ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

3/16 PUNKSPRING 2024 Day 1 at 幕張メッセ

以前このブログでも書いたことがありますが、僕の青春時代を彩るピースとして、洋楽の入り口になってくれた存在として、SUM 41がいるんですよ。

 

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僕の音楽のキャパシティを広げ、イキリたい気持ちを抱えがちだった自分の拠り所として機能してくれたバンド。そんな彼らが解散を発表し、今回のジャパンツアーが最後の来日公演になる。

 

まあ、つい先日あっさりとSLAYERが永眠から目覚めたし、いろいろなバンドが再結成をしているので、彼らについてもまた動き出す時が来る可能性もありますが、青春と隣り合わせだった存在が無くなるという事実は変わらない。僕と同様の喪失感を覚えた人は、他に山ほどいらっしゃるはずでしょう。

 

そして関東での彼らのラストライヴは、ツアーの一環として出演するPUNKSPRING。初日のトリを務める姿こそが最後。これはもう観にいくしかありません。

 

同日にSable HillsとCROSSFAITHという激アツ対バンがあったり、千葉ジェッツ天皇杯勝戦(優勝おめでとうございます!)があったりと、他にも興味を惹かれる存在があったものの、それらの誘惑を振り切り、海浜幕張へと降り立ちました。

 

しかし、駅を降りてみると少々違和感が。パンクスよりもオタクっぽい見た目の人や、痛バッグを持った女性などの姿の方が目につく。

 

どうやら同じ幕張メッセにて、VTuberグループのホロライブ関連のイベントがあるようでした。パンクスとVTuberファンが大挙して押し寄せてくる海浜幕張駅は、一般客からは異様な光景に映ったことでしょうね(笑)

 

ホロライブファンの列にちょろっと混ざったあと、9-11番ホールへと続く道へ移動。PUNKSPRING2日間のうち、ホルモン・ハイスタ効果のためか2日目はソールドアウトしていたのですが、この日はGOLDチケットも残っていた模様。また、前半のメンツがそこまで日本で人気の高いバンドではないこともあってか、人集まりは結構少なめ。

 

去年11月に開催されたNEX_FESTで、開場前からとんでもないくらいの長蛇の列ができていたのが記憶に新しいので、それに比べるとどうしても寂しさを感じてしまう集客でしたね...。まあ後半になるにつれどんどん増えてはいきましたけど。

 

パンクロックは本来、貧しい労働者階級の怒りの声のはずですが、そんなパンクの精神に真っ向から反対する、"高い金を払って快適な方を選択する"GOLDチケットを購入した僕は、並んでから結構早い段階で会場入りすることが可能となる。パンクへの冒涜と取られても仕方があるまい。LOUD PARKでGOLDの快適さを知っちゃったんだよ。

 

クロークに上着と荷物を預けて、軽装になった状態でメッセ内部へと突入。オープニングアクトの花冷え。まであまり時間はないので、とりあえずサクッと食べられそうなハラミ串を胃に入れて、フロアへと突入しました。

 

 

 

 

花冷え。

オープニングアクトということで、短い時間ではあるもののトップバッターを飾るのは花冷え。NEX_FESTでは遠めの位置から、Limp Bizkitのゲスト、そして本日はオープニングと、短い間に何気に観るのは3度目になります。

 

朝イチのため人付きはあまりなく、メンバー自身もアウェイ気味の会場であると判断しているためか、ステージアクションは今まで観てきた時と比べてやや控えめ。各自の持ち場でしっかりと仕事をこなしているような感じ。バンドのはっちゃけまくった魅力は、完全には伝わっていないかも。

 

とはいえ、わずかな楽曲の中でもギャルっぽい歌声と狂気のシャウトのスイッチ、アグレッションがありつつも非常にタイトにまとまった演奏はバッチリ。小規模ながら最前付近ではモッシュピットも発生していました。

 

そんなピットの様子を見て「ほら、もう曲始まる前から広がってるけど」と指摘し、さらにモッシュの勢いを加速させるショウ運びもあり、気持ちよく観られました。

 

 

The Linda Lindas

まったく存在を知らなかったのですが、日本映画およびブルーハーツの有名曲にインスパイアされたガールズパンクバンドとのこと。飯食いがてら後ろの方でゆっくり鑑賞。

 

PUNK IPAなるビール片手に。一口も飲んでない状態でこの量、それで800円とはなかなかだな...

