ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

10/13 GALNERYUS / "THE RISING OF THE NEW LEGACY Pt. II" TOUR 2024 at 柏PALOOZA

最新アルバム『THE STARS WILL LIGHT THE WAY』のリリース、およびメジャーデビュー20周年を記念した、GALNERYUSのライヴツアー "THE RISING OF THE NEW LEGACY Pt.Ⅱ" 柏PALOOZA公演に行ってきました。

 

柏は自宅からわりかし行きやすい所で、電車の乗り換えを何回も重ねることもなく、すんなり到着できる場所。そんな所でGALNERYUSが日曜日にライヴするんなら、それはもう行かない手はないわけですよ。

 

自宅で洗濯やら観葉植物の水やりやらを済ませ、CDやLPをじっくり聴きつつ、午後から出かけて悠々と柏へ移動し、GALNERYUSのフルセットのライヴと、実に贅沢な休日となりましたわ。

 

開場ちょうどくらいにPALOOZAへ行くと、すでに結構な列が出来上がっている。幸い僕の整理番号はそこまで後半ではなかったので、さほど待ち時間が伸びることはなく、フロア中央くらいに陣取ることができました。

 

DARK TRANQUILLITYの新作がSEとして流れている中待つこと少々、客電が落ちて早速歓声とメロイックサインが上がる。ちょいちょいカラフルに光る腕輪をしている人を見かけましたが、これは本ツアーから物販で販売されているバングルライトらしい。

 

摩天楼オペラのペンライトもそうですが、ヘヴィメタルのライヴでこういうピカピカ光るモノが掲げられるのは、少々違和感があるな...。まあ以前BABYMETALのライヴでは神器として自分もつけてたし(あれは公式につけるよう指示されたものだけど)、それと同じノリなんでしょう。

 

最新作の流れ通り、登場SEの「GO TOWARDS THE UTOPIA」でメンバーが登場してからの、「THE REASON WE FIGHT」でスタート。白髭を生やした小野さんの見た目はやや新鮮に映るな。

 

すでにPURE ROCK JAPANに横フェスと、短い期間で2回も生で聴いている曲ですが、やはり何度聴いてもギターソロのスリリングさと、雄々しいヴォーカルワークは素晴らしく、早速高揚させてくれます。小野さんのヴォーカルの伸びは凄まじい限り。

 

過去曲を少し織り交ぜつつも、大半は最新作からの曲で構成されているセットリストで、順番もほぼアルバムの通り。20周年を記念したツアーでもあるとはいえ、やはりレコ発ツアーとしての性格が強いっぽい。

 

しかしGALNERYUSは過去曲の演奏ばかり求められるレガシーバンドなどではもちろんなく(ツアータイトルにもNEW LEGACYってついてるしね)、新作からの曲ばかりでも、今までのライヴと比してテンションが落ちるようなことは全くない。これは彼らのライヴパフォーマンスの良さに、新作のクオリティーの高さが担保されてる事を証明する事実。

 

僕の位置からはセンターの小野さんに隠れてしまい、TAKAさんの姿はあまりよく見えませんでしたが、その他のメンバーはしっかりと確認できる。相変わらずSYUさんの速さと泣きと華をすべて備えたギターは圧巻で、金髪を振り乱すヘドバンと併せて、視線をロックオンさせる魅力に満ちていました。やっぱこの人はメタルギタリストとして格が違うわ。

 

様式センスをフルに活かしつつ、要所で恐ろしいほどテクニカルな速弾きを披露するYUHKIさんの素晴らしさももちろんですが、LEAさんのドラムの見栄えがかなり増しているのもわかりました。『UNION GIVES STRENGTH』に収録されたライヴ映像だと、まだ演奏のみに徹するといった印象を受けた彼ですが、もうすっかりバンドに馴染んだのか、ヘドバンを繰り返しながらアグレッシヴに叩き切る様が非常に見てて気持ちがいい。もちろん手数足数のやたら多いプレイ自体の聴き応えはいわずもがな。

 

最新作の曲はスピードチューンはもちろん高速ヘドバンを誘発させるし、テンポを落とした楽曲もライヴのコンテンツとしてしっかりと機能している。「新曲はコロナ禍を経て、みなさんと一緒に声を出したいという狙いがある」という小野さんの言葉通り、ウォーウォー言うシンガロングを演出する「FINALLY, IT COMES!」、リスナーを置いてけぼりにするかのようなプログレッシヴパートも完璧にこなした「IN WATER'S GAZE」、小野さんの表現力が炸裂する「CRYING FOR YOU」と、どんなタイプの曲であっても集中力が途切れないんですよ。

 

アルバムの中では相対的にノーマルな印象だった「VOICE OF SADNESS」も、ライヴパフォーマンスにノせられた状態だと、その非常にキャッチーな歌の魅力に改めて気付かされますね。"Voice!"のキメのパートでは、思わず全力のフィストハングをしてしまったし、気づけばライヴバンドとしての妙技に魅せられてしまっていました。

 

1曲ごとの時間が長いにも関わらず、本編最後の曲になると「え?もう終わり?早くない!?」と、長い曲が苦手な僕がこう思ってしまうあたり、いかにGALNERYUSが聴かせどころを心得たバンドであるかがわかります。

 

