ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

Sable Hills 『DUALITY』

 

新進気鋭の若手バンドが躍動している、国産メタルコアシーン。その中でも筆頭とも言えるほどに存在感を放つ頼もしきバンド・Sable Hillsの、前作『EMBERS』より3年ぶりとなる新作です。

 

まあ僕は前作をしっかりと聴いたのが割と最近なので、久しぶり感は全然無いのですが、以前より彼らに期待を寄せていた方々からすると、かなり期待値を高くしていたのではないでしょうか。

 

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バンドのスローガン(って言っていいのかな?)である"若者にはメタルを、年長者にはメタルコアを証明するサウンド"、そして以前THOUSAND EYESとのツーマンでのMCで言っていた"メロディックデスメタルから強い影響を受けたメタルコア"という言葉は、まさに彼らの音楽性をズバリ指し示すものだよなあ〜と思っていました。そして本作においても、その基本的な方向性にブレはありません。

 

メロデスライクなリードギターが唸るパートが多く、メタルコアとしてのアグレッションたっぷりのリフワーク、シャウト主体でありながら正統的なメタルの要素も強く感じさせる音。前作で提示してみせたスタイルを、正統進化させた潔いメタルアルバムに仕上がっています。

 

ついでに音とは関係ないところでいうと、正規メンバーはみんなメタルバンドらしいロン毛にこだわっている点も含めて、日本の若手バンドとしては珍しいくらいに、スタイルとしてのメタルらしさにこだわっていることが伺えます。頼もしい。

 

サビによるクリーンヴォーカルの質感、メロディーについては若干今風なキャッチーさがあるところが若手バンドらしいところかも。歌メロのフックはすごく強いって訳ではないのですが、シャウトオンリーではなく、メロディアスな部分が多く含まれることによって一本調子感が減退し、一曲の中でも良い塩梅で起伏が設けられていますね。

 

オープニングのM1「THE ENVY」や、Graupel・Earthists.とのスプリットEPにも収録されているM4「CRISIS」、先行シングルとなったM8「MESSIAH」といった曲は、メロウなリードギターと、メタリックなリフを武器とし、サビではメロディックに決める、Sable Hillsの王道とも言えるナンバー。こういった曲の完成度はやはり高い。

 

本作中特にヘヴィな質感の強いリフが冴わたるM6「SNAKE IN THE GRASS」に、ヘヴィ寄りの楽曲かと思ったら、一転してメロメロなリードギターが唸りを上げるM7「GLOOM(モダンな曲を作ろうとしたら、間違えてサビが激クサになっちゃったらしい)といった曲も存在感ありますね。

 

ラストを飾るM10「THE ETERNAL」のリードギターが、本作中一番わかりやすいキャッチーさに満ちていていいですね。漢のメタルコア路線はしっかりキープしながら、"爽やか"なんて形容すら当てはまってしまいそうな、爽快感あるメロウさが良い!

 

前作収録の「EMBERS」のような、頭ひとつ抜きん出たキラーチューンこそないけれど、全曲非常に安定したクオリティーを保った、良質なメロディックメタルコアがギッシリ詰まった快作。

 

しかし、前回記事で書いたEarthists.もそうですが、新世代のメタルコアバンドが良作を出してきて、対バンによるライヴシーンの盛り上がりもどんどん可視化されてきている現在。バンドマンには厳しいはずの昨今にも関わらず、国産メタルコアには「希望」なんて言葉すら似合いそうで、ラウドミュージックファンとしては楽しみが続きますね。

 

 

個人的に本作は

"前作で提示したメロディックメタルコア路線から正統進化。サビのクリーンの比重を増やしつつ、ヘヴィ&メロディックなギターの強みは健在"

という感じです。

 


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Earthists. 『Have a Good Cult』

  • 4年ぶり、4人体制初のフルアルバム
  • 過去作から類を見ないほど歌メロが充実
  • シャウトとヘヴィサウンドの攻撃性は健在

 

実にフィジカルリリースは4年ぶり。国産プログレッシヴ・メタルコアバンドEarthists.の3rdフルアルバム。

 

このバンドについては以前ブログでも書いた通り、個人的にちょっとしたつながりがある方が組んだバンドということで、アルバムデビュー前から動向を見ていたものです。

 

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しかし、残念ながらこのバンドを知るきっかけとなったYUTAさんは、2019年にバンドを脱退。それ以降は4人体制となってバンドを存続させ、デジタルによるシングルリリースとライヴ活動を主軸に展開していきました。