 

メンバーの見た目が、およそパンクバンドっぽくなく、ドラムなんてちょっと上品な学生みたいな感じだし、ベースヴォーカルは快活なスポーツ少女みたい。

 

というか、このバンドのWikipediaを見て愕然としたんですけど、全員が00年代生まれどころか、ドラムに至っては2010年生まれの13歳ってマジですか!?そんな年齢でこの大舞台に立つとはすごいな...

 

曲の入りで逐一ドラムカウントから始まったり、MCが少々口下手っぽかったり、あんまりプロっぽくない印象を受けてたのですが、この若さならそりゃしょうがないか。むしろ垢抜けない感じと生真面目な雰囲気は、魅力にもなるかもしれません。

 

演奏はラフで、ヴォーカルも上手ではない、ロックンロール的ノリの良さを残した楽曲と、本日のメンツで一番パンクロックらしいパンクロックをプレイしていたのはこのバンドだったかもしれません。

 

最後にはバンド名の元ネタにもなっている、ブルーハーツの「リンダリンダ」のカバー。ここで一番の歓声が上がり、後ろの方からもどんどん手が上がっているのが見て取れ、やはり名曲のパワーってすごいな〜と思った次第。

 

 

YOU ME AT SIX

GOLDチケットのみが入れる前方ブロックへ行くと、最前の手すりにもスペースが空いていることに気づく。大型フェスの最前ってなかなか観られない経験だぞ!と思い、YOU ME AT SIXは(端っこではあるものの)最前から観ることに。

 

かなり近いな!

この規模のフェスで、バンドのパフォーマンスをガッツリ肉眼で視認できるのは嬉しいところ。

 

このバンドについてもロクに知らなかったのですが、以前にも来日経験はあるバンドで、やってる音楽はオルタナやポストグランジっぽい質感を備えたもの。ハードコアとしての音作りではなく、疾走メロコア要素をより抑えめにしたRISE AGAINSTみたいな感じですかね。

 

メンバー全員がスタイリッシュなルックスでかっこいい。パンク的な荒さは見られず、適度にオシャレで適度にアグレッシヴ。カッチリとまとまったバンドアンサンブルも、心地良いグルーヴ感がある。モッシュで大暴れするようなタイプではないですか、パフォーマンスのレベルは高い。サークルピットを促すMCをしたのに、その後にプレイされた曲が全然サークル向きじゃなかったのはどうかと思いましたけどね(笑)

 

個人的にはもっと荒削りでもいいから、メロディーはキャッチーで疾走してて...というタイプの曲が好きなので、ハマるとは言い難いのですが、ロックのライヴとして普通に観てて楽しめました。サマソニとかフジロックとかの方が合うかもしれない。

 

アー写では5人いたはずなのに、ステージ上にはベーシスト不在の4人だったのはなんでだったんだろ?ベースの音はしっかり聴こえてたので、バックでスタッフが弾いてたりしたんかな?同期音源っぽくは聴こえなかったし。

 

 

この後はSHAKALABBITSのステージがあるのですが、NECK DEEPからトリのSUM 41までぶっ通しということを考えると、ここでちゃんと休憩しておかないと体力的にマズいと判断し、ここでしっかりフェス飯補給タイムとすることに。

 

タレカツ丼をムシャムシャしながら、11番ホールのベンチに座って休憩したり、ブースの商品をチェックしたりしながら、しばしゆったりとした時間を過ごす。会場内には過去のPUNKSPRINGのポスターが展示されていたのですが、初期のものと現在において、チケット代の差に愕然...。マジで1万円も安いの...?