そしてその本編ラストの曲というのが、11分の長尺曲「I BELIEVE」なわけですが、これがもう本っっ当〜〜〜に素晴らしかった...。音源で聴いた時から「これは凄まじい名曲だ!」と思っていたわけですが、そのどこまでも広がっていくようなスケール感が、目の前で、爆音で繰り出されるのですからマジでたまらなった。

 

特に中盤から後半にかけて披露される、YUHKIさんとSYUさんのキーボードソロとギターソロの流れ。恐るべき超絶技巧と、感情を突き動かす号泣必至のフレーズが、猛スピードで駆け抜けていく。この圧巻のパフォーマンスは無条件で胸の奥が熱くなりますよ。昂った感情に任せて、思いっきり高速ヘドバンをかましてしまった。この時ちょっと涙目だったかもしれん(笑)

 

曲数が少ないとはいえ、本編だけで1時間半近くやったのだな〜...と思いながら余韻に浸りつつ、その後はアンコールの時間。まずはツアーTシャツに着替えた小野さんが出てきて、彼らのワンマン恒例の物販紹介と一人喋りから。先ほどまで超人的なハイトーンを連発してきたヴォーカリストのはずが、こうやってお話すると「気の良いおじちゃん」って感じになりますね(笑)

 

「LINEのQRコードの出し方がわからない」「小型スピーカーのBluetoothの切り替えができない」といった、楽屋でのYUHKIさんの機械オンチっぷりを暴露(よく機材のセッティングとかできるな)したあと、本編では披露されなかった「HEARTLESS」を披露する。

 

この曲のみ本編で飛ばされてしまっていたので、アンコールでやってくれることを待ち望んでいたわけです。猛烈な哀愁が疾走する、剛直なパワーメタルナンバーであり、新作の中でも特に好きな曲でしたから。

 

そんな泣きに満ちたパワーメタルの後に、GALNERYUSでも一際ポップな「FUTURE NEVER DIES」が来る。土臭い哀愁と、天翔けるポップさ、この両極端なスタイルがどちらも様になるのがGALNERYUSですね。「FUTURE NEVER DIES」はサビ全パート歌ってしまった。

 

そしてまさかダメ押しのラストナンバーとして、「ULTIMATE SACRIFICE」まで出てくるという極上フルコース。この曲もまた12分以上の大作なのですが、メタルならではの悲壮美に貫かれた最高峰の名曲。後半で溜めに溜めてから飛び出す壮絶なギターソロは、何度聴いても息を呑みます。1日に摂取していい泣きを超過している気がする。

 

「ライヴで聴きたい曲のリクエストを募ったら、みなさん聴きたい曲はやはり"速い・高い・キツい"で大変なんですよ」と、今日のMCで小野さんが冗談っぽく言っていましたが、この曲もまたライヴリクエストで票が多かった曲だったために組み込まれたとのこと。そりゃキツいよなこの曲は。

 

曲数が少なめだなと思っていたものの、蓋を開けてみたら2時間ガッツリとプレイされたフルセットライヴ。いや〜〜〜やっぱりGALNERYUSは国内最高峰のライヴバンドですわ。圧倒的な演奏のパワーに打ち負かされ、超人的ハイトーンで脳を貫かれ、あまりに劇的なメロディーに感情を動かされる。これぞヒロイックなヘヴィメタルのライヴですよ。最高でございました。

 

なお、今回のツアーの曲のリクエスト、僕もリプライしていたのですが、アンコールにやった「FUTURE NEVER DIES」「ULTIMATE SACRIFICE」は僕のリクエストに含まれていた曲だったんですよ。

 

 

それなら、ツアーファイナルの立川でのライヴも、期待してしまっていいのか。それとももう僕のリクエスト曲からは選ばれないのか、どうなるんでしょうかねぇ...

 

まあ彼らのライヴはセットリストがどうなろうと素晴らしいものになるというのは確信してますから、どんな曲がプレイされようと高揚させられるし、泣かされるんでしょうけどね。

BRING ME THE HORIZON 『POST HUMAN: NeX GEn』

  • Future Emoを掲げたPOST HUMANシリーズ第二章
  • 最先端のハイパーポップを取り入れる音楽的貪欲さ
  • 単一のパッケージ音楽作品として圧巻の完成度

 

前回のCD感想がNEW HORIZONだったので、HORIZON繋がりでBRING ME THE HORIZONの新作についても書いてみようかな。

 

昨年のNEX_FEST 2023および、今年のSUMMER SONICにて素晴らしいアクトで魅了してくれた、イギリスが誇るモンスターロックバンドの最新作。本来なら昨年9月にリリース予定だったのですが、「満足できる水準に完成させられない」という理由により延期されていたもの。

 

今年の5月に作品紹介のティーザー映像とともに突如配信リリースされ、CDやLPといったフィジカルリリースは9月。いや〜待たされた待たされた。

 

本作は2020年発表の『POST HUMAN: Suvival Horror』の続編という立ち位置で、POST HUMANシリーズ4部作の2作目。前作までの間にシングルリリースされていた楽曲はすべて含まれ、国内盤ボーナストラックのライヴ音源も含めれば全19曲というかなりのボリューム。

 

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テーマは"Future Emo"。00年代のエモから影響を受けたメロディーを多分に導入しながら、バッキングの近未来的な細やかなアレンジはハイパーポップ(僕もよく知らなかったジャンルですが、通常のポップミュージックに、過剰なまでの電子音やアヴァンギャルド要素をブレンドしたものらしい)としての側面も強くしている。これによって懐かしくも新しい、先進的ながら親しみやすい、従来のBMTHからはまた一つ異なる次元のサウンドを展開しています。