 

YUTAさんきっかけで応援してたバンドではあるものの、その人が抜けたからバイバイというのはなんだか薄情な気がしていたので、4人になってからもライヴを観に行く機会があったりと、何だかんだチェックはしており、ここにきてようやくのフルアルバムリリース。4年って、他のバンドもそのくらいリリース間隔が開くことはあると思うのですが、このバンドの場合は何だか長く感じたものです。

 

さて、そんな新作ですが、リリース前に先行シングルとして収録曲がちょくちょく小出しにされており、それらを聴いていた時点で、結構大きな期待感を寄せていました。

 

というのも、今回の楽曲は過去二作『DREAMSCAPE』『LIFEBINDER』と比べて、かなりメロディーが充実していると感じたんですね。先行配信された楽曲から、それが滲み出ていました。

 

ピアノやアンビエントっぽい浮遊感あるサウンドでメロウさを演出するのは過去作でもやっていたのですが、本作においては明らかに歌メロへの比重が大きくなっている。どこがサビに当たるのかハッキリとわかるような、盛り上がりのポイントがしっかりとヴォーカルによって演出されています。

 

あからさまなDjentっぽさ、モダンプログレメタルとしての複雑さは大きく減退していますね。よりオーソドックスなモダン・メタルコア/ポストハードコアへと接近した印象。

 

この方向性は、前作までの無機質寄り、ヘヴィさ重視プログレメタルコア路線を気に入っていた人にとっては、どう映るんでしょうかね?クリーンヴォーカルで歌われるパートも劇的に増えているので、「メロい路線に進みやがって!」なんて思っていたりするんでしょうか?

 

それと合わせて、ビル・エヴァンス上原ひろみさんのピアノから影響を受けたというYUTAさんが脱退した影響なのか、「Winterfell」や「FLUX」あたりにあった独自の空気感は無く、従来の個性はやや減退したような印象は確かにあります。

 

しかし抜群に聴きやすく、わかりやすくなった歌の存在感(クリーンもシャウトも説得力を増したヴォーカルの影響も大きい)は、これまでのアルバムになかった強み。それに狂気的なシャウトとヘヴィな演奏にはブレが無いため、「軟弱になった」「ヒヨッた」などという印象は全くない。普遍的なメロディックメタルコアとしての魅力をも付加した今のEarthists.の音楽性は、少なくとも僕は全力をもって肯定したい所存です。

 

オープニングトラックであるM1「Yours」を聴いた段階で、これまでの作品とは一味違うことがすぐわかりました。跳ね回るようなリズム感に、Earthists.らしいモダンさと透明感のバランス、圧倒的に歌心を増したヴォーカルパフォーマンスが映える1曲。本作の路線をわかりやすく象徴しています。

 

それに続くやたらポップで耳に馴染みやすいピアノの旋律、シャウトを用いながらもどキャッチーなメロに、勢い付いたバスドラ連打が特徴的なM2「Lost Grace」、よりエモコア的な爽やかさのあるメロディーがフックになったM3「Cure(この曲が一番好きかも)と来た段階で、本作の充実ぶりを確信しました。

 

Graupel、Sable Hills、Promptsという、現代の国産メタルコアシーンの若手代表格バンドから、フロントマンが一堂に介したM4「Skywalker」や、Djent直系のモダンなサウンドで攻め立てるナンバーとは一線を画する、完全にヴォーカル指向性を強めたモダン・エモコアM6「In Remnant (You just tell me now)」なども印象的な楽曲ですね。ちなみにM6はヴォーカルのYuiさんイチオシの曲らしい。

 

 

こんな感じで、とにかく本作は過去作とは別レベルで、メロディアスな方面への進化が素晴らしい1枚。メロディー重視のリスナーとしては、エモ的な激情をしっかり溶け込ませた本作は、3枚のフルアルバムの中で一番印象が良いです。購入してからガンガンリピートしてます。

 

あえてこの路線で気になる点を挙げるとするなら、Aメロにあたる部分ではヘヴィさを排したサウンドで、ヴォーカルもクリーンで淡々とし、そこからヘヴィなバンドサウンドを導入、そしてメロウなヴォーカルラインを持ったサビへ...というように、やや展開が似通った楽曲が多く感じられるところかな?