 

 

NECK DEEP

2012年結成のポップパンクバンド。最新作をチョロっとサブスクで聴いたくらいですが、その王道中の王道を貫く爽快なポップパンクは、ライヴで絶対盛り上がるだろうと思っていたので、結構期待していたアクトです。

 

そしてライヴは、その期待に充分に応える痛快なものでしたね。小細工や余計な要素を完全に廃し、ポップパンクのライヴとは何たるかを、これ以上ないほど表現したもの。馴染みのない曲であっても、単純に観てて楽しい。

 

何よりもメンバーのパフォーマンスの勢いがあるのが良い!ヴォーカルは動き回って全身を躍動させ、ギタリストはグルングルン回って、隙あらばオーディエンスを煽り散らす。楽器弾きながら飛び跳ねて回って...というイキの良い姿は、何となく昔のDragonForceを思い出しました。

 

そんな元気あふれるアグレッションに注目しがちですが、何気に動き回っていてもヴォーカルと演奏が非常に安定していたのもポイント。難しいことこそしてませんが、普通に「上手くね!?」と思いました。

 

サークルピットを左右のブロックに促すシーンもあり、先ほどのYOU ME AT SIXとは違って(笑)、ちゃんとモッシュピットを形成して盛り上がりやすい楽曲ばかりのため、サークルの勢いも削がれない。こりゃ盛り上がるわい。

 

ラストの曲は、これまでの曲とは少しテンポはゆったりしていたのですが、それでもなお弾けるようなエナジーが落ちないのが、バンドのパワフルさを象徴するかのようでした。何となく、このバンドのステージから「PUNKSPRINGが始まった!」って感じでした。

 

 

SUICIDAL TENDENCIES

つい先日、Slipknotを脱退したジェイ・ワインバーグが加入したニュースで騒がせた、ハードコアパンクバンド。このバンドを観るのは、WARPED TOUR以来の6年ぶり。あれから6年も経ったのかよ。

 

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あの時は凄まじい勢いの運動会が開催されていましたが、本日もほぼ同様...かと思えばそうでもない感じ?もちろんサークルが生まれて、みんながドタドタ駆け回る瞬間もあったのですが、割とおとなしめの人たちも多い。

 

今日のメンツはポップパンクやメロディック系のバンドが強いので、スラッシーなハードコアはあまり好みじゃないという人が多かったのかも。始まる前のSTコールも、そこまで大音量ではなかったし。

 

しかしバンドのパフォーマンスは素晴らしい!ロボットダンスとは似て非なる動きで、オーディエンスを扇動しつつ、気の良い笑顔を振り撒くマイク・ミューアは存在感抜群。アンプに乗ってジャンプしながらステージを動き回る楽器隊の熱量もあり、スピーディーな楽曲の良さも相まって、テンションが下降しません。

 

途中でタイ・トゥルージロによるスラップを交えたベースソロを挿入し、さらにこれまでのアクトでは一切聴けなかったバスドラ連打、速弾きギターソロもあるので、メタルファンに優しい音だったのも個人的に嬉しかったですね。こういう音を聴くと「ホームに帰ってきた」って気になっちゃうな。

 

しかしMETALLICAのロバート・トゥルージロがもともといたバンドに、彼の息子がその意思を継ぐかのようにバンドに加入し、凄腕のパフォーマンスを大舞台で披露するっていうのは、なかなかドラマがあっていいですね。

 

 

Zebrahead

海外パンクアクトでは、SNUFFに継ぐ新日家として知られる、PUNKSPRINGお馴染みの存在。直前まで知らなかったのですが、ヴォーカルのマッティ・ルイスは脱退してしまっているらしい。

 

しかし、そんなバンドの体制変化は気にさせないくらい、彼らのライヴは楽しくてゴキゲン。アグレッシヴなラップと、タッピングを交えた速弾き、ビーチボールやゴムボート(スタッフIN)をフロアに投げ入れる派手さと、とにかく観てる人を高揚させるアッパーな雰囲気が楽しい。

 

「ベンちゃん、元気!?」「オナニー大好き!」と、日本語を使ったバカみたいなMCももちろん健在。オーディエンス全員に肩を組ませて、和やかに横揺れさせたあとの、強烈なモッシュピット誘発疾走、「The Perfect Crime」によるどデカいサークルピットの発生など、緩急の付け方がすごい。

 

ライヴ自体はZebrahead節の効いた楽しいものでしたが、新加入のエイドリアンのヴォーカルは少々通りが悪く、マッティ在籍時の印象を超えるほどのものではなかったかな。これはまあしょうがない。

 