 

このバンドは本当に冒険心に溢れてるというか、固定観念に一切とらわれてないですよね。過去作のアルバムも、どれ一つとして同じような音に固まっていないというか、リリースを重ねるたびに絶えずスタイルを変え続けている。この縛られなさ、自由奔放さには毎度驚かされるばかりです。

 

そんな本作、結論から言うとメッチャクチャ気に入ってます。5月の配信リリースから今日に至るまで、それはもうずっとこればっかり聴いてます。昨年のNEX_FESTから高まったBMTH熱を、さらに加速させるかのごとく聴いてます。2024年アルバム聴いた回数ランキングをやったら、本作が1位になることはほぼ間違いないくらい。

 

先行でMVが公開されたM4「Top 10 staTues tHat CriEd bloOd」は、本作が掲げる"Future Emo"を最もわかりやすい形で体現した名曲。バックで派手な電子音が駆け巡りながら、音が作り出す未来の世界観を強固なものにしつつ、オリヴァー・サイクスによる激情の叫びが、単に無機質なエレクトロサウンドに陥らず、エモ・ポップパンク・オルタナティヴメタルとして、感情に訴えかける説得力を生み出している。

 

怪しげなヴォーカルパートとデジタルサウンドが彩りながら、モダンメタルコアとしてのモッシュパートとシンガロングがあまりにスリリングなM3「Kool-Aid」、UNDEROATHをゲストに迎え、モダンなポストハードコアとしての側面が色濃くなるM7「a bulleT w/ my namE On feat.Underoath」、ドラッグ中毒による苦しみを赤裸々に明かす歌詞と、それに相反するかのごとくポップに弾けるメロディーの対比が面白いM10「LosT」、ルーツとなるエクストリームミュージックの素養を感じさせながら、どこか宗教的で恐ろしいムードを描くM12「AmEN! feat.Lil Uzi Vert & Daryl Palumbo Of Glassjaw」あたりは、本作の特色をしっかり反映しつつ、わかりやすい即効性にも秀でた楽曲。

 

エナジーを発散する曲の他、M6「DArkSide」、M11「sTraNgeRs」のような、比較的ゆるやかなテンポで進む曲にも、その歌には心に琴線を掻きむしるエモーションに満ちている。こういった音楽をエモと呼ばずして何と言おう。深く暗く自問していくかのような歌詞が特徴のM9「n/A」のような小曲も良いスパイスになっている。

 

合間にインストを挟む構成とはいえ、決してコンパクトにまとまっているとは言えない尺ですし、痛快でわかりやすいエクストリームナンバーばかりでもないです。それなのに、様々なジャンルの音楽を恐れ知らずに貪欲に取り込んだ独自極まるサウンドの面白さ、喜怒哀楽を全部ぶち込んだ感情表現、曲通しの繋ぎや構成のバランスなどの要因により、まったくダレや冗長さを感じさせることなく聴き通せる魅力があります。

 

また、音楽的なところとは別の観点でいうと、本作はジャケットやブックレットなどをすべて含めたパッケージの面でも良くてですね。実際に手を取ってみた人ならわかると思うんですが、ロゴマークと共にワールドマップが記載されていたり、ブックレットの中身は、プレステのゲームキャラのような挿絵が盛り込まれていたりするんですよ。まるでゲームのパッケージそのものみたいに。

 

この感覚、どれだけの人に共感してもらえるかはわからないのですが、みなさん子供の頃に新しいゲームソフトを買ってもらった時、ソフトや説明書、アンケートハガキや注意書きの紙など、同梱されていたもの全部を、もとあった場所にしっかりと収納し直して、パッケージをじっくり眺めたりした経験ありません?

 

プレイした後、ソフトをわざわざゲーム機本体から抜いて、箱の中にカポっとはめこんで、きちんと元通りに収納した状態をじ〜っと観察しながら、「これ新しく買ったんだよな〜...グフフ🎵」と悦に浸ったりしませんでした?

 

そして、ゲームはせずに説明書を読み込むためだけに箱を開けて、しばし説明書熟読に没頭した後、またまた同じ場所に綺麗にしまって、またパッケージを眺めて...とかやりませんでしたかね?

 

本作のパッケージが持つ雰囲気というのは、そういった在りし日の感覚を久方ぶりに思い起こさせてくれるものでして。アルバムを聴きつつ、じっくりパッケージ本体も見ていたくなる気にさせるんですよね。「新しく自分の所有物が増えた、あの頃のワクワク感」、あれをまた味わえるという所も含めて、すごく好きなんですよ。単一の作品として。

 

ちなみに上記した行為は、マキシマム ザ ホルモンのヴォーカルであるマキシマムザ亮君が、ライヴDVDを発表した際のコラムで、全く同じようなことを書いていて、当時それを読んだ僕は「この人、俺とまったく同じことしてる!」と何だか無性に感動した記憶があります(笑)

 

内容の良さはもちろんのこと、個人的な感覚と結びつくパッケージ商品としての面白さ、ライヴで体感した感動と直結した思い入れの深さもあり、「隅々まで作品を味わいたい!」と心から思わせてくれる大切なアルバムになりました。

 

POST HUMANシリーズはPhase 2ということで、まだあと同コンセプトで2作品が作られるということ。気の早い話ではありますが、次はどんな作品を聴かせてくれるのか、まだまだ彼らに対する期待が収まることはないようです。