 

ただそれは、言ってしまえばスタイルの確立みたいなもので、実際このパターンでフックに満ちた楽曲を多数生み出せているのも事実。雑多になればいいってもんでもないし、マイナスにはならないはず。これが現在のEarthists.の黄金パターンなのかも。

 

 

個人的に本作は

"圧倒的にメロディーの要素を増強させたモダン・エモメタルコア。歌による叙情性は間違いなく過去イチ"

という感じです。

 


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CRISIX 『Full HD』

 

三作続けてスラッシュメタルの新作について取り上げます。

 

2019年のJAPANESE ASSAULT FESTでのライヴが素晴らしかった、スペイン産スラッシャー・CRISIXの5thフルアルバム。

 

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前回のDESTRUCTIONと似たようなこと書きますが、「これぞスラッシュメタルだ!」と言いたくなるほどピュアなもの。デスヴォイスばりに歪ませたヒステリックなシャウトに、切れ味抜群の研ぎ澄まされたリフに次ぐリフ。大半が疾走チューンで占められた潔いアルバム構成は、スラッシュメタルの王道をひた走るもの。

 

ただ本作は(本作に限らず彼らのスタイル全般に言えることかもしれませんが)、DESTRUCTIONで感じられたメタルらしい邪悪さ、ダーティーなムードは薄めで、ANTHRAXやGAMA BOMBあたりに通じる、溌剌としたイキの良さ、ハイエナジーっぷりが際立つ。

 

スラッシュメタルが含む成分のうち、パンク・ハードコアの割合が高くなっているのも特徴で、パンク的なシンガロングがふんだんに用いられ、ハードコアらしいアグレッション重視の作風が一貫している。ベースがバキバキとヘヴィに歪んでいる点も、その印象を強めている感じですね。

 

これらのことから、メタルらしいヘッドバンギングよりも、パンクらしいモッシュ、サークル、クラウドサーフといったノリの方が似合うような気がします。とにかく全編にわたってヤンチャなアグレッションがすごい。聴いてて力入ります。

 

そういった印象はバンド側も自覚的なのか、何せ収録されている曲名にも"Wolrd Needs Mosh"なんてワードがあしらわれているし、タイトルトラックM3「Full HD」の歌詞なんかは、完全にパンク的で痛快。

 

さらにM9「W.N.M. United」の歌詞なんか凄いですよ。

 

法律を制定する連中

テレビに出てる脳たりんども

店にいる貴婦人たち

ヤツらは今 この世界に何が必要かを知る

 

それはモッシュ

それはモッシュ

すごいモッシュ

 

今 この世界に必要なものはモッシュ

 

最っっっっっっっっ高

 

なかなか難しいご時世ではありますが、いずれは是非とも血の気の多いスラッシャーの皆さんと、この曲を爆音でかけてモッシュの波を作りたいもんです。

 

さらにさらに、M9「Shōnen Fist」は、彼らが愛してやまない日本のアニメ・マンガをモチーフにしたワードや、日本語によるシンガロングがわんさか詰め込まれた曲で、日本人としては反応しないわけにはいかない。

 

"か〜め〜は〜め〜波ーーーーっ!!"のインパクトはもちろんながら、"やれやれだぜ" "霊丸" "ペガサス流星拳"など、所々にクスリとできるフレーズが盛り込まれ(普通に聴いていたらなかなか気づきにくいかも)、"イイカゲンニシロ! フザケンジャネエヨ!キサマ!"は共に叫びたくなること請け合い。"獅子咆哮弾"なんて超久々に聞いたよ(笑)

 

そんなすんばらしい歌詞を持つ楽曲を収録した本作、楽曲面においては上記した通り溌剌したエナジー大爆発のスラッシュメタルで、スラッシャーならば有無を言わさずに満足させられる楽曲の宝庫。これぞというキラーチューンは不在ながら、一本芯の通った、ピュアスラッシュを最初から最後まで堪能できます。

 

個人的には「Johnny B. Goode」をオマージュしたと思しきフレーズが登場するM7「John Was Born For Metal」から、前述のM8、M9と続く流れが一番のハイライトかな。

 

しかし今年はKREATORとDESTRUCTIONに、TYMOなんて若手有望株も日本デビュー、さらにはこの後MEGADETHの新作も出るわけですよね?2022年はスラッシュメタルファン歓喜の年になるのかも?