「Worse Than This」や「Save Your Breath」といった僕の好きな今日はプレイされませんでしたが、パーティーロックによる盛り上がりはかなりのもの。総じて満足度は非常に高かったです。

 

ただ、サークルピットを促したと思ったら、すぐに全員を座らせてせっかくのサークルを崩してしまったのはどうなんでしょう。YOU ME AT SIXしかり、なぜサークルを有効活用しないのか。

 

 

SUM 41

開始前にDJ BOOさんから「これで見納めですよ!」とMCが入る。解散前の最後のステージ(ツアーはまだ少し続きますが)となるため、目に焼き付けるためにかなり前の方へ移動。

 

前半は人集まりが良くなかった会場も、SUM 41の最後の勇姿を見ようと多くの人が詰めかけ、前方の人工密度はかなりのものに。The OffspringGREEN DAYの楽曲が開演前SEとして流れ、この時点で合唱が巻き起こるなど、オーディエンスの士気も高い。

 

そしてSEが流れ出し、電飾がギラギラしたドラムセットと、過去作のCDジャケットがコラージュされたバックドロップが目を引く中メンバーが登場。オープニングは「Motivation」で、この時点ですさまじい圧縮により一気に前へと詰めることに。

 

そしてエンジンに火がついたのが名曲「The Hell Song」。Downloadでもこの曲でテンション爆発しましたが、やはりこの曲のパワーは素晴らしい!イントロの印象的なギターメロディーから、グイグイとオーディエンスのモッシュを誘発し、無数の手が振り上げられる。

 

充分な身動きができないくらいの圧迫の中、「Over My Head (Better Off Dead)」「No Reason」という、容赦なしの二連打で沸点へ!アルバムの流れ通りに来ることは予想してましたが、「No Reason」がこんな序盤から投下されるとは。

 

頭っから名曲を乱発してこの後大丈夫?とちょっと心配したくなるような出だしでしたが、もちろんライヴとしてのテンションが落ちることはない。シリアスな疾走感でサークルピットを生み出す「Out For Blood」に、ポップパンクの代名詞と言えるような「Underclass Hero」と、タイプの異なる楽曲で盛り上げつつ、「Walking Disaster」では、スマホライトを点灯させて会場に無数の光の粒を作り上げて、幻想的なムードを発する。

 

ギターヴォーカルとスタンドマイクを使い分けるデリックのパフォーマンスは華があって、相変わらずカッコいいカリスマフロントマンぶり。楽器隊3人がお立ち台に並んで、タイトな演奏を見せつけつつ、フランクによるツーバスが効いた強烈な疾走ドラムが光る。

 

SUM 41のメタルな面を担保するデイヴのギターはさすがの一言で、メタリックなリフとソロ、両面においてサウンドの存在感が非常に強い。デリックが"Metal heads!"と呼びかけてから始まった「We're All To Blame」のリフの強靭さたるや、凄まじいものがありました。モッシュというよりもヘッドバンギングがしたくなる。

 

"Sacrifice!"のシンガロングと共に発生した特大のモッシュピットには、僕も飛び込まざるを得ず、久々にパンクらしいガチのモッシュした感じですね。直近ではBRAHMANのライヴとか行ってますけど、ほら、BRAHMANモッシュというよりは肉弾戦なので...

 

ちょっと残念だったのは、名盤『Does This Look Infected?』からの「My Direction」「No Brains」「All Messed Up」がメドレー形式になっていて、すぐに終わったことかな。どれも良い曲だし、「No Brains」ではサークルピットに参加するくらいテンション上がったので、全部やってくれてもよかったのに。

 

Download Festivalでも披露されたQUEENの「We Will Rock You」カバーもプレイし、ラストは「Fat Lip」「Still Waiting」「In Too Deep」という、SUM 41を象徴する名曲3連発がラスト。特に「Still Waiting」は、メタリックなサウンドと哀愁の疾走メロコア要素が完璧なバランスで融合した名曲ゆえに、ここにきてさらにモッシュピットの勢いは増し、喉を枯らす勢いでシンガロングに興じました。

 