 

 

個人的に本作は

"モダンメタル、ポップパンク、はてはハイパーポップまで貪欲に取り込んだFuture Emo。外見も中身も全て含めて、パッケージ音楽としての面白さを追求した名盤"

という感じです。

 


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NEW HORIZON 『Conquerors』

  • 新たにスターヴォーカルを入れ替えてのフルアルバム
  • 疾走曲は超キラー、それ以外は速度控えめ
  • 実力派ヴォーカルと演奏で全曲A級の輝き

 

H.E.A.Tのキーボーディストのヨナ・ティーと、元ヴォーカルだったエリック・グロンウォールが中心となって生まれた、メロディックパワーメタルプロジェクトの2ndフルアルバム。

 

ただ、前作『Gate Of The Gods』で歌っていたエリックはすでにこのプロジェクトにはいなくて、本作のヴォーカルは、DYNAZTY・AMARANTHEのニルス・モーリンが担当しています。エリックがいなくなった理由はもちろん、本作発表後すぐにSKID ROWに加入したからですね。

 

なお、やはり白血病治療後の免疫力に難があるらしく、長期的に生活環境が変わり続けるツアー生活は厳しかったようで、現在エリックはSKID ROWからも脱退しています。今後はどうするんでしょうねえ...。ツアーバンドの参加はやはり難しいのかな。

 

さて、それはそうと本作について。エリックの次はニルスと、ヴォーカルにスターのオーラを放つ超実力派をキープすることに成功しているわけで、好みこそあれどヴォーカルチェンジによるクオリティーの低下は無いと言っていいでしょう。

 

メロディックパワーメタルって、一部の人気バンドを除けば何となく野暮ったかったり、ダサかったり、イモ臭かったりといったイメージがつきがちな印象ですが、ニルスの強力ヴォーカルが前面に出ていることに加え、演奏も破綻のないしっかりとしたものになっているので、B級臭さは全く無し!ジャケ以外は。

 

やはり華のあるヴォーカルの存在っていうのは、音楽のクオリティーを高めるのに必要不可欠なものなんだと思わされますね。彼の熱唱により、普通のメロディックメタルから一段階スケールアップした印象を受けるのは間違いないと思います。

 

そして楽曲としては何と言っても、オープニングを飾るM1「Against The Odds」の素晴らしさ!典型的なメロパワのマナーに則りつつ、勇ましいサビメロをニルスの絶唱が飾り、どこまでも大きく膨れあがるスケール感を演出した、本作随一のキラーチューンです!

 

この曲以外は、1曲通して疾走するようなスピードチューンが無いのが、疾走大好きっ子(こんなブログ見てるくらいだからみんなもそうでしょ?)としては少々物足りなくはある。ただ、それ以降の楽曲もメロディックメタルとして聴き応えは充分にある。

 

疾走する曲から続いて、アップテンポな展開の中にノリの良い正統派リフが刻まれるという、パワーメタルの手本のような流れで魅せるM2「Kings Of Kings」に、馬力強めのリフで力押ししながら、流麗な速弾きギターソロも聴かせるM6「Fallout War」、ニルスと同じくAMARAMTHEのヴォーカルのエリゼ・リードを迎えたバラードM8「Before The Dawn」などなど、どんな曲においても安定感抜群のクオリティー

 

中盤のM5「Apollo(ジャケットの左にあるのはコレだろうね)は、6分以上あり本作の中では長めながら、キラキラしたキーボードと緊迫感のあるヴォーカルで進みつつ、スペースシャトル打ち上げのカウントダウンを挟んで、疾走インストパートへと突入してゆく展開が特徴的で、飽きの来ない充実の楽曲に仕上がっています。

 

歌がうまくて華があり、演奏は申し分無し、楽曲はどれも非常にキャッチーと、メロディックメタルとしての完成度の高さはさすが。ヨナ・ティーはH.E.A.Tのようなハードロックだけでなく、正統的なヘヴィメタルのクリエイターとしても優れた手腕を持っていることが、100%証明できる作品と言えましょう。

 

もちろん本業はH.E.A.Tでしょうし、ニルス・モーリンもDYNAZTYとAMARANTHEの二足の草鞋を履いてるだけに、このプロジェクトが精力的に活動するというのは考えにくいですが、ハードロックよりヘヴィメタルが好きな者としては、引き続きこっちの楽曲制作もやってね、という気持ちを持ってます。

 

 

個人的に本作は

"全曲キャッチーに練られた上質のメロディックメタル。スピードは控えめながら、一流ヴォーカルと演奏により、耳を引きつけるフックは充分"

という感じです。

 


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The Black Dahlia Murder 『Servitude』

  • ヴォーカルの死を乗り越えて復活
  • ギターによる悲哀のメロディーは過去作以上に
  • 攻撃性やシリアスな緊張感も変わらず存在

 

アメリカを代表するメロディックデスメタルバンドといえる、The Black Dahlia Murder。ヴォーカルであるトレヴァー・スターナドが、2022年に逝去したことは、普段メタル系の情報を集めている人ならば周知の通り。

 

長きに渡りバンドのフロントを務めていたメンバーの死別は、他メンバーにとって大きな喪失感を与えたことは想像に難くないです。彼の凶悪なシャウトも、The Black Dahlia Murderというバンドの個性に大きく貢献していただけに、いちリスナーである僕ですらショックでしたから。

