- ストレートなロックンロールの魅力を濃縮
- 最初のキラーチューンで出だしの勢いヨシ
- ハイライトとして機能したタイトルトラック
ジャパニーズロックンロール/ガレージロックバンド・a flood of circleの、今年発表された最新フルアルバム。
このバンドについては、THE PINBALLSやSuspended 4thあたりと並んで、日本のロックンロールを引っ張っていってほしい存在として、ちょいちょい注目はしていました。
そして前述したTHE PINBALLSは活動休止、Suspended 4thはバンドの個性に大きく貢献していたドラムのデニスさんが脱退(もう後任は加入済みのようですが)と、なかなか芳しくない状況に陥ってしまっている。もうこの手のブルースロック的というか、硬派なロックンロールらしいロックンロールについては、このバンドに大きな期待を寄せざるをえません(他はビレッジズマンストアとか?)
ただ、この手のバンドサウンドって、今の日本の音楽シーンでは致命的に売れないんですよねぇ...。まったくもってイマドキな空気感がないですからね(それがいいんですけど)
こんな風にちょっともどかしい思いを抱えてしまうものですが、本作に収録された楽曲は、一部のロックファンの耳にのみにしか届かないのは非常にもったいないと言えるもの。少なくとも「日本のロックが好き」と言える感性を持っている人ならば、多くの人がカッコいいと無条件で思える、そんな普遍的な魅力が詰まっています。
演奏やアレンジとか、何かものすごいことをやっているわけではなく、割とノーマルでブルージーなロックンロールなのですが、このバンドの場合はそれが似合ってますね。過去のアルバムから方向性はまったく変わらず、小難しいことを考えさせない、このストレートさがいいんです。
聴けば一発で「カッコいいロック」であることがわかる、非常にキャッチーな歌メロと、痛快なまでのヴォーカルパフォーマンスが織りなすM1「月夜の道を俺が行く」、M2「バードヘッドブルース」の2曲がまず強烈。この出だしのテンションの弾けっぷりにより、アルバムの掴みは最高。こういうわかりやすいキラーチューンがしっかり頭に用意されているのが頼もしい。
彼らお得意の毒々しい不穏なムードを漂わせたM4「如何様師のバラード」、情感たっぷりの弾き語りにより、激しさは薄くとも強烈なエモーショナルさを発揮するM5「本気で生きているのなら」、キャッチーさと怪しい毒気、そして爆発せんばかりのテンションの高まりを併せ持つパーティーチューンM9「Party Monster Bop」など、個性とバンドらしさを両立した楽曲が散りばめられていて飽きさせない。
特に気に入ったのは前述したオープニングのM1,M2の2曲と、タイトルトラックであるM7「花降る空に不滅の歌を」ですね。三拍子の歌の入りから穏やかでピースフルなムードを振り撒きつつ疾走、大きなスケール感とキャッチーさを演出するサビが魅力で、タイトルトラックとしてふさわしいハイライトに仕上がった1曲です。
総じてブルージーかつ、甘さの無いロックンロールとして、良質な楽曲で固められた1枚。ジャパニーズロックンロールとはこういうものだ!と主張するかのようで、実に頼もしい。
こういうサウンドがもっとブレイクできるようになると嬉しいんですけどね〜。バンド自体はKing Gnuとかヒゲダンとか緑黄色社会とか、ここ最近になっても人気を集める存在がチラホラ出てきてるし。バンドをテーマにしたアニメが最近流行ったらしいし。
まだまだ注目される下地はあると思うんだけど、やはり最近のリスナーには硬派すぎるのか。かなりキャッチーだとは思うのですが。
個人的に本作は
"ジャパニーズロックンロールらしさ、過去作と変わらぬ魅力を一貫して持つ作品。ロックらしいキャッチーさ、毒気、弾けたテンション全部盛り"
という感じです。