今年のARABAKI ROCK FEST.およびSUMMER SONICにて、大きなインパクトを与えてくれたのが、L'Arc〜en〜Cielのフロントマン・hydeさんのソロプロジェクトであるHYDEでした。
フェスという限りのある時間においても、非常に華のあるライヴパフォーマンスで魅了してくれましたからね。ぜひともワンマンでのフルセットのライヴも観てみたいと思っていたんです。
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その機会に恵まれたのが、今回のHYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA- 幕張メッセ2デイズの1日目です。ここに来るのはサマソニぶりだな。
どうやら今日の幕張メッセ、異なるホールにて2.5次元タレントグループという男性アイドル的な人たちのライヴがあるらしく、痛バッグやぬいぐるみキーホルダーを身につけた女性ファンも大量にいる。HYDEファンと合わせて海浜幕張駅の人混みがカオスなことになっていました。
メインホールのコインロッカーに荷物を預けた後、9-11ホールへと移動。僕はチケットを買ったのがかなり遅かったので、入場はほぼ最後の方。会場はブロック指定となっており、最後方に申し訳程度に作られたCブロックへと通されることに。案の定ステージからはメッチャ遠いな...
もう2〜300番くらい早ければもう一個前方のブロックに入れたので、フロア中央付近くらいには進めたのにな...と残念に思うものの、ブロックの最前は目の前に大きな通路がある関係上、人混みに視界を遮られることがないので、ステージの全容を見られる。下手に前の方へ行ってロクにステージが見えなくなるよりはマシか、と気持ちを切り替えることとしました。
場内SEはLINKIN PARKやSlipknot、BRING ME THE HORIZONなどで、現在のhydeさんが志向している路線が何となく見えるよう。僕の隣のカップルがBRING ME THE HORIZONの「Kingslayer」のサビに入った際に、「あ!これアレだ。BABYMETALだ」と言っており「いや、ある種その通りだけど、厳密には違うんだ...」という気持ちになってしまったよ(笑)
ステージのスクリーンにはデジタル時計で現在時刻が刻まれており、17:00を回ったところで会場が暗転する。ここでなぜこのライヴの開演時間が17:06という非常に中途半端な時間だったのかがわかりました。
スクリーンに映されているデジタル時計の表示が、16:60となっていたからです。これなら、ライヴ開演時間は16:66となり、"666"の獣の数字になる。つまり最初の楽曲は 「I GOT 666」だな!と予想しました。
しかしいざ16:66になってライヴがスタートすると、最新作の順番通りフツーに「LET IT OUT」が演奏されました。自信満々に予想してたのにはずしちゃったよ。
気を取り直してステージに集中。やはりステージ上のメンバーは豆粒みたいにしか見えないし、ステージ脇のスクリーンもさほど大きくはない。ただ、サーカスのような装飾が施されたステージ全体に、視界いっぱいにオーディエンスの手が上がっている様子がシルエットとして一望できるのはなかなか壮観で、これはこれで素敵な景色だなと思いました。
アルバム名を冠したライヴだけに、楽曲は最新作『HYDE [INSIDE]』の楽曲でほとんどを占める構成。序盤からヘヴィさ重視のアグレッシヴな楽曲で畳み掛けるように進んでいく。
もう大御所と言えるアーティストであり、過去の人気曲を歌うツアーで日本を回っていれば、コアなファンを相手にずっと音楽活動ができるようなポジションにいる人のはずですが、そんな守りに回ったような活動なんざ知るか!と言わんばかりに、シャウト中心の新曲の連打。こういう姿勢こそ僕が好感を持っている所だったりします。
メタルのフィールドで活躍しているメンバーもいるバックバンドの演奏もタイトで、ヘヴィかつメタリックなサウンドに、バスドラ連打の効いた勢いがテンションを高めている。やはり幕張メッセの音響は良くなく、リフの輪郭がイマイチ掴めない瞬間も多いんですが、パフォーマンスの質の高さは遠目からでもよくわかりました。
そしてhydeさんのヴォーカルパフォーマンスですが、とにかく叫ぶ叫ぶ。デスヴォイスとまではいかずとも、かなり歪んだシャウトを序盤から連発して、フロアの熱量をさらに上げんとするばかり。
今までフェスで観た時もシャウトヴォーカルは使っていたのですが、ここまでシャウトに振り切った姿は初めてでしたね。良い意味でベテランらしからぬアグレッシヴなパフォーマンス。「もうあなたは十分実績を積んだミュージシャンなんだから、余裕を持った歌い方でいいのでは?」なんて野暮なことを言いたくなってしまうほど。
「I GOT 666」や「BLEEDING」のようなシンガロングが特徴的な楽曲では、後ろからでも会場を揺らすことがわかるほどの声量がこだまし、「TAKING THEM DOWN」ではサークルピットを促し、前方のブロックでは大きなピットが発生していることがわかりました。楽しそうだな〜、俺も混ざりてえな〜アレ。
前半の少し長めのMCでは、今までフェスでも見てきたように、カメラにグッと顔を近づけて、カメラ目線で怪しく語りかける。スクリーンにしっかり御尊顔が映るので、僕のような最後方の人にもありがたいご配慮。