 

しかし、バンドは姿を消すことはなく、中心人物でありギタリストだったブライアン・エクスバックが専任のヴォーカルにチェンジするという、大きな変遷を経て、記念すべき10作目となるフルアルバムを発表しました。

 

まず何と言っても、トレヴァーの意志を継ぎ、バンドのフロントマンの役割を担うことを決心したブライアンに最大級のリスペクトを送りたいですね。これまでずっと続けてきたギタリストとしてのパフォーマンスを捨て、バンドの看板として活動していくという決心、並々ならぬ決意の結果だと思います。

 

本作を聴く限り、やはりトレヴァーほどの凶悪な攻撃性を発揮するとまではいかない感じですが、噛み付くようなアグレッションは充分にデスメタルヴォーカルとして成立しており、音楽のクオリティーを目立って低下させるようなことはない。

 

そして音楽性としても、これまで彼らが培ってきたものから大きく変わっていません。凄まじい爆走感に、どこかヨーロピアンテイストを感じさせるメロウなギターのコンビネーションは、毎度のことながら非常に強力。充分以上エクストリームなのに、エモーショナルな旋律を好むツボを的確に刺激してくれます。

 

むしろアレだな。メンバーの死という事実に直面したからなのか、従来作よりもメロディックな面がより強力になっていますね。ギターが艶かしく絡み合うメロディーの哀愁なんて、さらに磨きがかかっているとすら思えます。アグレッシヴでヒリヒリとした緊張感はそのままに、メロディアスさにはしっかりと泣ける。

 

M3「Aftermath」やタイトルトラックのM7「Servitude」は、爆速で駆け抜けていくドラムがブラダリらしい激烈なサウンドを演出しつつ、あまりに劇的な叙情リードギターソロが炸裂するナンバーで、超エクストリームと超メロディックの合体ぶりが凄まじい。

 

ラストのM10「Utopia Black」のアウトロにて、さざ波の音と重なる、非常にもの悲しく裏寂しい旋律は、黄泉の国へと行ってしまったトレヴァーへの弔いの気持ちが込められてるのかな...なんてことを妄想してしまったり。

 

前作『Verminous』のライナーノーツにて、ブライアンは「デスメタルは地下に蠢く害獣と同じで、根絶することはない」と話していたのが印象に残っています。

 

フロントマンのトレヴァーはすでにいなくなってしまったけれど、こうして完全復活を遂げ、素晴らしい内容のアルバムをリリースした彼らの存在は、その言葉の説得力を裏付けています。デスメタルが死滅することはないのだ。

 

 

個人的に本作は

"過去作と方向性は変わらず、悲哀と醜悪さに満ちたデスメタルを貫く。アグレッシヴさは多少落ち着いた感はあるものの、悲しいメロディアスな側面を最大限発揮"

という感じです。

 


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POWERWOLF 『Wake Up The Wicked』

  • 従来作と何も変わらぬ世界観(前回も同じこと書いたね)
  • 短い中に詰まった豪華・重厚なサウンド
  • アルバムを代表する疾走キラーの存在がやっぱデカい

 

母国ドイツでは何作もチャートの上位に送り込むほどの人気を誇る、メロディックパワーメタルバンド・POWERWOLFの9thフルアルバム。

 

こんな特異な見た目に、独自の世界観全開なバンドがチャート上位に君臨するとは、KREATORが1位になった時も思ったけど、ドイツの音楽シーンとはすごいもんですね。やはりメタル大国は違うということか。

 

これまで、煌びやかなオルガンと壮麗なクワイアを用いて、メンバーのルックスやアルバムジャケットに違わない、宗教的な劇的パワーメタルを展開してきた彼ら。本作においてもその方向性は一切変わることはなく、これまで通りのPOWERWOLF流のメタルを貫き通しています。

 

商業的に充分な成功をしたので、もうスタイルを変える必要はないと踏んだんでしょうか。そのスタイルの変わらなさたるや凄まじく、従来作と本作の曲を何曲か入れ替えても、正直僕は気付けないくらい。

 

怪しくも絢爛な装飾を施しつつ、キャッチーなギターフレーズが聴きやすさを演出し、"アーヴェーマーリーアーッ!"と叫ぶヴォーカルがやたら目立つM6「Viva Vulgata」に、堂々とタイトルを叫ぶサビが印象的なタイトルトラックM7「Wake Up The Wicked」の流れなんか、まさに"THE POWERWOLF"って感じです。

 

安定感抜群で楽曲のクオリティーも目立って落ちていないという点はさすがですが、やはりどうしてもマンネリ感と無縁ではいられないのも事実。少々インパクトという意味では薄れてきてしまってはいるかな。これは前作から既に感じていたことではありますが。

 

前作『Call Of The Wild』の感想文を読み返してみたのですが、ぶっちゃけ本作を聴いて抱いた感想とほぼ変わらないこと書いてあったよ(笑) 疾走するパートが少ない中にあっても重厚さやキャッチーさは落とさず、収録時間が短いこともあってダレを覚えないまとまりがあるなど、特徴は前作とまったくと言っていいほど共通してます。

 

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過去作と異なる点といえば、これまではアルバムタイトルトラックが最大のキラーチューンだったのですが、本作はその例ではないところ。

 

