ギリシャのメロディックデスメタルバンド・Nightrageの来日公演に行ってきました。2日連続ライヴのうち、僕が参加したのは初日の方となります。
平日、それも週のド真ん中という、あまり疲れたくない日程感ではあったんですけどね。最新作『Remains Of The Dead World』が非常に良い出来だったし、11年ぶりの来日ということで、この日を逃したら次いつ観られるかわかりませんから。
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その日はさっさと仕事を切り上げられそうだったので、定時になったらササっと後片付けを始めて退勤に成功(ほぼ退社準備を終えた状態にも関わらず、後輩社員が全然急を要するものではない質問を遠慮もなしにぶつけてきたときは若干イラっとした/笑) ただ、今いる職場はあまりアクセスに秀でた場所ではないため、定時後すぐに出られたとしても、さほど時間に余裕がある訳でもない。最短ルートで高円寺を目指す。
会場となる高円寺HIGHは初めて行くライヴハウスではありましたが、幸い駅からのアクセスは非常にわかりやすいルートのため、特に迷うこともなく開演に間に合いました。開演時間が19時半っていうのがありがたいですね。19時ちょうどじゃ時間の余裕がもっとなかったですから。
しかし高円寺って場所、ほぼ来ることはないところなんですが(大学時代にLAST BANDITっていうロックTシャツ店に行ったときくらい)、ザッと見た感じ結構面白そうなお店多そうですね。今度の休みの時にでもまた来てみるか?
さて、会場となる高円寺HIGH。公称キャパ300人ということでかなり規模は小さい。地下深く階段を下っていく造りも相まって、かなりライヴハウスらしいアングラ臭を醸し出していました。フロアの一段下に降りたら、もう最前の柵までかなり近い距離になるし。
ワンドリンクのカシオレを交換し、一段降りたフロアの後方左手に陣取る。これだけ小さい会場でも、やはり平日ド真ん中という日程も効いているのか、7割くらいの入りのように見えます。バンドの知名度も高いとは言い難いですが、メロデスの人気は低くない日本なら、もう少し注目されてもいい気がしますけどね。
開演時間を過ぎて暗転すると、SEが鳴ってすぐにメンバーが登場する。ここで時間をかけて焦らすバンドが多い中、かなりスピーディーに出てきたもんだな。
まず何よりも目についたのは、マリオス・イリオポウロスの姿です。狭いステージに不釣り合いなほどデカい図体はもちろん、お腹の出っ張り具合がすんごい。エッグマンみたい。
そのデッカい体をオーディエンスに見せつけるかのように前に出張ってくるのですが、まさに「破顔」という言葉が相応しいくらいの笑顔。すんごい嬉しそうな顔で、最前列の人と目線を合わせていました。その風貌と合わせて人懐っこい印象を強く与えます。
マリオスだけでなく、新フロントマンのコンスタンティノス・トガスも同様にコミュニケーションに積極的でした。頻繁に最前付近の観客とハイタッチを交わし、ガッチリと握り返すシーンが多くみられました。腰の入ったヘッドバンギングもカッコいいね。
もう一方のギタリストのマグナスと、ベーシストのフランシスコは、前2人ほどアピールを強くするタイプではなく、あまり自分の持ち場を離れ過ぎない演奏スタイル。ただ、マグナスはメロデスらしいリフとソロをマリオスに負けず弾き倒す姿が様になっているし、フランシスコはMCでの日本語の発音がなかなか綺麗でした。見た目はケリー・キングみたいにおっかないけど、話しているときの空気はふんわりしてる。
そして最新作発表後に古巣に戻ってきた形の、ドラムのフォティスですが、彼のプレイが際立って素晴らしかったですね。2曲目の「Being Nothing」の後半にとんでもない速さのブラストビート&ツーバス連打で圧倒しており、「ドラムやべえな...!」と思わせてくれましたが、その印象は最後まで和らぎませんでした。
シンバルやハイハットといった金物の鳴りもすごく綺麗だったし(これは彼のプレイというより音響のおかげでしょうけど)、音数が詰まったような迫力のあるドラムは、疾走パートも後半のドラムソロにおいても、非常に気持ちよく響いていました。普段のライヴでは人混みに飲まれてドラマーの姿がよく見えないことが多いんですが、今日は会場が小さいのと、そこまで人入りが多くない(これは良いことではないけど)ため、ドラムプレイがよく視認できたのが今日のライヴのお得ポイント。
ただ、メンバーのパフォーマンスがいくら良くても、曲が良くなければ特に琴線に引っかかることはありませんが、このバンドについてはその心配は一切無用。メロデスらしい叙情性がしっかりと息づいたリフ、執拗に哀愁を放つメロディアスなリードギターが、本当に全曲鳴り止まないんですよ。このバンドの楽曲の充実度は並みじゃないことがよくわかりました。
頻繁に「Are you having fun?」と問いかけをしたり、コール&レスポンスをしてみたりと、掛け合いの時間は挟みつつも、長めのMCは特になく(フォティスがポール・ディアノの追悼を少し時間とって話したくらい)、ひたすらに叙情メロデスの王道とも言える楽曲のオンパレード。テンポを落とした楽曲ですら慟哭リフが矢継ぎ早で、ヘッドバンギングを抑えられませんでした。
ただ、せっかく新作を発表したタイミングでの来日だというのに、その新作からの楽曲が全然盛り込まれていないセットリストだったのは、ちょっと残念だったかな。曲が充実しているので物足りなさがあった訳ではないんですが、せっさく名盤と呼べる出来のアルバムを作ったんだから、ライヴでもやればよかったのに。
目に見えてフロアの熱量が上がったのは後半、「Frozen」「Embrace The Nightrage」の連打でした。どの楽曲も平均的に良くて、そこまで起伏のあるショウ運びという訳ではなかったんですが、やはりわかりやすい叙情性が強まるとオーディエンスもノっていきますね。
ここまでモッシュらしいモッシュは生まれてこなかったんですが、ラストになってコンスタンティノス・トガスによる、ウォールオブデスを促すパフォーマンスにより、フロア中央に大きくスペースが生まれる。さすがにこの少数精鋭ぶりだと、派手なピットが生まれるということはありませんでしたが、最後にエクストリームなノリを生み出しました。
僕はさすがに仕事帰りのスーツ姿だったので、端っこの方で腕を振り上げるにとどめましたけどね。こういうノリが生まれるライヴは、やっぱり体感してて楽しいものです。
終わってみれば1時間半、18曲と結構なボリュームのあるライヴが終了。曲数は多めとはいえ、メロデスらしさ満載のフレーズの応酬と、圧倒的音数による迫力あるドラムの鮮やかさが魅力で、長ったらしさを感じることなく終始慟哭の旋律に酔える夜でした。
デスメタルとは思えぬほどに、各メンバーがフレンドリーなステージングで、ライヴ終了後も普通にお客さんと同じ通路を通ってロビーまで来て、物販スペースでコミュニケーションをする姿もあり、こういうのは小さいハコならではの光景だなと。
これだけメロデスとして魅力的なライヴを、これだけの客数だけに独占させるのは正直もったいなかったですね。フロアに多少空きがあるのは観やすいっちゃ観やすいんですが、メロデスファンならこの公演はマストチェックだったはず。やっぱ水木開催という日程がキツいのかな...。