- 4年ぶり、4人体制初のフルアルバム
- 過去作から類を見ないほど歌メロが充実
- シャウトとヘヴィサウンドの攻撃性は健在
実にフィジカルリリースは4年ぶり。国産プログレッシヴ・メタルコアバンドEarthists.の3rdフルアルバム。
このバンドについては以前ブログでも書いた通り、個人的にちょっとしたつながりがある方が組んだバンドということで、アルバムデビュー前から動向を見ていたものです。
show-hitorigoto.hatenablog.com
しかし、残念ながらこのバンドを知るきっかけとなったYUTAさんは、2019年にバンドを脱退。それ以降は4人体制となってバンドを存続させ、デジタルによるシングルリリースとライヴ活動を主軸に展開していきました。
YUTAさんきっかけで応援してたバンドではあるものの、その人が抜けたからバイバイというのはなんだか薄情な気がしていたので、4人になってからもライヴを観に行く機会があったりと、何だかんだチェックはしており、ここにきてようやくのフルアルバムリリース。4年って、他のバンドもそのくらいリリース間隔が開くことはあると思うのですが、このバンドの場合は何だか長く感じたものです。
さて、そんな新作ですが、リリース前に先行シングルとして収録曲がちょくちょく小出しにされており、それらを聴いていた時点で、結構大きな期待感を寄せていました。
というのも、今回の楽曲は過去二作『DREAMSCAPE』『LIFEBINDER』と比べて、かなりメロディーが充実していると感じたんですね。先行配信された楽曲から、それが滲み出ていました。
ピアノやアンビエントっぽい浮遊感あるサウンドでメロウさを演出するのは過去作でもやっていたのですが、本作においては明らかに歌メロへの比重が大きくなっている。どこがサビに当たるのかハッキリとわかるような、盛り上がりのポイントがしっかりとヴォーカルによって演出されています。
あからさまなDjentっぽさ、モダンプログレメタルとしての複雑さは大きく減退していますね。よりオーソドックスなモダン・メタルコア/ポストハードコアへと接近した印象。
この方向性は、前作までの無機質寄り、ヘヴィさ重視プログレメタルコア路線を気に入っていた人にとっては、どう映るんでしょうかね?クリーンヴォーカルで歌われるパートも劇的に増えているので、「メロい路線に進みやがって!」なんて思っていたりするんでしょうか?
それと合わせて、ビル・エヴァンスや上原ひろみさんのピアノから影響を受けたというYUTAさんが脱退した影響なのか、「Winterfell」や「FLUX」あたりにあった独自の空気感は無く、従来の個性はやや減退したような印象は確かにあります。
しかし抜群に聴きやすく、わかりやすくなった歌の存在感(クリーンもシャウトも説得力を増したヴォーカルの影響も大きい)は、これまでのアルバムになかった強み。それに狂気的なシャウトとヘヴィな演奏にはブレが無いため、「軟弱になった」「ヒヨッた」などという印象は全くない。普遍的なメロディックメタルコアとしての魅力をも付加した今のEarthists.の音楽性は、少なくとも僕は全力をもって肯定したい所存です。
オープニングトラックであるM1「Yours」を聴いた段階で、これまでの作品とは一味違うことがすぐわかりました。跳ね回るようなリズム感に、Earthists.らしいモダンさと透明感のバランス、圧倒的に歌心を増したヴォーカルパフォーマンスが映える1曲。本作の路線をわかりやすく象徴しています。
それに続くやたらポップで耳に馴染みやすいピアノの旋律、シャウトを用いながらもどキャッチーなメロに、勢い付いたバスドラ連打が特徴的なM2「Lost Grace」、よりエモコア的な爽やかさのあるメロディーがフックになったM3「Cure」(この曲が一番好きかも)と来た段階で、本作の充実ぶりを確信しました。
Graupel、Sable Hills、Promptsという、現代の国産メタルコアシーンの若手代表格バンドから、フロントマンが一堂に介したM4「Skywalker」や、Djent直系のモダンなサウンドで攻め立てるナンバーとは一線を画する、完全にヴォーカル指向性を強めたモダン・エモコアM6「In Remnant (You just tell me now)」なども印象的な楽曲ですね。ちなみにM6はヴォーカルのYuiさんイチオシの曲らしい。
自分の葬式で流してほしい楽曲No. 1
— YUI KAWASHIMA (@yuithists) June 21, 2022
クソデカ感情芽生え楽曲 No.1
聴いた瞬間"儚ねぇよ…"と呟いてしまう部門 No.1
肩が外れるまで拳を突き上げたくなる楽曲 No.1
四冠を達成したIn Remnant(you just tell me now)を早くみんなに聴いてほしい。
こんな感じで、とにかく本作は過去作とは別レベルで、メロディアスな方面への進化が素晴らしい1枚。メロディー重視のリスナーとしては、エモ的な激情をしっかり溶け込ませた本作は、3枚のフルアルバムの中で一番印象が良いです。購入してからガンガンリピートしてます。
あえてこの路線で気になる点を挙げるとするなら、Aメロにあたる部分ではヘヴィさを排したサウンドで、ヴォーカルもクリーンで淡々とし、そこからヘヴィなバンドサウンドを導入、そしてメロウなヴォーカルラインを持ったサビへ...というように、やや展開が似通った楽曲が多く感じられるところかな?
ただそれは、言ってしまえばスタイルの確立みたいなもので、実際このパターンでフックに満ちた楽曲を多数生み出せているのも事実。雑多になればいいってもんでもないし、マイナスにはならないはず。これが現在のEarthists.の黄金パターンなのかも。
個人的に本作は
"圧倒的にメロディーの要素を増強させたモダン・エモメタルコア。歌による叙情性は間違いなく過去イチ"
という感じです。