M9「Thunderpriest」が本作中最もストレートな突進力を持った曲で、イントロの壮大なギターから、爆発したかのように疾走!その勢いを殺すことなく、怒涛のサビへと突入する様が非常にカッコいいメロパワです!やはりこういう即効性抜群の曲をちゃんと入れてくれるのが、このバンド最大の強みですね。サンダープリーストってタイトルも最高にメタルでイイじゃねえか。

 

楽曲の方向性も、音作りも、抜けたキラーチューンの存在も、従来から良くも悪くも変わらない、安心安定のPOWERWOLFクオリティーでした。彼らのファンなら間違いない出来だし、過去作にハマってないなら本作もピンとこないかも。まったくって言っていいほど雰囲気同じだし。

 

 

個人的に本作は

"宗教的世界観とオルガンを用いた劇的パワーメタルに一切変化無し。随一のキラーチューンを収録した構成も過去と同一"

という感じです。

 


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IRON MAIDEN 『Iron Maiden』

  • NWOBHMの代表作
  • ドラマチックな展開、目立ちまくるベースは既にこの頃から
  • 仕方ないけど音はだいぶ古めかしいね

 

先日初のライヴ参加に成功した、ヘヴィメタルというジャンルの象徴たる存在・IRON MAIDEN。このタイミングにて、彼らの過去作について取り上げてみようかと思いました。

 

Judas Priestの『British Steel』と同時期に発表された(偶然だとしたらなかなか素敵だ)、彼らの記念すべき1stフルアルバム。NWOBHMというムーブメントの火付け役となり、その後の80年代におけるヘヴィメタル勃興の嚆矢となった歴史的作品ですね。

 

ヘヴィメタルという音楽を語る上で無くてはならないアルバムですが、そういった歴史的事実を考えずに向き合ったら、さすがに今の感覚だとかなり古臭く、隙間の多い音作りである印象は拭えません。まあ40年以上前にレコーディングされた音源なんだから当たり前なんだけど。

 

その音作りと併せて、ヴォーカルは今のブルース・ディッキンソンではなく、パンクロックのような吐き捨てタイプのポール・ディアノであることもあり、全体通してだいぶ粗めのHR/HM

 

しかし、そんな荒削り感満載の出来の中にも、テンポアップした状態で織り込まれるメロディアスなギターソロの手腕、プログレッシヴロックから影響を受けたと思しき、勢いだけではないストップ&ゴーを取り込んだ曲展開、シンプルに気分を高揚させるヴォーカルワーク、そして何と言ってもやたらバキバキと目立ち、曲を引っ張る中心となっているスティーヴ・ハリスのベースと、この時点で後々のメイデンサウンドの雛型は出来ていると言えます。

 

まずオープニングを飾るM1「Prowler」で、いきなり引き込んでくれるのが良いですね!何を隠そう(別に隠してないけど)僕が初めて聴いたIRON MAIDENの曲が、『この曲を聴け!』(懐かしっ)にて名曲として紹介されていた「Prowler」だったんですよ。「なんか軽くて古臭いけど、キャッチーなサビとギターソロがカッコいいぞ!?」と強いインパクトを受けまして。

 

本作を買ったのも、その「Prowler」のカッコよさが耳に残ったのがきっかけだったんですよね。いや〜〜懐かしいなぁ。キャッチーなサビの良さはもちろん、中盤にて急激にテンポが上がりギターソロへと突入する展開が非常にツボです。

 

現在のプログレッシヴな曲作りの萌芽がすでに感じられるM3「Remember Tomorrow」やM8「Charlotte The Harlot」といった曲も、短い時間の中でドラマチックな展開とメロディーを持っているし(今もこれをやってくれ)、各楽器がそれぞれ跳ねるように躍動し、速弾きギターも大きな聴きどころとなるインストM6「Transylvania」もカッコいいナンバーです。

 

本作で特に名曲とされているのは、7分を超える大作のM5「Phantom Of The Opera」ですが、個人的には同じ大作でも「Hallowed Be Thy Name」「Fear Of The Dark」といった楽曲と比べて、さほど突き抜けたものは感じなかったな。ポールのパンキッシュなヴォーカルと、まだまだ粗のある音作りだから、ストレートに走る曲の方が魅力的に聴こえるのかもしれない。

 

今の耳で聴くと、やっぱりどうしてもチープさだったり、古めかしい音作りに感じてしまうのは否めませんが、すでにそこかしこから3rdアルバム以降のドラマチックなメイデンの姿が見え隠れしていることがわかりますね。1980年の段階でこういったポテンシャルを感じさせるバンドなだけに、後々の成功は必然だったんだろうな。

 

 

個人的に本作は

"音作りや音質は少々隙間が多く古めで、パンキッシュな勢い重視のデビュー作。それでも、ドラマチックでキャッチーなメイデン流ヘヴィメタルの原型が感じ取れる"

という感じです。

 


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9/26 IRON MAIDEN / THE FUTURE PAST WORLD TOUR 2024 at 東京ガーデンシアター

4年越し、ついにこの日がきました。

 

思えば2019年、翌年のIRON MAIDENのLEAGACY OF THE BEAST TOUR来日公演のチケットを獲得して、とうとうヘヴィメタル界の重鎮のライヴが観られると、期待に胸を膨らませていたものです。

 

メタルのライヴは結構な数に行くことができた僕ですが、IRON MAIDENはこれが初だったんですよ。数々の名曲をとうとう生で聴くことができると思っていたのです。

 