 

 

個人的に本作は

"ダークな要素を削ぎ、ハードコア的な爆発力を重視したイキの良さ満載のスラッシュ。アツい歌詞と合わせてモッシュ誘発"

という感じです。

 


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DESTRUCTION 『Diabolical』

 

KREATORの新作について書いたのだから、やはり同年に発表された、同じくジャーマンスラッシュの代表格についても書かなくちゃ、と思い立って本作の感想を書きます。

 

KREATOR・SODOMと共に、ジャーマンスラッシュトリオの一角として、40年近く活動してきている大ベテラン、DESTRUCTIONの新作です。

 

実を言うと僕はこのバンドの過去音源についてはほとんど聴いてきておらず、過去作の比較がどうとか、あまり偉そうなことは言えないのです。

 

そのため、本作はバンド創設時からギタリストをずっと続けてきたマイク・ジフリンガーが脱退し、新たにマーティン・フュリアなるギタリストを加入させて、心機一転を図った作品なのですが、僕にとってはアルバムをガッツリ聴き込むのは本作がほぼ初めて。どこがどのように変化したのか感じることはできず...。まあ折を見て過去の代表作も色々掘り下げてみるとします。

 

さて、そんな大きなメンバーチェンジを経て生まれた本作ですが、内容として潔いまでにダーティーでアグレッシヴなスラッシュメタル。スピードナンバーを多めに配し、切れ味鋭いリフが支配的。噛み付くように叫び、時折ひっくり返りそうになるハイトーンを披露するヴォーカルも相まって、「これぞスラッシュメタル!」と言い切りたくなる快作。

 

川嶋未来さんのライナーによると、本作は過去作に比べて正統的なヘヴィメタル色が強くなり、シンプルでストレートな作りになっているとのこと。プログレッシヴな音を好むマイクが脱退したことで、ヴォーカルであるシュミーアの意向が反映されやすくなった結果らしい。

 

このブログでも何度か書いてますが、基本的に僕はプログレッシヴメタルは苦手で、わかりやすくストレートな音作りを好むリスナー。もしライナー通りの結果により本作が生まれたとするなら、前任のマイクがいる体制を好むオールドファンには申し訳ない言い方になるものの、より僕好みのスタンスになってくれてありがたい。

 

スラッシュメタルの命であるリフがどこを切っても強靭であり、ツインギターの強みを活かし、二つの旋律(というにはかなりアグレッシヴですが)が絡み合うギターソロも導入されていて、聴いていて自然と頭を振りたくなってしまう音。

 

ロディアスだったりドラマチックだったりといった要素は薄いため(一部のギターソロなどに少し含まれる程度)、個人的にはちょっと単調な印象が無きにしも非ず。ただ、それは言い換えればピュアスラッシュを徹底していると言うことで、KREATORがメロディックすぎると感じる、根っからのスラッシャーの方は本作の方が気に入るかもしれません。

 

ほとんどが疾走チューンで構成されている痛快な出来ですが、その中に混じるM4「Repent Your Sins」や、M8「Tormented Soul」のような、グルーヴィーと形容できそうなヘヴィリフで押し進む、ミドルチューンの出来も良い。やっぱりリフがザクザクして聴きごたえがあるからなんでしょうね。疾走曲以外はイマイチという結果に陥っていないのは高ポイント。M10「The Lonely Wolf」のゴリゴリなリフの気持ち良さも素晴らしいです。

 

疾走チューンにハズレはなく、どの曲もゾクゾクとした高揚感に満ちていますが、特にM3「No Faith In Humanity」と、M9「Servant Of The Beast」はキラーと言っていいですね!前者はスラッシーなリフさばきは言わずもがなですが、中盤のツインギターの見事なギターソロに酔わされます。後者はイントロの高速ノコギリのようなリフから期待値が高まり、サビ(と言っていいのかな?)直前のブリッジにおける、ドラムとリフの交錯がメチャクチャにカッコいい。

 

ラストのM13「City Baby Attacked By Rats」は、ハードコアパンクバンド・G.B.H.の同名曲のカバー。元々スラッシュメタルがハードコアの系譜に位置する音楽だから当然っちゃ当然ですが、何ら違和感の無いアレンジで良き。まあ曲が曲だけに、メタルというよりかはハードコア的なアグレッションが目立ちますが。

 

 

個人的に本作は

"スピード感あふれるリフと、微メロディアスなツインギターソロを武器とし、徹底的にスラッシュメタルを貫き通した痛快作"

という感じです。

 


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KREATOR 『Hate Über Alles』

  • 衝撃的メンバーチェンジから初のフルアルバム
  • 従来作よりテンポを落としメロウさに磨きをかけた
  • 疾走曲のクオリティーは言うことなし!最強!

