- 大幅なメンバーチェンジを経ても変わらぬ王道メタルコア
- 獰猛なアグレッションと悲哀のエモーションの組み合わせ
- リリース直前の崩壊が本当に惜しくなる完成度
2024年最後の感想記事はコチラ、メタルコアの帝王・AS I LAY DYINGが前作『Shaped By Fire』より5年ぶりにリリースした最新作です。
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本作は実に複雑な思いを抱かされるアルバムであります。
メタル系のニュースを普段から見ている方ならもうとっくにご存知でしょうが、本作発表直前になって、ヴォーカルのティム・ランべシスを除く全メンバーがバンドから脱退。今年後半から開始されるはずだったツアーもキャンセルになるという事態が発生しました。
前作発表時のメンバーは2022年にほぼ総とっかえに近い形でいなくなりましたが、まさかそれ以上の規模の脱退劇が、アルバムリリース直前という最悪のタイミングで起こってしまうとは、前作のカッコよさに心底震え上がった身としては、このバンドの崩壊はなんとも残念極まりない。
ティムの声明によると、ギタリストのフィル・スグロッソと意見が合わなくなり、彼が脱退を表明したら他の3人もすぐに抜ける意志を示したんだとか。
これはやっぱり、ティムの過去の犯罪によるところが大きいんでしょうかねぇ...。何せやらかした事が事だけに。末長く活動するというのはハードルがあまりにも高かったのでしょうか。まあ気持ちはわかるよ。
そんなわけで聴く前から微妙な気持ちにさせられる本作ですが、喜んだらいいのか悲しんだらいいのか、中身は変わらず最高のメタルコアなんですよね。00年代に勃興した、メロディックメタルコアの王道。
切れ味鋭いリフと叙情センスに長けたリードギター、悲哀さをたっぷり湛えたクリーンヴォーカルが織りなす、アグレッシヴでありながらエモーショナルな曲の数々。攻撃的なエッジが効いていながら泣ける、このバランスが相変わらず素晴らしい。
本作の完成度が間違いないというのは、インストに続くM2「A Broken Reflection」を聴けばすぐにわかります。出だしのリフとバスドラ連打で早速最高潮にアゲてくれるし、疾走型のリフもヘッドバンギングするのにピッタリ。クリーンのメロディーが切なく熱いのは言わずもがな。
このままブラスト気味のテンポで爆走展開しつつ、メロウなツインギターの絡みがより叙情性を増すM3「Burden」、あまりにも獰猛なヴォーカルがエクストリームな面を増強させるM4「We Are The Dead」 へと繋がる流れで、本作の名盤たる仕上がりは確約されたようなもの。
本作中特に気に入ったのはラストを飾るM11「Taken From Nothing」。イントロのギターとコーラスの時点ですでにエモさ全開ですが、ポップロックのように軟弱になるなんてことはなく、強靭はヘヴィリフの尖り具合は据え置き。
そして他の楽曲に輪をかけて、サビのメロディーが哀愁があって素晴らしいんですよ。この胸を締め付ける激情、俺はこういうのに本当に弱いんだ...!
全体通してあまり曲調に幅はなく、前作同様メロディックメタルコアを突き詰めた感があり、さほど収録時間が長くないこともあって、非常に焦点が絞れている印象を受けます。破壊的サウンドに血をたぎらせながら、メロディックな部分で打ち震える。そんな聴き方を終始続けることができる。
楽曲の粒揃い感で言えば前作に軍配が上がるように思いますが、王道のメタルコアをブレずに、高い次元で貫いた潔さすら感じるアルバム。メタルコアというワードだけでも、色々なスタイルが細分化されている今、「これがメタルコアだ!」と言わんばかりに模範解答を叩きつけてくれました。
これだけの力作を作り上げられるのですから、今のバンドの崩壊具合は本当に惜しいものがありますね...。果たしてバンドの(ティムのと言うべき?)未来はどうなっていくのでしょうか...?
個人的に本作は
"前作同様、全ての面で高いクオリティーを誇るメロディックメタルコアを突き詰めたアルバム。ヘヴィで破壊的なパワーと、哀しみを湛えたメロディアスさのバランスが完璧"
という感じです。