バンド名の字面はなんとなく見覚えがあるのですが、曲は全然聴いたことがなかった(つまり全然知らん)メタルコアバンドの最新作。本作で4枚目のフルアルバムになるようです。
なんでもこのバンド、昨年にギタリストのトビアス・ヤング以外のメンバーが全て入れ替わるという、大規模なメンバーチェンジが行われたらしい。
それだけならまだ「これから心機一転!生まれ変わったバンドの新章が始まるぜ!」みたいな感じになるのですけどね。なんとこのバンド、そんな矢先に解散することが発表されてしまい、本作がラストアルバムとなって、11月のライヴをもって活動を終えるというではありませんか。せっかくリスタートを切ったというのに。
そんなセンセーショナルな話題を振りまいたわけですから、僕としても気になってですね。最終作となった本作をチェックしてみた次第です。
内容はというと、非常にオーソドックスなメロディックメタルコアだなと。基本的にはヘヴィなリフを主体としたサウンドとシャウトで進み、時折メロディックなギターとクリーンヴォーカルでキャッチーさを演出する。派手なギターソロはなく、モダンになりすぎず、エクストリームにもなりすぎず。ノーマルなメタルコア路線を高いレベルでやり通している感じ。
タイトなまとまりを聴かせるバンドサウンドに、クリーン・シャウト両方とも充分な力量を持つヴォーカル、タルくならずにしっかりとキャッチーなフックを持ったメロディーと、メタルコアに欲しい要素をちゃんと取り揃えてくれています。
僕としては、ポストハードコアの領域まで行ってたり、モダンヘヴィな質感が強すぎたり、非人間的レベルにエクストリームだったりすると、少々好みとは外れてしまいますからね。このくらいのバランスによるメロディックメタルコアは琴線に触れてきます。全体通して良い感じですよ。
ただ、全曲クオリティーは高いものの、アルバムを代表するようなキラーチューンと呼べるものはないかな。良くも悪くもノーマルなメタルコアなので、このバンドならではの強みみたいなものも感じにくい。「普通にイイね!」の範疇におさまっているといいますか。
歌メロについても、これだけキャッチーにしてくれるだけでありがたいんですけど、この手のメタルコアの代表格であるAS I LAY DYINGとかと比べると、猛烈に胸を締め付けるようなエモーショナルさは控えめです。キャッチーではあるけれど、哀愁バリバリってほどではない。M6「Funeral Verse」のように、比較的哀感を武器にした歌もあるにはあるんですが。
あまり他のバンドと比べてどうこう言うのも、失礼な話ではあると思うんですけどね。どうしてもこのタイプのメタルコアを聴く際は、AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEあたりがベンチマークになってしまうのが避けられず...。それらのバンドを若干パワーダウンさせたような印象を持ってしまう。
とはいえ前述した通り、作品のクオリティー自体は高いレベルでまとまっているのは紛れも無い事実。メロディックメタルコアのファンであれば、多くの人が良作だと思えるだけの水準には達していると思います。M2「Hope & Hell」のメロディックなギタープレイ、M5「Lifeline」のエモ的なキャッチーさを放つサビメロとかは特に良い!
エクストリーム派なリスナーからしてみれば、ちょっとポップすぎると感じるかもしれませんけどね。個人的にはこのくらいメロディー面が目立ってても全然構いません。
少なくとも、本作で終わってしまうのは非常にもったいないと思わせるだけの完成度の高さがあります。ほぼ総入れ替えのような人事を経て、すぐに終焉を迎えてしまうとは、このバンドの内情にいったい何があったのでしょうか...
まあ、不慮の事故だとか病気だとかで、満足にライヴもできないまま活動を終えてしまうバンドとかもいる中、ちゃんとラストアルバムを出して、ラストライヴも予定しているだけ、まだマシと言えるのかもしれませんが。せっかく良作を出せたのになぁ。
個人的に本作は
"モダンヘヴィやエクストリームな要素に傾倒しすぎない、適度にポップ&キャッチーなメタルコアのスタンダード。際立った点は無いが、全体的にハイレベルにまとまってる"
という感じです。