- 従来通りのメタリック&メロディックな音作り
- ブレのない哀愁寄りのキャッチーさが主軸
- 安定している分、ド派手な疾走キラーは控えめ
30年を超えるキャリアを誇る、パンクの名門Fat Wreck Chordsの代表格・STRUNG OUTの最新作。アコースティックアルバムのリリースを間に挟んではいるものの、フルアルバムとしては、前作『Songs Of Armor And Devotion』より5年ぶり。
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すでに音楽性が確立されているバンドなので、本作においてもSTRUNG OUTというバンド名に期待される音をしっかりと踏襲した、安定感ある1枚に仕上がっています。
ヘヴィではないが薄くもない、メタリックな音色感を施したギターが先導していく、ハイテンポなメロディックハードコア。ときにツインリードやギターソロを設けることで、ノーマルなメロコアでは醸し出せない、メタルサウンドによる痛快さをしっかりと表現しています。
初期のような爆速っぷりは控えめなのは近作同様で、メロディー面に関して言えば、ポップなフィーリングはあまりなく全体的にマイナーキーの哀愁寄りかなぁ。前々作の「No Apologies」や、前作の「Rabels And Saints」のような爽やか明朗メロディーが聴ける機会は無し。
個人的に哀愁路線のメロコアが好きなので、そのこと自体は悪くないですが、「No Apologies」のような青く切なく煌めくメロディアスな曲が1曲くらいほしかった気持ちもありますね。
オープニングから期待を裏切らない、アップテンポに駆け抜けるM1「Future Ghosts」に、フックあるサビメロが特徴のM3「New Gods」、よりメタリックな攻撃性を増したリフがザクザクと響くM6「Cages」と、従来のSTRUNG OUT節を踏襲した、キレ味鋭いメロディック&メタリックパンクが次々飛び出す。
こういった点において、期待を裏切るようなことはまったくありませんが、『Transmisson.Alpha.Delta』の冒頭3曲のような、速攻でガシッと心を鷲掴みにしてくるような、わっかりやすいキラーチューンは無いかな。方向性がほぼ一定な作風であるために、少々地味な印象は与えてしまうかもしれません。
M5「Life You Bleed」やM7「Empire Down」のような、速度を落とした楽曲で起伏を生み出しつつも、全体的にはSTRUNG OUTらしい楽曲ばかりで、横軸の広がりはほとんど無い印象。まあこのバンドに幅広い音楽性を期待しているわけじゃないから、これでいいっちゃいいんですけど。
気に入ったのは後半に控えるM8「Resistance」とM11「Dystopian Party Bus」の2曲ですね。前者はロックンロール風味を活かしたようなミドルテンポ、後者は本作の中でも数少ないスピード感増し増しの疾走曲。タイプは異なれど、どちらも歌メロのキャッチーさが強く、リフもカッコいいし、テクニカルなギターソロの存在感が大きいのがイイ!
アルバムのラストとなるM12「Plastic Skeletons」も、キラーチューンと呼べるほどの攻撃性はないものの、どこか切なさを秘めたメロウさに、牧歌的な要素を込めたギターソロと、それに続く綺麗なコーラスが胸を打つ良曲。終わり方はちょっと唐突だけど。
派手な印象や、キラーチューンの即効性は従来作と比べて控えめではあるものの、メタリックさとキャッチーさを共存させた、メロディックなパンクの魅力は変わらず存在する良作です。彼らのファンであれば納得の行く出来に仕上がっています。良くも悪くも期待を裏切らない。
個人的に本作は
"メタリックなギターを武器としたSTRUNG OUTらしいパンクチューンの連続。音楽性の幅広さ、キラーチューンの威力は少々控えめだが安定感はさすが"
という感じです。