しかし、皆さんご存知の通り、2020年は忌まわしきパンデミックの影響により、洋楽アーティストの来日は軒並み中止。次に観られるのはいつになることやら...非常に残念に思ったものでした。

 

あれから4年ですよ。初の生メイデンの日がやってきたんです。東京公演はド平日のため、有給を取ってフル充電で出動。大学時代に原宿で買ったメイデンTシャツと共に、有明へと降り立ちました。

 

開演まで多少時間の余裕があったので、会場となる東京ガーデンシアターが併設されている、有明ガーデンをプラプラして時間を潰す。すでにメタルヘッズと思しき人たちがいたるところにいて、店員さん達は「普段全然見ない客層だけど、何モンだこいつら...?」と思ってたかもね(笑)

 

しかも店内BGMがJudas Priestの『Invincible Shield』でしたからね。明らかに今日の客層を狙ったもので、普段は絶対流れていないんだろうな。

 

開演時間が近くなってから会場へと移動。予想はしてましたが、40〜50代と思しきオジサンオバサンが大半で、平均年齢は非常に高そう。中には完全におばあちゃんと言える見た目の人もいて、すでに30歳を迎えた僕ですら最若手くらいなのではと思うほど。たま〜〜にチラホラ僕より下かな...?と思うような見た目の人もいましたけど。

 

こういうトラディショナルメタルのファン層は、どんどん高齢化の一途を辿るんだろうな...。メタルコア系のライヴはまだまだ血気盛んな若い世代がたくさんいるけどな...と思いつつ、自分の席となる4階バルコニーへ。

 

う〜〜〜ん視界はイマイチかな...

 

上の階の床が頭上にある関係で、視界上部がかなり遮られている。まあ一応ステージ全景が見えるようにはなっているけど。

 

早い段階でチケット先行当てたはずなんだけど、やっぱり良い席はクリエイティブマン会員の先行とか、関係者からのコネでもらったチケットとかで埋まっちゃって、僕のような一般客はこういう最後方席しか残っていないのか...とちょっと微妙な気分に。

 

まあ腐っててもしかたないし、良い音響の会場で観られるだけありがたいと思い直し(以前Limp Bizkitのライヴで来た時、かなりの音響の良さで驚きました)、開演までのんびりと待つことに。

 

そして開演前のBGMがUFOの「Doctor Doctor」になると、いよいよライヴの幕開けが近いと確信が生まれ、自然と手拍子が湧き上がる。

 

その後完全に会場が暗転。ステージセットにかかっていた黒い幕が剥がされていき(スタッフが人力で剥がしてた)ドラムセットが顕になってから、非常に聴き覚えのあるメロディーが流れると、大きな歓声が起こりました。これは「Caught Somewhere In Time」だ。

 

ツアータイトルが未来と過去という関係か、近未来的なイメージを押し出した『Somewhere In Time』からの選曲が多いのかなと思いつつ、当然名盤のオープニングチューンなので、グッと意識がステージに引き込まれる。

 

他のメンバーから少し遅れて飛び出してきたブルース・ディッキンソンは、白い長髪をなびかせ、マイクスタンドを回しながらステージ中央を動き回る。あんまりこの人に長髪のイメージなかったので、最初に姿を見た時は「え?あれがブルース?」と意外に思いました。

 

そして圧巻だったのがそのヴォーカルで、CD音源そのままはさすがに言い過ぎかもしれませんが、まったく音源のイメージを損ねない伸びやかな歌声を披露している。歌だけでなく、ステージを端から端まで移動し(バタバタと走る様は、失礼ながら「猿っぽい」と思ってしまった)、両手を広げてオーディエンスを煽っていく姿は、とても66歳のそれとは思えない。どんだけ元気あるんだ。

 

他メンバーも、ブルースほどではないにしろ、意外なほどにパフォーマンスがエネルギッシュなのに驚かされましたね。ただ演奏に徹するだけではなく、メンバーみんな結構動くんですよ。ドラムのニコ・マクブレインはさすがに70歳越え(!)のためか、ある程度落ち着いたプレイでしたけど。

 

ガニ股でベースのヘッドを銃のように構えるスティーヴ・ハリス、頭上にギターを掲げながら弾くヤニック・ガーズ、二人並び立って速弾きのソロを披露するエイドリアン・スミスとデイヴ・マーレイと、今まで写真でしか見たことがなかった光景を、実際に目の当たりにできた感動が押し寄せる。

 

この時すでに、バンドのライヴを観ているというよりは、テレビや雑誌でしか見たことない大物芸能人を生で見たときのような「すごい...実在するんだ!」という感覚でした。ワーッ!ワーッ!本物だーっ!とミーハー心全開だったよ。

 

あと実際のライヴを観て思ったのは、スティーヴのベースが思ったより普通というか、ちゃんとベースらしいベースラインを刻んでるんだなと。やたらアタック音が目立つ個性を知っているだけに、ライヴでもパッキパキのエグいプレイをするのかと思ってたので、以外とフツーだなって。

 

それはステージセットについてもそうで、彼らのライヴって、かなり大掛かりな仕掛けを施したステージが見どころ、みたいなイメージでしたが、そこまで豪華というほどではなかった。会場規模だったり、日本の消防法だったり、いろんな関係があるのかも。

 

