良さを秘めたリフが魅力のM4「Never Learn」、強烈な重低音を効かせたザクザクのリフがメチャクチャに気持ちよく、ハードコア的シンガロングも誘発できるヴォーカルパートも備えたM7「Unnecessaries」など、どの楽曲もWORLD END MANらしい魅力に満ちている。
メロディックデスメタル以外のデスメタルはほとんど聴かないデスメタルビギナーな僕ですが、そんな僕でも本作に込められた音のクールさはわかる。ベーシストのHiroshiさんはTwitterにて「ブルータルとキャッチーは両立出来る!と恋と仕事の両立ばりの難題こなしてしまいました」と述べていましたが、マジでその言葉通り、そのまんまな音でした。
デスメタルというジャンルに苦手意識を持っている人たち、ぜひ本作を聴いてみてほしいです。「こんな音あるんだ!?」と、きっと衝撃走りますよ。
個人的に本作は
"持ち前の楽曲作りのセンスがさらに進化した、ブルータル&グルーヴィー&キャッチーなデスメタル。超エグいのに超聴きやすい奇跡のバランス"
という感じです。