 

ついに出ました、ドイツが誇るスラッシュメタルの帝王・KREATORの5年ぶりの最新作。

 

スラッシュメタルの帝王はSLAYERじゃないか、と言われるかもしれませんが、個人的にはKREATORはそんなSLAYERとも並び称される帝王のポジションにいると思っています。

 

凄まじい快作であった前作『Gods Of Violence』から、ベーシストのクリスチャン・ギースラーが脱退し、後任としてDragonForceのフレデリク・ルクレークが加入、それもDragonForceの新作が発表される直前という、衝撃的な交代劇も記憶に新しいところ。

 

日本でメロディックメタルのファンをやっていたら、どうしても「フレデリク = DragonForceのベース」というイメージが強くて、彼がKREATORのMVに映っているのはどうも違和感が拭えないな〜...。

 

そんなメンバー交代を挟んでの本作ですが、方向性としては前作以前とほとんど変化はなし。KREATORらしい凶悪ながらメロディアス、ドラマチック・スラッシュメタルには寸分の狂いもありません。

 

ただ本作中、爆速スピードで突っ走る疾走チューンはさほど多くなく(前作も疾走しっぱなしのアルバムではなかったけど)、中盤から後半にかけてはややテンポを落として、メロディアスなアプローチを強めた曲がメインを張る。

 

基本的に僕は「スラッシュメタルは速くてナンボ」なクチなので(だいたいみんなそうでしょ?)、もう少しチョッパヤな曲を置いても良かったかな。とはいえ、スラッシュの生命線であるスピードを殺したところで、まったく邪悪なオーラが衰えないミレ・ペトロッツァのヴォーカル、サミ・ウリ=シルニヨの叙情性満載のリードギターにより、決して腑抜けた捨て曲なんか生み出さない手腕はさすが。

 

邪悪な疾走ビートと、堂々たるメロディックなミドルテンポを交錯させたM7「Conquer And Destroy」、細かく刻まれるリフの切れ味に、どこか神秘的な歌メロが魅力のM8「Midnight Sun」は、女性ヴォーカルが歌い上げる瞬間もあり、彼らのメロディアスな側面において新たな魅力を生み出しています。特に前者のサビなんかはハイライトたりえる場面です。

 

リフとリードのコンビネーションが絶妙で、ザクザクのリフに溺れながらメロディーを堪能できるM5「Strongest Of The Strong」、ズンズンと力強く叩きつけるドラムに、緊迫感を増して唸りを上げるギターが気持ちよく、後半で聴けるドラマチックな哀愁のリードギターが感動的なM10「Pride Comes Before The Fall」など、ミドル曲はどれこもこれも粒ぞろいで飽きさせない。

 

不満をしいて挙げるとするなら、クライマックスの楽曲であるM11「Dying Planet」が、前作の「Death Becomes My Light」ほどの美しさを演出する曲ではなかったので、聴き終えたあとの印象の良さは前作に分があるかな?というところか。

 

そして疾走曲については、もはや何も言うまい。あまりの高揚感に打ち震えるばかりですよ。M2「Hate Über Alles」は、現在のKREATORというバンドに求めるものすべてが詰め込まれた、本作を代表するキラーチューン。そこからノンストップで続くM3「Killer Of Jesus」も負けず劣らずのドラマチック・スラッシュで最高。リフのカッコよさがエゲツないレベルまで磨かれています。

 

もはやスラッシュメタルというフィールドにおいて、彼らほどの境地に達しているバンドは(少なくとも2022年現在では)他にいないんじゃないでしょうか。邪悪さも攻撃性も保ったまま、ここまでメロディアスな音楽として聴かせるバランス感覚、もはやシーン随一でしょう。

 

5年の期間が空いて、メンバーが交代したとしても、KREATORという存在がブレることはない。そんなことを確信させてくれる1枚。名盤です。

 

 

個人的に本作は

"全体的な疾走感はやや減退するも、スラッシュらしい邪悪な攻撃性を落とさず、極限までメロディーに磨きをかけたドラマチック・スラッシュメタル"

