先日のPUNKSPRINGで一応のライヴ見納めを済ませたSUM 41。これをもって解散してしまうのか...と思うと、やはり寂しいものがあります。
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青春時代に刻まれたバンドだけに、ライヴ後に何かブログで取り上げたいと思い、本作の感想でも書いてみようかと思いましてですね。2002年発表の2ndフルアルバムです。「SUM 41を語る上で、まずフルアルバム1枚を挙げて!」と言われたら、恐らく大半の人がこの作品名を挙げるのではないでしょうか。
前作『All Killer No Filler』からわずか1年で発表された1枚ですが、その作風から明らかにサウンドの質が変化。SUM 41サウンドのイメージは本作で作り上げられたようなもの。
SUM 41のサウンドイメージである「パンク×メタル」。前作の時点でも「Pain For Pleasure」のようなモロにメタルな楽曲はあったものの、どちらかというとジョークというか、ボーナストラックに近い感触のものでした。
翻って本作はというと、メロディアスなパンクロックという骨格はそのまま保持しつつ、グッとタイトでメタリックな演奏の比重が増しています。メタルヘッズであるデイヴ・バクシュの本領発揮と言わんばかりに、ハードなギターワークが支配的。それに合わせてポップパンク然とした、底抜けに楽しいムードもかなり減っており、全体的にシリアスです。
このデイヴのメタルギターこそが、SUM 41を「その他大勢のポップパンクバンド」ではなく、「SUM 41」たらしめるものですね。このサウンドに当時のパンクキッズはどっぷりバンドにハマったようですが、そうなるのも頷ける魔力がこのアルバムにはあります。
まあ、このメタル好きが行きすぎてしまって、次作『Chuck』ではパンク要素よりメタル要素の方が濃いのでは?と思うようなアルバム(それはそれで良い!)になって、他メンバーと軋轢が生じてしまい、その後脱退することになってしまうようですが...
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本作の時点ではメタル要素の馴染み具合、バランス感が非常に良い塩梅で調整されていて、前述した通り主軸となるのはメロディックなパンクです。M4「Still Waiting」は、そんな本作の路線を象徴する名曲。メタリックかつ疾走感のある演奏、パンクらしい衝動を感じるシャウトに、涙腺を刺激する哀愁たっぷりのコーラスと、聴きどころ満載のメタルパンクアンセム!
「Fat Lip」で聴けたようなラップが繰り出されるM9「Thanks For Nothing」も、メロディアスながら弾けるポップなムードはなく、パンキッシュながらシリアスなのも、路線変更を強く感じさせますね。
アルバムの幕開けとしてこれ以上ないほどの役目を果たす、ハード&キャッチーなM1「The Hell Song」、非常にメロディックでキャッチーなサビ、キレのあるギターソロが大きな魅力となるM6「No Brains」、本作中特にメタルの要素が強い疾走ナンバーM8「Mr. Amsterdam」あたりは、ポップすぎる楽曲が苦手な人にすらアピールするであろうメタルパンクですね。
キッズを熱狂させるメロディー、パンクらしい破壊的エナジー、そして大きな個性となるヘヴィメタリックな演奏。これらが全て取り揃えられた00年代を代表するパンクロック大名盤。
脱退したデイヴ・バクシュが戻ってきてからの近年の作品も、メタリックなパンクロックという路線は貫いているのですが、本作ほどの中毒性あるキャッチーさは控えめになっているというのが本音ですね。やはりこの作品はバンドが波に乗り、脂も乗り、最高潮に高まった時だからこそリリースできた、奇跡の一作だったのでしょう。
個人的に本作は
"メロディックなパンクにメタルなサウンドを絶妙なバランスでブレンドし、バンドの"パンクメタル"イメージを作った名盤"
という感じです。