ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ALL THAT REMAINS 『The Fall Of Ideals』

  • イ゙ィヤ゙ァァァァーーーーッ!!!
  • 歌唱力・表現力抜群のヴォーカルが引っ張る
  • ギター、ヴォーカル共に息づく強烈な哀愁が武器

 

先日のUNEARTHに続いて、もういっちょメロディックメタルコアというジャンルを代表する名盤を。

 

こちらもUNEARTH同様マサチューセッツ州出身のメタルコアバンド・ALL THAT REMAINSが2006年に発表した3rdフルアルバム。こういう優れた出来のアルバムが、集中してリリースされていたということで、いかに00年代中頃というのはメタルコアが盛り上がっていたのかが窺い知れますね。

 

内容としては、特に気を衒った要素が少ない、メロディックメタルコアの王道を行くもの。メタルコアというジャンルそのものに大きなインスピレーションを与えた、北欧のメロディックデスメタルの質感を持ったサウンドを踏襲し、そこへハードコア由来のリズム落ちモッシュパート、キレた勢いに満ちたアグレッションをガッツリ加えている。

 

ただリズム落ちによるハードコアモッシュを誘発するようなヘヴィパートもあることはありますが、音質自体はそこまでガッツリ重心を下げているわけではなく、下半身にズシンと響くような重低音は控えめ。どちらかというとメロウさ、切れ味の鋭さ、速いテンポによるアグレッション重視でしょう。

 

メロデス的ギターリフ・ソロによって、メロディックな側面を演出するのももちろんありますが、このアルバムはさらに歌メロの充実度が非常に高い!多くの曲にクリーンヴォイスの歌唱を取り入れていて、そのメロディーが変にポップになりすぎるようなことがなく、強烈な哀愁と美しさを携えたフレーズばかり。エクストリームなサウンドにクリーンはいらないと考えている人だって、このメロディーの豊かさを聴けば黙るはず。

 

そんな素晴らしいセンスが息づくメロディーを歌い上げる、フィリップ・ラボンテによるヴォーカル。これがまた恐ろしくレベルが高い。高音のヒステリックなシャウトから、低音部を効かせた破壊力あるグロウル、そしてサビにあたるクリーンヴォイスは単純に歌唱力そのものが優れているし、どんな歌声もハイクオリティー

 

シャウトは一級品でもクリーンがヘロヘロ...なんて残念なことには一切陥っていない。狂気の中に光刺すような美しいメロディーを、表現力たっぷりの見事なヴォーカルで、エモーショナルに歌い上げる様を存分に味わえます。M2「Not Alone」や、M5「Whispers (I Hear You)」は、このヴォーカルだからこそ、元から美しかったメロディーがより煌めく!

 

そうやってメロディー重視の姿勢を見せつつ、中にはM6「The Weak Willed」のような、下水道的低音グロウルに、デス/ブラックメタルに通じる高速リフとブラストビートを持つ曲、M8「Become The Catalyst」のような、より正統的なデスメタル要素を強めた(メタルコア的リズミカルなリフとクリーンヴォイスもちゃんとある)凶悪成分マシマシの曲も入れ込んでいて隙が無い。

 

超有名映画『SAW3』のテーマにもなった(『SAW』シリーズ、何年も前に1回だけ最初のやつを観たっきりだな...)、アルバムのオープニングを飾るM1「This Calling」は、そんな本作の強みがすべて活きた、看板となるキラーチューン。初っ端の"イ゙ィヤ゙ァァァァーーーーッ!!!"のシャウトは、ALL THAT REMAINSというバンドを(ヴォーカルのフィリップをと言うべきか)象徴する叫びですね。こんな声出してみてぇ。

 

さらにそんな名曲M1を超えんばかりの超名曲こそがM7「Six」です!ド頭で聴ける叙情性満載の高速リフとブラストの応酬、そこへ重なるブチギレヴォーカル、クリーンによるコーラスを効果的に入れつつ、中盤にはこれ以上ないほど美しいクリーンギターによる泣きの旋律が。狂乱から一瞬にして静けさへと至る、この静と動のコントラストが絶大なインパクトを放っています。

 

ほとんどの曲でクリーンを導入するという、エクストリームメタルとしてはともすれば軟弱に映りかねない方法論。それを叙情センスと歌唱力の高さで、完全に「アリ」にしてしまった強力作です。

 

しかし皆さんご存知の通り、本作で作曲にも携わっており、素晴らしいリードギタープレイを聴かせてくれる、オリジナルメンバーのオリー・ハーバートは、2018年に逝去しています。本作のギターワークを聴いて、かえすがえす残念なものだと思いますね...

 

 

個人的に本作は

"キレまくりのヴォーカルが扇動するアグレッション満載のメタルコアリードギターにも歌メロにも、哀愁叙情センスが遺憾無く発揮されている"

という感じです。

 


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