という感じです。

 


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IN FLAMES 『Lunar Strain』

  • 北欧メロデス創世記の名盤
  • 慟哭ギターの他、アコギを大胆に使った北欧情緒が満載
  • 洗練とは無縁のアングラ臭が強め

 

前回ARCH ENEMYの1stアルバムについて書いたので、その次はまあこのバンドですかね。同じく北欧メロデスシーンにおける代表格であり、現在はオルタナティヴな音楽性で、ワールドワイドに活躍するIN FLAMESの1stです。

 

メロデス時代のIN FLAMESの音楽性における中心人物、イェスパー・ストロムブラードを有しつつ、現在のバンドの看板であるアンダース・フリーデンはまだこの時点で不在。ヴォーカルをとるのはDark Tranquillityのヴォーカルであるミカエル・スタンネ。

 

イェスパーとミカエルの組み合わせといえば、今年のDownload Festivalで来日も決定している、THE HALO EFFECTの活動にも期待がかかりますよね。先行されているシングル曲を聴く限り、イェスパーらしいギターはしっかり聴けそうで、アルバムのリリースも待ち遠しいです。

 


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90年代初頭からどんどん隆盛していくスウェディッシュ・デスメタルのシーンの流れに乗るように、1994年にリリースされた本作。サウンドの質感は紛れもなくアングラ臭満載のデスメタルであり、音質もかなりチープ。演奏も疾走パートでイマイチリズムが安定していなかったりと、どうにもこなれていない印象が強い。

 

しかし、イェスパーによる叙情性を多量に含んだ哀愁のリードギターのフレーズ、チープながらも焦燥感、退廃的ムードをしっかりと醸し出すデスメタルらしいリフの魅力は、この時点で顔を出していることがわかります。

 

いわゆる「イエテボリサウンド」というヤツでしょうか。イェスパーがギタリストとして在籍していたCEREMONIAL OATH(1stアルバムのジャケットがメッチャキモい)あたりが土壌を作ったサウンドの質感。後年になって、このサウンドの最高到達点と言ってもいい傑作『Colony』をリリースするのですが、それはまだ先のお話。この時点では正直洗練されているとは言い難いです。

 

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しかしこのいかにもデスメタルってな感じの、ドロドロした音質は、これはこれで趣があって嫌いじゃないですね。洗練されたラウドでシャープな音も好きですが、こういった音にも味がある。

 

その魅力が端的に表されているのが、メロディックデスメタルというジャンルを語る上で外せない名曲M1「Behind Space(大学時代のエクストリームメタル好きの講師が「奇跡の名曲」と言ってた)

 

叩きつけるようなアグレッシヴなドラムに、メロディアスな慟哭リフで疾走、ところどころテンポチェンジを繰り返しつつ、ラストにかけて一気に盛り上がってから、ストンと静寂に包まれ、メロウなアコギにより儚く締められる。

 

この曲は上述した『Colony』で再録されていますが、そこで聴ける洗練された音作りでは、この曲の魅力は100%出せていないと思っています。メロディックデスメタル黎明期だからこそ生まれた魅力です。

 

北欧土着的な民謡風フレーズからインパクト大であり、そこから叙情メロデスへとスタートさせるM3「Starforsaken」に、スピードを抑えてヘヴィなリフを主軸としながらも、どうしようもないほど悲しみに溢れたフレーズで満ちたM5「Everlost Pt.1」、リードギターに注目しがちな音楽性ながら、刻まれるリフがなかなかにカッコいい疾走曲M9「Upon An Oaken Throne」など、古き良きスウェディッシュ・メロディックデスメタルの連続。

 

そしてこのアルバムの特徴として、ノーマルなメロデススタイルのみならず、アコースティックサウンドと女性ヴォーカルを大胆に導入していることが挙げられます。

 

前述したM1のアコギの使い方はもちろん、M5と組曲形式となるM6「Everlost Pt.2」は、アコギの伴奏と女性ヴォーカルのみが淡々と歌い上げる楽曲で、メロデスのメの字もない。さらにそこから続くM7「Hårgalåten」は、弦楽器による同名のスウェーデン民謡のインスト。アグレッシヴな慟哭一辺倒ではない多様性が支配的で、他のメロデスアルバムとの差別化につながっています。

 

まあ、個人的には純然たる慟哭メロデスナンバーで固めている方が好きではあるんですけどね(笑) この北欧由来のクサメロは、心に強く響くものがあります。

 

