- STRAIGHT UP RECORDSに戻ってきての10年ぶりフル
- 13分強の中に詰まった直球骨太ハードコア
- どうしようもないクズへの怒りを叩きつけるリリック
SAPPORO CITY HARDCOREを代表する存在、SLANGの8thフルアルバム。前作『Devastation In The Void』から10年ぶりとなります。
前作までは横山健さんとの縁により、PIZZA OF DEATH RECORDSからリリースしていましたが、本作から自身のレーベルであるSTRAIGHT UP RECORDSに戻ってきています。これはPIZZAとの契約が切れたのか、それともこの10年間でKLUB COUNTER ACTIONが新しく生まれ変わったため、もう一度自分たちのレーベルで制作しようと思ったのか。
まあ、リリース元がどうあれ、常にハードコアの生き様を貫き続けるKOさんのことですので、音楽性が変わるなんてことはあるはずもありません。ハードでファスト、かつヘヴィでゴツゴツした要素も持ち合わせていて、軽さはまったくないド硬派直球のハードコアパンク。
全9曲、13分ほどという極めて短い内容で、怒涛に押し寄せる骨太なハードコアに押されていたら、あっという間に聴き終えてしまいます。この潔さもハードコアらしさですね。
ギタリストがメタル出身のKIYOさんから、同じ札幌のハードコアバンドYUKIGUNIのKENTAさんに交代しているからか、以前より少しばかりメタリックな質感より、良くも悪くも荒々しいパンク的サウンドになっているかな...?と感じたかな。まあ、そこまで印象を大きく変えるようなものではないですが。
またKOさんの唱法も、若干ではありますが地声成分強めのシャウトになっていて、過去作ほど強く歪ませたような声質ではない気もする。とはいえ野太い男らしさと、がなったときの攻撃性は何ら落ちていません。
楽曲は必ずしも衝動一辺倒ではなく、M2「Stop Killing Children For Oil」の終盤にはPANTERAチックなグルーヴィーリフを叩きつけたり、M3「Live or Die」はモッシュするのにピッタリなアップテンポな展開を見せたり、速さだけで駆け抜けない所に聴き応えが生まれてます。
もちろん、メロディアスさだとかドラマチックさだとか、そういった音楽IQの高そうな(?)要素などはこれっぽっちも無く、ハードなサウンドと、噛みつくような咆哮、荒さ満載のシンガロングで構成されてる事には変わりませんけどね。以前の作品にあったアコギの小曲も姿を消しているし、ギターソロは一部ありますが、勢い重視に速弾きでまくし立てるようなものですし。
何より本作の魅力は、KOさんによって紡がれる強烈な歌詞 。過去作と比べて比喩的な表現を抑え、かなりストレートに反骨精神を打ち出したリリックは、戦争・人種差別・ファシズムなど、腐った現代への怒りが120%表出しています。この歌詞を目で追いながら、押し寄せる音塊に圧倒されるのが正しい聴き方でしょう。
曲タイトルからして「どうしようもないクズばかり」「Racism Must Die」「Dirty Rotten LDP」と、凄まじいことになっていますからね。右翼団体から文句言われそうなので(笑)歌詞の一節をブログに載せるようなことはしませんが、ぜひ本作に込められた痛烈な怒り、レベル・ミュージックとしての信念は、カウンターカルチャーであるロックのファンなら目を通してほしい。
僕自身ここまで極端な思想を持ってる訳ではないので、こういったハードコアなパンクスの考えが全部が全部正しいとはさすがに思いませんが、何年にもわたり信念を一切ブレずに持ち続け、音楽として表現し続ける彼らの姿勢は、間違いなくリスペクトの対象です。今月末にある選挙にはこれ聴きながら行こうかな。
個人的に本作は
"腐った現代への怒りがこれまで以上にストレートになった、無骨でハードなド硬派ハードコアパンク。13分の短さの中にSLANGらしい激音のみを詰め込んだ"
という感じです。