「みんなアルバムは頭に叩き込んできたかい?あのアルバムはマリオカートみたいなものなんだ。わかる?実践でやってみたらどうなるかわからないんだ」と語り、これからこのアルバムがどんなふうにライヴ映えするのかを試すと宣言。
ここからさらにエンジンをかけていく段階になったのですが、hydeさんごめん、マリオカートの例えはイマイチピンとこなかった(笑)
中盤はバックバンドのhicoさんによる落ち着いたピアノソロから、hydeさんもスタンドマイクによる歌唱へと変更。先ほどまでの押し一辺倒でゴリゴリ進む時間から一転して、テンポを落とした楽曲が中心に。ライヴの前半から中盤にかけての起伏を生み出す時間として作用していました。
ただ、歌メロ自体に哀愁のフックが満載かと言われると、正直そこまででもないだけに、少し熱気は落ちてしまったような感じか。絞り出すようなヴォーカルワークはエモーショナルで良かったんですが。
静かな時間帯を終えて、「休憩時間は終わったよ」と語ると、中盤の「6 or 9」から再度エンジンがかかり直した感じ。この曲もわかりやすいシンガロングが多く含まれる曲のため、会場中からウォーウォーと声が広がることがわかる。こういうとき一番後ろの場所にいると、空間全域に声が広がっているような感覚がつかめますね。
ここからの「6 or 9」〜「MAD QUALIA」〜「SOCIAL VIRUS」という流れが、ひときわ熱気が高まった瞬間でした。「MAD QUALIA」ではhydeさんが客席に降りてきて、担がれるような形で歌い上げる。僕の位置からはさすがに観えにくかったものの、きっとクラウドサーファーが大量に発生していたと思われます。
そしてハイライトとなったは、新作で最もヘヴィな楽曲である「SOCIAL VIRUS」。バックの演奏がメタルのフィールドにいただけに、もはや完全にメタルコアの領域に入っているサウンドでした。
さらに中盤のヘヴィなリズム落ちパート前には、ウォールオブデスを要求し、僕の前のブロックには大きなスペースが生まれる。ステージ脇のスクリーンにはわずかながらも、そのスペースがグシャっと潰れる瞬間が映されていました。さすがに思いっきりハードコアモッシュする人はいなさそうだったな。
いつの間にか衣装を脱いで、真っ白な上着に血まみれな姿となった(後程MCで「これケチャップなんだよ。僕美味しそうでしょう?」と言ってた)hydeさんが、クライマックスと言わんばかりに「LAST SONG」を歌う。彼の50代とは思えぬ耽美なルックスと相まって、その姿はまるでステージに降り立った堕天使。
「LAST SONG」なんていうタイトルですから、この曲が終わった後はしばし時間が空く。アンコールを求める手拍子が響く中、まずステージに登場したのはギタリスト2人。タッピングを交えた速弾きソロを交互に披露して、メタルギタリストとしての力量を見せつける。個人的はもう少しテクよりメロディックさが欲しい所ですが。
その後はドラムセットを乗せた台が、前2つのスタンディングブロックの間の位置に運ばれ、バンドメンバー全員がそのドラム台の上に立った状態で「PANDRA」「INTERPLAY」の2曲を演奏する。この位置からなら、メンバーの挙動がだいぶ見やすくなって、最後方の僕にとってもありがたいな。まあこの2曲はそこまで好きな曲ってほどではないんだけど(笑)
結局ブロック間で演奏していたのはこの2曲のみで、その後は普通にステージ上でのパフォーマンスになる。ステージに戻る際hydeさんは、なぜか水鉄砲を観客に向けて無言で撃っており、その様がモニターに映される様はなんだかシュール。
ここからいよいよライヴもクライマックスへと突入していく訳ですが、やはり個人的にアガったのは「GLAMOROUS SKY」でした。出だしの静かなアルペジオから「おっ!来るか!」とワクワク感が込み上げていましたが、いざ疾走した時の気持ちよさは絶品。スケール感抜群のサビの歌い上げも素晴らしく、恐らくクラウドサーファーが大量発生していたであろう、前方フロアの熱狂ぶりが羨ましく思えましたね。
ただ、ラスサビ前の「眠れないよ!」のところは、どうもリズムが乱れていたのか、イマイチ綺麗に揃ったシンガロングができなかった。あそこで今日イチの声を上げたかっただけに、ちょい残念。
この曲で高まった熱量そのままに、ラストの「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」へ。ラストが中島美嘉さんへの提供曲とVAMPSの曲という、HYDEオリジナルではないというのも変な感じですが、シンプルにライヴで聴いて楽しい曲だけに大盛り上がり。"Sex! Blood! Rock n' roll!"のシンガロングはもちろんのこと、"fu fu fu〜🎵"までみんなバッチリでした。やっぱこれは歌いたくなっちゃうよね。
終わってみれば20曲という、非常に盛りだくさんだったワンマン。後ろの方であるが故に、ステージ上での細かな所作とかまでは当然見えなかったわけですが、大御所アーティストでありながら、曲もパフォーマンスも攻めに攻める、バイタリティの高さを改めて思い知りましたね。
モッシュが巻き起こるフロアの方に行ってみたい気持ちはやまやまでしたが、ギラギラに照らされるステージと、高々と挙げられる無数の手という、まるでライヴ写真のような光景をずっと目に焼き付け続けることができたというのは、これはこれで良い体験だったなと。
インタビューだと「激しい音楽はもう長く続けられない」的なことを言っていましたが、もうしばらく彼の大御所アーティストらしくない、精力的かつパワフルなステージを観たいと思ってしまいますね。