とはいえ、やはりただ大型のバックドロップとスクリーンだけで終わるはずはなく、2曲目の「Stranger In A Strange Land」にて、身長3mはあろうかというエディが登場。テンガロンハットに銃を持った状態で出てきましたが、その時はちょっとステージセットによっかかってゆっくりしただけで、そそくさと退場し「何しに来たのアイツ?」みたいな雰囲気になっちゃってた。

 

セットリストについては、前述した『Somewhere In Time』と最新作『Senjutsu』をメインとし、ちょいちょい過去曲を交えてくる感じ。告白すると『Senjutsu』に関してはあんまり聴き返しておらず、今になって印象に残っている曲とかもあんまりないんですが、大会場のライヴで聴いてみるとなかなかカッコいいHR/HMとして聴けるな。これがライヴマジックというヤツですかな。

 

ただ、やっぱり「Death Of The Celts」はちょっと長すぎて、似たようなフレーズが続く間奏パートは少々退屈だったような...。僕の二つ隣の屈強な外国人客も、この曲の時には椅子の背もたれにもたれかかって聴いてたし(僕も同じような体勢でした)

 

しかし、そんな微妙な心境を吹っ飛ばすかのようにエンジンがかかったのは、「Can I Play With Madness」。やはり黄金期の彼らの楽曲って、非常にキャッチーで耳を引くんですよね。

 

僕の隣のおっさんも、まるでオモチャを与えられた子供のように拳を振り上げてシンガロングをしていました。はしゃぐのはいいけど、カバンはおろしてくれ。右手にガシガシ当たっているぞ。

 

前半ちょろっと出てきただけのエディも、ここにきて再登場。今度は何もせず退却なんでことはせず、ステージ右端にセットされた銃火器を操作するブルースと、銃撃戦をする一幕もありました。ただ両者の距離が若干遠く、ビミョ〜〜にお互いの銃弾(火花がビュッと出てくるような感じ)は命中していなかったけどね。屋内の会場だけに派手な爆発とかはできませんが、見せ物としては面白い。

 

この名曲連打の中で、僕が一番感極まってしまったのは、「Alexander The Great」が終了した後。背後の大きなバックドロップが、生い茂る木々を描いたものに変わった瞬間、「もしかして...!」と期待感が膨らみましたが、その期待に完璧に応えるかのようなイントロが鳴り響く。

 

そう、かつてのIRON MAIDENが得意としていた大作の中でも、屈指のドラマチックさとスケール感を誇る超名曲「Fear Of The Dark」。この曲を聴きたいがためにここへ来たといっても過言ではない僕、全神経を集中してステージ上の景色を目に収めることに。

 

最初のクリーントーンのギターをオーディエンスが大合唱し、アップテンポで展開する中でブルースの堂々たる歌唱が映える。スケールで圧倒させるだけでなく、リズミカルな歌でライヴの盛り上がりも完備され、劇的なサビにて興奮は沸点へ!

いや〜〜〜〜〜カッコいい!!

 

この後アンコール前のラストである「Iron Maiden」が開始されたのですが、正直「Fear Of The Dark」で描かれた世界観が圧倒的に素晴らしく、「もうちょっとこの余韻に浸っていたいのに...」という気持ちが芽生えてしまった(もちろん「Iron Maiden」も良い曲なんですけどね)

 

その後のアンコールは、「Hell On Earth」という失礼ながら少々地味な曲で開始されるも、その後の「The Trooper」「Wasted Years」という流れはまさに鉄板。「The Trooper」のサビは、本日最大音量とも言えるシンガロングが、会場中に響き渡りました。もちろん僕もこの日一番の大声で共に叫びましたよ。

 

「Wasted Years」では、甲冑姿になったエディがステージど真ん中で刀を振り回し、同じくギターを刀のように見立てたヤニックと、一戦交えるかのように睨み合いをきかす。まあ戦うというよりかは、ヤニックがエディの股の間をすり抜けたりと、楽しそうに戯れているような感じだったけど。

 

ライヴのラストということで、メンバー各々がオーディエンスに対して最後のアピールをしているのですが、僕の視線はヤニックとエディのやりとりに目を奪われていて、最後の最後であまりステージ全体を観る余裕は生まれませんでした。ごめんよ他のみんな。

 

 

結構短い時間で終わってしまったな、という印象だったのですが、実際は2時間たっぷり演奏していたライヴ。冗長さを感じさせなかったのは、やはり楽曲の構成が優れているのと、何よりパフォーマンスが予想以上にアグレッシヴで、退屈さをさほど感じさせなかったのが大きいでしょうね。

 

本当にメンバーみんな還暦すぎなのかと思うほど、ロックバンドとしての躍動感に満ち溢れていたのが素晴らしかったですね。(比べるようで申し訳ないですが)Judas Priestロブ・ハルフォードとかは、だいぶヨロッと来ている印象があるのに、彼らはまだまだエナジー溢れる姿でした。特にブルースなんかあの歳であれだけ動けるなんて。

 

セットリスト的にはもう少し聴きたい曲があったものの、とにかく「Fear Of The Dark」の圧倒的感動で納得させられた感じです。

 

メンバーの年齢的に、あと何回来日公演ができるのかはわからないだけに、コロナ禍を経て、この日観ることができて良かったです。ヘヴィメタルファンとして、生ける伝説・重鎮の姿をこの目に焼き付けられました。

 

Judas Priest・IRON MAIDENときて、あとはMETALLICAのライヴが観られれば申し分ないのですが、彼らは果たして日本に来てくれるんですかね〜...。来年ツアーするらしいけど。