この名曲の連打さえしてしまえば、このまま終わってしまっても何の文句もないのですが、アンコールとして1曲、初期の楽曲から「Summer」をラストにプレイ。どこかカラッとしつつもエモ的な哀愁感もある楽曲で、楽しげでありつつも、祭りの終わりを仄かに感じさせる寂しさを纏ったエンディングとなりました。

 

いつぞやのSLAYERのような感傷的ムードになるのかと思いきや、かつて観たライヴのテンションそのままに良いライヴをやってくれました。特別何か感動的な演出とかがあるわけでもない、変にしんみりさせるようなMCも無し、自然体のパンクパフォーマンスだったため、会場からもさほど悲壮感は出ていませんでしたね。

 

 

DJ BOOさんの「やっぱりパンクって良いですね!」という締めのMCを聞きながら、どんどん人が退出していくフロアを見渡す。やはりお祭り騒ぎの後の空気感になると寂しいものがありますね。

 

翌日は、これまたラストの来日になるとされているNOFXがトリを務めるのですが、とりあえず僕のPUNKSPRINGはこれにて終了!全体通して充実していましたが、特にNECK DEEPから続く後半は非常に良かったですね。

 

ただ、1ステージしかないから、今までよりもフェスっぽい雰囲気やムードは少々控えめだったかもしれませんね...。休憩しつつ全部のアクトが観られるというのはありがたいのですが、タイムテーブルとにらめっこしながら「次はどれ観ようか!?」と悩む楽しみもあったりするので...。

UPON STONE 『Dead Mother Moon』

 

前回に引き続きメロディックデスメタルについて書こうかな。今回取り上げるのは今年に発表された新譜になります。

 

アメリカはカリフォルニア出身の、メロディックデスメタルバンド・UPON STONEの1stアルバム。これまでEPのリリースはあるようですが、フルアルバムは本作が初めて。

 

気になるのはまず出身ですよね。カリフォルニア!ロサンゼルスのようなイケイケの大都市とか、西海岸のスケートパンクとか、そういったイメージ。まったくもってメロデスの印象はない。

 

さらに音楽性は、それに輪をかけてカリフォルニアっぽくない。音だけ聴けばアメリカのバンドとはとても思えず、北欧のバンドだと認識してしまうでしょう。発せられるオーラが寒々しいもん。全然温暖じゃないよ。

 

音の質感は一昔前のスウェディッシュデスメタルっぽい感じでしょうか。90年代に勃興した、元祖メロデスサウンドを現代に蘇らせたような印象があり、ややノイジーで潰れたような歪みのギターは、「ああ、確かにメロデスってこういう感じの音出してるイメージあるわ〜」と言いたくなっちゃうようなシロモノ。2024年発表のアルバムでこの音を出すとは、メンバー自身「あの頃のメロデス」を再現しようと意図的に仕組んでいるのでしょうきっと。

 

去年、ガチのIN FLAMESフォロワーであるMAJESTIESがアルバムを発表し、90年代型メロデスの継承者として局所的に話題を呼んでいましたが、それに続けと言わんばかりのバンドですね。リバイバルブームでも起きるのでしょうか。

 

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バスドラ連打を多用しながらアップテンポで展開し、ひしゃげたギターが叙情性を含んだ慟哭リフをザクザクと刻んでいく。時折メロウさがバリバリと目立ったギターソロも飛び出し、古き良き叙情メロデスを愛するリスナーのツボを的確に刺激してくる。

 

演奏自体はそこまで特筆するところはなく(強いて挙げれば疾走パートのドラム、表と裏がひっくり返ってるような箇所ありません?)、このバンドならではの個性みたいなものは薄いですが、モダンさとは無縁のアングラ臭、哀愁溢れるスタンダードなメロデスの魅力がたっぷり。

 

どの曲も総じてメロディアスで捨て曲は無い。ザラついた質感のギターリフに、ここぞというところで切り込まれるギターソロ、噛み付くようなしゃがれたデスヴォイス、う〜〜〜ん、これぞメロディックデスメタル

 

疾走部だけでなく、M4「Dusk Sang Fairest」のようなスロー曲(後半に思いっきりブラストするが)においてもギターが非常にメランコリックな旋律を奏で、退屈さを感じさせないフックを備えているのも嬉しい。さらに30分ちょいという短さもあり、聴き疲れもなく慟哭リフに身を浸すことができます。

 

どの曲も押し並べて質は高いですが、安定しているが故に際立ったキラーチューンが無いとも言えるでしょうかね。まああえて挙げるとするなら、つんのめるようなブラストで爆走した後、切れ味と泣きを兼ね備えたリフ、リードで疾走しまくるM2「Onyx Through The Heart」かな。後半にちょっと顔を出す勇壮なメロがまた良いんだな!

