ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ARCH ENEMY 『Wages Of Sin』

  • 衝撃的メンバーチェンジにより生まれ変わった姿
  • 良くも悪くも洗練されて、デスメタルらしさは減退
  • 超名曲のオープニング含め、前半の破壊力が至高

 

先日のライヴが素晴らしかったから、その流れでこのアルバムについて書いてみます。ここ数日こればっか聴いてたので。

 

2001年に発表された、ARCH ENEMYの4thフルアルバム。このバンドにとって最大の転機となった作品といっても過言ではないでしょう。

 

前作『Burning Bridges』までフロントマンを担当していたヨハン・リーヴァが、実力不足を理由に解雇され(友達からこういう理由で解雇を言い渡されるってちょっとかわいそう)、後任としてアンジェラ・ゴソウが加入した、新生ARCH ENEMYの幕開けとなったアルバムです。

 

今でこそ女性がデスヴォイスというのは珍しくもなんともなくなりましたが(なんせ日本のアイドルがグロウルするような時代ですし)、2001年当時はほぼ前例がなかったそうで、このメンバーチェンジは相当な衝撃をシーンに与えたのだとか。ルックスにも華があり、放たれるシャウトは超凶悪と、よくもまあこんな凄い人材がいたものです。

 

前任者のヨハンよりも無機質で破壊的なアンジェラのヴォーカルを得たことに合わせ、さらにサウンド面においても大きな変化が生まれているのが特徴。メタルを聴いてたら嫌でもその名を目にする、名プロデューサーのアンディ・スニープがミックスを担当したその音は、前作までのアンダーグラウンドなムードを一新させ、非常にシャープでモダンに仕上がっています。

 

デスメタル特有のドロドロした禍々しさは、完全に払拭されたとまでは言わないものの、ほとんど感じられない。洗練されたエクストリームメタルとしての姿が浮き彫りになり、前3作とは比較にならないほどサウンドのクオリティーは上がっている。

 

ただ、その減退されたアンダーグラウンド臭や禍々しさという要素は、デスメタルというジャンルであれば魅力にもなるというのが事実。故にヨハン在籍時の人気が諸外国よりも高い日本では、「4th以降のARCH ENEMYはなんか違うんだよな...」という意見が出てしまう原因にもなっているようです。

 

僕はものにもよりますが、基本的には洗練されたメタルサウンドの方が好きなので、本作の音作りは何ら問題は無し。むしろヨハン期よりも本作以降のアルバムの方が思い入れが強いと言っても過言ではありません......が、前作までのデスメタルらしいデスメタルもまた魅力的であったことは間違いなく、この変化を苦々しく思う人の気持ちもちょっとわかるな。

 

そんな良くも悪くも洗練された本作、肝心の楽曲のクオリティーについてですが、これがまた非常に高い。どれもこれもモダンかつ鋭利に研ぎ澄まされたギターリフが主張しつつ、ここぞとばかりにマイケル・アモットお得意のメロウに泣きまくるギターソロがブッ込まれる。これで興奮しないわけがないでしょう。

 

静かなピアノのイントロから突如として切れ味バツグンのリフが轟き、メロウさと凶暴さを併せ持つフレーズで疾走するM1「Enemy Within」は、バンド史上屈指の名曲。後半になだれ込んでくるギターソロがまたスリルに満ちてて、聴いてるだけでゾクゾクしてきます。これほど名作であることを確信させてくれるオープニングもないでしょう。

 

疾走感を少し抑えつつ、強烈な哀愁を帯びたメロディックギターが支配的なM2「Burning Angel」に、高速リフとツーバス連打の応酬、一度聴いたら耳から離れないほどキャッチーなリードで魅せるM4「Ravenous」と、前半のキラーチューンの充実度がとにかく素晴らしい。

 

中盤から後半にかけては、さすがにこれほどのキラーチューンこそないものの、楽曲の充実度は高い水準で安定しています。M2と同様にメロデスらしい焦燥感あふれるリフと、メロディアスなソロを存分に聴かせるM7「Web Of Lies」、この上なく物哀しいインストのM11「Snow Bound」からの、サビにおけるギターがこの上なく叙情的に泣きまくるM12「Shadow And Dust」が特に気に入ってます。

 

本作で与えた衝撃は、これまで日本主導だったバンドの人気がワールドワイドに広がっていくきっかけになり、これを機にマニアックな存在から脱却していくことになるのですが、それも納得できる強力盤ですね。バンドが生まれ変わったことを証明するに相応しい出来です。

 

ちなみに現在ARCH ENEMYでヴォーカルをとっているアリッサは、本作が初めて聴いたエクストリームメタル作品であり、自身のヴォーカルスタイルに大きな影響を与えたとインタビューで語っています。本作でメタルヴォーカルに目覚めた人物が、時を経てそのバンドのフロントに立つとは、何とも運命的で素敵なお話ですね。

 

 

個人的に本作は

"デスメタルらしいアンダーグラウンドなムードをほぼ払拭し、洗練されたメロディック・エクストリームメタルへと生まれ変わった、バンド史上最重要作"

という感じです。

 


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