- 従来から大きく変わらない安定のエレクトロ・ヘヴィサウンド
- ストレートな歌ものとしての魅力がわかりやすい
- 全4曲各種にうまく個性を散りばめている
昨年はじめには日本武道館公演を成功させた、スクリーモ/ポストハードコアダンスユニット・PassCodeの4曲入り最新EP。スクリーマーとして、元LADYBABYの有馬えみりさんが加入してから、音源としては2作目になります。
すべて新曲とはいえわずか4曲入りの音源なので、当初は買わずにアルバム待てばいいや、と思ってたのですが、リリース前に公開されたM2「SIREN」がかなり良かったのでチェックしてみた次第です。
収録された曲はすべてPassCodeらしさ溢れる、ダンスミュージック的なシンセに、ヘヴィ寄りのアグレッシヴなサウンド、ところどころ加工されたヴォーカルが織りなす、キャッチーなラウド路線。新境地みたいな印象はありませんが安定感は抜群。
ただ、個人的に嬉しかった点としては、以前のフルアルバム『STRIVE』では、忙しないテンポチェンジを主としたトリッキーな楽曲の印象が強かったのが、本作においてはストレートなラウドロック風味が強くなっているところ。インタビューとかでも「歌のイメージが強い楽曲になっている」と述べられていて、この方向性は僕好みな感じです。
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新加入の有馬さんが、以前のシングルではシャウトのみだったのが、今回はノーマルヴォイスによる歌唱パートが存在しているのも、そんな歌重視のスタイルのイメージを強めているところでしょうか。ライヴ中の勇しすぎるパフォーマンスから一転して、どこか素朴な印象もあるような声が良い感じです。
オープニングからトランス色濃いシンセが舞いまくる中、何気に主張の強いベースが傾れ込んでいくM1「Live your truth」は王道とも言える曲。サビはもう少しダイナミックに跳ねてほしい気がするも、PassCodeらしいキャッチーなセンスがよく出ています。
M3「NOTHING SEEKER」は、ヴォーカルとバンドサウンド双方において、チャラめなダンスミュージックの要素を強く押し出しつつ、後半から別の曲になったかのようにキャッチーなアップテンポナンバーへと姿を変える。本作で一番やりたいことを全部盛り込んでやった感がありますね。
M4「Clouds Across The Moon」はシンセが終始バリバリ活躍するも、歌の部分は本作でも特に哀愁寄りで、バキバキな印象は控えめ(それがいい)。途中のシャウトと絡んで疾走するリードギターソロが大きな聴きどころになっています。
特に気に入ったのが前述したリードトラックのM2で、バッキングのサウンドの派手さ以上に、歌メロの良さに比重が置かれた1曲。流麗なピアノと絡む歌の入りから、大きなスケールで展開されるサビが非常に魅力的。「Ray」とか「ONE STEP BEYOND」とか聴いた時も思ったけど、やっぱりこの手のタイプが一番好きだな。
どの曲も従来の作品で発表されてきた個性を踏襲しつつ、王道ラウド、メロディアスな歌もの、チャラいダンスミュージック、哀愁寄りのキャッチーな曲と、わずか4曲の中で上手い具合に個性を散らしているのがポイントですね。全部合わせても15分程度のボリュームなのもあり、サクッとBGM感覚で聴けるところも嬉しい。
前シングルの「Freely」「FLAVOR OF BLUE」の2曲も良かったので、とりあえず現在の布陣でも満足いく楽曲が聴けることは十分に証明できたと思います。次なるフルアルバムも期待できそう。
個人的に本作は
"ヘヴィかつエレクトロな従来の王道スタイルをおいて貫きつつ、ストレートな歌の比重を高めてキャッチーも完備した"
という感じです。