なお、僕が持っているのは95年に発売された国内盤で、本編終了後にミニアルバム『Subterranean』の楽曲がセットで収録されていて、全16曲、1時間を超える収録時間になっています。

 

お得っちゃお得かもしれませんが、エクストリームメタルを長時間聴くのは疲れるんで、個人的にはさほどありがたくはないな。『Subterranean』持ってるし。

 

 

個人的に本作は

"北欧土着のスウェディッシュ・デスメタル黎明期の空気を色濃く残した慟哭メロデスの元祖"

という感じです。

 

 

ARCH ENEMY 『Black Earth』

 

ここんところ、amorphisにGladenfoldと、北欧メロデス(二組とも純然なメロデスとは言い難いですが)を聴き込んでいたので、その流れに乗って北欧メロデス界の代表格のアルバムも聴いていました。

 

日本のメタルシーンにおいては、もはや説明不要と言えるくらいまでのポジションにまで至ったARCH ENEMY。残念ながら延期になってしまったものの、今年発売のアルバムにも期待がかかるところです(「予期せぬ事態が発生したため」とのことですが、延期の理由ってどれも大体そういうもんじゃ)

 

そんな彼らの新作に期待をかけつつ、ここ数日よく聴いていたのが1stアルバム。メロデスの歴史を語る上では欠かせない名盤ですね。

 

もともとはエクストリーム極まりないグラインドコアをプレイするバンドだったCARCASSに加入し、残虐なサウンドに哀愁のメロディーという新たな血を流し込み、名盤を生み出したギタリストのマイケル・アモットが、友人であったヨハン・リーヴァと再会したことをきっかけに生まれたバンド(もともとはマイケルのプロジェクト的存在だったらしい)

 

本作はデスメタルというアンダーグラウンドな音楽らしく、ひしゃげて潰れたような歪みのギターリフが中心となり、過激で禍々しく、概して退廃的。CARCASSの名盤『Heartwork』のサウンドから大きくは変わらない雰囲気で、デスメタル志向の人にも受け入れられやすいかと思われます。

 

そして本作の、というかARCH ENEMYのキモであるマイケル・アモットの叙情性抜群のリードギター。これが、そんなデスメタルらしい邪悪なムードを邪魔せずに、バッチリ音楽の中へと溶け込んでいます。

 

M1「Bury Me An Angel」は、本作の路線をオープニングから高らかに示す、メロデス界永遠の名曲。ダイナミックに舞い踊る泣きのリードギターが大盤振る舞いで、途中のスローパートにおけるもの悲しい旋律にも、心震えるものがあります。

 

そのままの勢いを引き継ぎ、ARCH ENEMYデスメタルの王道を進むM2「Dark Insanity」に、リフのヘヴィさとアグレッションがさらに強調されたM4「Idolatress」、IN FLAMESを彷彿させるアコースティックパートから、強烈な泣きを発散するツインリードが炸裂するM5「Cosmic Retribution」と、ダークでアグレッシヴ、かつメロディアスな楽曲が立て続く。

 

ボートラを除くラストのM9「Field Of Desolation」は、疾走感こそやや控えめながら、退廃的なムードをプンプンに放つリフがズルズルと進み行き、流麗なツインリードで泣きを表現する名曲。ただこの曲においては、3rd『Burning Bridges』において、ラストのギターソロを大幅に拡張させたバージョンが収録されているので、そっちを聴いた方がいいかも。

 

ボートラを入れても全11曲、そのうち3曲がインストで、総収録時間は40分に満たないというボリュームの薄さがネックになるかもですが、それはすなわち長時間聴き続けることによるダレとは無縁ということでもあり、必ずしもマイナス点ではないですね。

 

このアルバムが日本においてヒットし、リリース後の来日公演でかなりの好感触をメンバーが得たことにより、ARCH ENEMYを単発のプロジェクトではなく、継続したバンドにすることを決意した、というエピソードもあるらしく、日本のエクストリームメタルシーンにおいても特に重要作と言えます。

 

 

個人的に本作は

"退廃的なデスメタルを主軸に、強烈な泣きを帯びたギターを導入したメロディックデスメタルの歴史的名盤"

という感じです。

 


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この映像ではヨハンがギターヴォーカルやってるっぽく映ってるけど、昔はギター抱えてやってたの?それともただの演出?