 

ヘヴィさ重視のモダンな質感、Children Of Bodom的なキラキラド派手サウンドは皆無、ひたすらに叙情的なメロディーで駆け抜ける、潔い直球メロディックデスメタル作品でした。小細工無用、とにかくメロデスらしいメロデスで哭きたいんだ!という人にとっては、その欲求を十分に満たしてくれますよ。

 

 

個人的に本作は

"90年代的な北欧情緒、アングラなムードを漂わせた古き良きメロデス。リフでもリードでも、終始かき鳴らされるメランコリックなメロディーが大きな武器"

という感じです。

 


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WHISPERED 『Shogunate Macabre』

 

前回RYUJINのアルバム感想を書いた際に、「そういえば和の世界観をメインに据えた、Children Of Bodom型のメロデスって他にもいたよな〜」と思い、CDラックから引っ張ってきました。

 

フィンランド出身の歌舞伎メタルバンド・WHISPEREDが、2014年に発表した2ndフルアルバム。国内盤リリースされて局所的に話題を呼んでいたようなので、知ってる人も結構多いのではないでしょうか。

 

本作がリリースされた当時、僕は大学生でCDショップでバイトをしており、社員さんから「なんか今歌舞伎メタルバンドって怪しいヤツが出てきてるんだけど知ってる?」と話しかけられ、それがきっかけで購入しました。

 

歌舞伎メタルバンドってなんぞや?と思う人もいるかもしれませんが、要は和楽器の音色を大幅に導入し、日本古来の情緒を演出してるんです。先日のRYUJINと同様に、ルーツはChildren Of Bodomと思われる、楽器がキラキラとド派手に舞うメロデススタイルです。

 

歌詞のテーマには源義家とか、天照大神とか、カッパとか雪女とかが使われ、三味線や胡弓の音色を積極的に取り入れる。国内盤ボーナストラックは『銀牙 -流れ星 銀-(フィンランドではかなりの人気作らしい)のテーマソングに、FFのBGMのカバーをそれぞれ収録してるし、アー写は歌舞伎役者の格好で日本刀所持と、筋金入りのニッポン贔屓っぷりを見せています。

 

僕は歌舞伎については「白塗りにした役者が"勘定奉行にお任せあれポーズ"をとってる」「苗字、中村・市川がち」くらいの知識しかないので、この音が歌舞伎の世界観をちゃんと表現できているかはわからん。ただ、日本的な情緒はしっかりと出せているのではないかと。

 

見てくれやバンドコンセプトだけですと、ネタ臭いイロモノバンドみたいですが、その音楽はというと非常にハイクオリティー和楽器の音色が大量に使われていながらも、それらが邪魔になったり、あざとくなりすぎたりすることがない。COB的キラキラ疾走メロデスサウンドに、和要素がしっかりと落とし込まれています。

 

どうしても和楽器によるアレンジに耳が行きがちになりますが、曲の骨格はあくまでメロディックデスメタルであるところがキモなんですよね。大仰なオーケストレーションにより、映画的な劇的さ、緊迫感を演出しているのもあり、アグレッシヴなメタルとしての出来の良さがしっかりと担保されているのが嬉しい。単なるイロモノに終わらない。

 

この「和の要素が非常に強いにも関わらず、あくまで基本線はメロデスからブレない」という、絶妙なバランス感覚こそ本作の魅力でしょうね。作曲担当であるヨウニ・ヴァルヤッカのセンスの良さが光ってます。

 

そんなバンドの強みが特に強く発揮されているのがM7「Unrestrained」で、これぞまさにChildren Of Bodomタイプのメロデスと、和のサウンドが見事に調和したキラーチューン。ギターメロディー自体のキャッチーさもすこぶる良く、短い中にメロデスのロマンとダイナミズムが凝縮されています。

