- 現在の姿からかけ離れたエクストリームメタル
- ヴォーカル・演奏ともに衝動重視で未成熟
- 完成されたデスコアにはない生々しいエナジー
昨年のNEX_FEST、および今年のSUMMER SONICの素晴らしい名演によって、僕の心に大きなインパクトを残したBRING ME THE HORIZON。ここ最近は毎日のように彼らのアルバムを聴いています。
せっかく時間かけてアルバム聴いているわけですからね。過去作のアルバム感想をブログに残しておこうと思いまして。今回は彼らの記念すべき1stフルアルバムを取り上げます。
2006年に発表された本作、音楽性はデスコアと呼ばれるもので、ひたすらに野蛮で凶悪、クリーンヴォーカルはほぼ皆無でかなりエクストリームな作風です。今になって聴き返すと、ホント同じバンドとは思えんな...。人に歴史あり。
ギャウギャウと噛みつくようなシャウトと、低音グロウルを使い分けるヴォーカルワークに、ザラっとした歪みのギターがザクザクとリフを刻む。ブラストビートで駆け抜けた後に、コアな音楽らしいブレイクダウンも設けたサウンドは、とにかくキッズがモッシュすることに焦点を絞っているかのよう。
リリース当時はまだメンバーは20歳くらいの若さということもあり、全体的にはB級テイストが濃く、ヴォーカルも演奏も丁寧さに欠け、未整理な印象が強い出来です。時折ツインギターによる絡みや、メロウな旋律を奏でるギターソロなど、ただエクストリームなだけではない要素も見いだせるのですが、技術的にまだまだ粗雑な感じですね。音質もそこまで良くないし。
「詳しい音楽理論だとか、そんなの知るか!俺たちのやりたい事を全部ブチ込むんだ!」というエナジーが音を介して伝わってくるかのような、まさに初期衝動全開といった具合。
近年のデスコアバンドといえば、モダンな無機質さ、正確無比なテクニカルサウンド、人間を辞めてしまったレベルのグロウルといった印象が強いのですが、本作はそういった領域には至らず、若さ青さに任せて突っ走る、未熟ながらも生々しい人間味がある。
単純に音楽的なクオリティーという点では、近年のモダンなデスコアバンドの方が高いとは思いますが、個人的にはそういった非人間的なサウンドよりも、本作くらい生々しい質感が感じ取れる方が親しみやすいかもしれない。前述した粗雑さ、未整理な部分も、むしろ若手バンドらしいガムシャラさの演出に貢献していると言えるし、「血の通ったバンドサウンド」というイメージが付きやすくて、案外ギターリフとかもキャッチーだったりして聴きやすいから嫌いじゃないです。
とはいえ親しみやすいと言っても、それはあくまでデスコアというジャンルとしては、という話。基本的にメロディックなメタルを好む僕からすると、さすがに全編通してエクストリームすぎるというのが本音ですね…。真正デスコアキッズからすれば、近年のBRING ME THE HORIZONはお笑い草のようなものかもしれませんが、僕としては近作の方が肌に合うかな。
個人的に本作は
"未熟さも武器にした若さ溢れるデスコアサウンド。エクストリームながらにじみ出る人間味が案外聴きやすいかも"
という感じです。