 

メロウなギターと共に疾走しつつ、和楽器の美しい響き、合戦の怒号が響き渡るM2「Hold The Sword」に、不気味さと神々しさを併せ持つサビが印象的なM3「Fallen Amaterasu」、戦士の勇ましいムードがシンフォアレンジでしっかりと表現された10分越えの大作M8「Upon My Honor」など、どの楽曲にも耳を惹きつけるフックが備わっています。

 

コンセプトはイロモノなれど、その実態は紛れもなくホンモノ。どれだけニッポン要素をゴリ押そうとも、根底にあるのは「カッコいいメロデス」であるところが素晴らしいです。ネタ臭いメタルを苦手とするような人でも、ここまで洗練された内容であれば抵抗なく聴けるのでは。

 

 

個人的に本作は

"和楽器によるアレンジを大々的に取り入れた、ニッポン贔屓メロデス。スタンスこそイロモノ臭いが、COB型ド派手メロデスとしてのクオリティーが非常に高い"

という感じです。

 


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RYUJIN 『RYUJIN』

  • RYUJINとして名前と音楽性を変えリスタート
  • 良くも悪くも全面に出てくる純邦楽要素
  • ロディアスなギターの強さは変わらず

 

リードギターが奏でるクサメロ」という点において、他の追随を許さないほどのメロディアスさを誇り、そのドラマチックな旋律の荒ぶりで国内外で活動をしていた、メロディックデスメタルバンド・GYZE。

 

そんなGYZEの中心人物であるRYOJIさんが、海外でのライヴ活動にて、各国のバンドを間近で観ることにより、日本のバンドとしてのアイデンティティを強く意識するようになったらしい。そこから「雅楽とメタルを融合させて、他のバンドが出していない音を出す」という方法論を思い立ったんだとか。

 

シングルの『龍吟』、および4thフルアルバム『ASIAN CHAOS』は、そんな日本人メタルバンドとしての意識が表質したかのように、日本的なメロディーが色濃く出ていたので、2018年ごろから変化の兆候はありました。

 

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2020年代に入ると、その方向性はさらに強調されるようになり、やれサムライだとかニンジャだとか、イロモノニッポン的な価値観を押し出すようになる。この頃から「GYZEだいぶ変わったなぁ...」と思うようになっていました。

 

そしてそれだけに飽き足らず、とうとうバンドコンセプトを「純邦楽を取り入れたメタル」に絞り、バンド名をRYUJINに変更、ナパームレコードに日本人バンドとして初めて契約し、TRIVIUMのマシュー・キイチ・ヒーフィーをプロデューサー(一部楽曲ではヴォーカルも担当)に迎えて新作を出すというニュースが出ることとなりました。

 

なおこの改名を、バンド側は「昇格」という表現にこだわっているのですが、それじゃせっかく実家の美容室から取り、10年以上バンド名として掲げていたGYZEという名前が格下みたいな感じになってしまうのですが、それでいいんですかね?

 

まあ前置きが長くなりましたが、そんな経緯で発表されたGYZEあらためRYUJINの1stフルアルバム。優れたメロディーセンスを持つRYOJIさんのことですし、大手なパームレコードからのリリースというのもありますし、楽曲のクオリティーは概して高い。

 

ただ、『ASIAN CHAOS』の時点でニッポン推しがややくどいと感じてしまった僕としては、本作は(というか今のバンドの方向性そのもの)やりすぎの域に到達してしまっており、イマイチハマりきれない感じ。

 

いや、もちろんメロディアスな旋律はちゃんと含まれていて、その点は良いんですよ。非常にキャッチーでフックある歌メロが牽引するバラード調のM5「THE RAINBOW SONG」に、フォークメタルらしい翳りが抜群に効いたM6「KUNNECUP」、ポップとも言えるほど潤沢なメロディーが溢れるギターソロを持つM7「SCREAM OF THE DRAGON」の三連発は普通に良くて印象に残りやすい。

 

M8「GEKIRIN」の高速ビートに乗ったギターソロ、シャウトのバックで歌うように奏でられるリードギターには、GYZE時代の名残がしっかりと息づいています。こういうメロウさの演出においては、やはりこのバンドは強いなと思わせられます。

 

ただ、やっぱりニッポン要素を押し出しまくった弊害なのか何なのか、単純にGYZEの頃に聴けたような、激烈に琴線を掻きむしってくるかのような哀愁が、全体的に削がれているようなのが気になりますね...。「DAY OF THE FUNERAL」とか、「NORTHERN HELL SONG」とかは、もっと直球に泣きのツボを刺激する旋律が大盤振る舞いでしたが、本作はそういったストレートな泣きが少々物足りない。

 

まあそういった過去の姿にとらわれなければ(それが難しいのですが)、充分にメロディアスで勢いのあるメタルとして聴けますけどね。メロディックメタルファンが本作を評価するなら、濃すぎる純邦楽要素を肯定的に受け止められるか否かにかかっているかと。

 

ちなみに国内盤ボーナストラックのM12「EVERYTIME I DIE」は、彼らのルーツであるChildren Of Bodomの同名曲カバーで、これまた見事に雅楽チックなアレンジが満載。これを「バンドのカラーを織り込ませた個性的なカバー」と捉えるか、「ニッポン要素をムリクリ押し込んで、雰囲気を壊している」と捉えるかは、だいぶ微妙なところですね...

 

 

個人的に本作は

"GYZE時代にあったメロウなギターと派手なサウンドは健在。大幅に導入された純邦楽要素に代わって、ストレートな泣きの哀愁度は薄れているような..."

という感じです。

 


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3/3 BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024 LEGEND - MM at 横浜アリーナ

メタルダンスユニット・BABYMETALのワールドツアー最終盤、横浜アリーナ公演の二日目に行ってきました。MOMOMETALが正式メンバーになってからのラインナップは、去年の11月にNEX_FESTで観ていますが、単独はこれが初めてです。

 

当日3月3日は、その新メンバーであるMOMOMETALの誕生日ということで、タイトルにはる「LEGEND - MM」も、彼女の存在をフィーチャーしたものであることはすぐにわかります。

 

会場となる横浜アリーナは、去年Bリーグの決勝戦千葉ジェッツ琉球ゴールデンキングスの試合で1度来たことがあり(僕が応援してたジェッツは残念ながら敗北)、ライヴで来るのは初。横浜からさらに電車の乗り換えが発生し、自宅からもかなり遠い。ライヴが始まるまでちょっと横浜の街をブラついてみようかと思ったものの、移動時間が長くなりすぎてそんな余裕はなかった。

 

会場に到着すると、すでにたくさんのファンが列をなしている。BABYMETALのライヴは、メンバーのコスプレをしている女性客や、神バンドの格好で白塗りをしている人など、奇抜な見た目のお客さんが多く、周りを見渡しているだけで結構面白かったりします。僕はレザーのジャケットにLOUD PARKTシャツという、とくに面白みのないフツーのメタルっぽい装いにしました。

 

僕はスタンディングフロアの最後方となるJブロックで、入場するのにもかなり時間を要する。アリーナに入り、装着が義務付けられている神器(自動的に光る腕輪)を左手首に巻いて、荷物をロビーのコインロッカーに入れた後、再びアリーナのブロックへ。

 

 

開演前のAVENGED SEVENFOLDやLORNA SHOREのBGMを聴きながら待っていると、少しだけ照明が暗くなり、ステージ横のスクリーンにオーディエンスの様子が映し出される。海外からのファンや子供連れなども非常に多く、改めてBABYMETALという存在が幅広い層の心を掴んでいることがわかります(Sabatonのヨアキムのコスプレをする剛の者もいました笑)

 

ちなみに会場内をスクリーンで映している際のBGMは、BABYMETALが参加しているBRING ME THE HORIZONの「Kingslayer」で、開演前BGMであるにも関わらず、サークルを作っていたり、モッシュに励んでいる人もいたらしい。

 

早くも場内の温度が高くなっている中暗転し、BABYMETALのライヴで恒例になっている開演前の映像がステージ後ろのスクリーンにデカデカと流れ出す。そのままオープニングの「BABYMETAL DEATH」へ繋がる。

 

"DEATH! DEATH! DEATH! DEATH!"の掛け声と共に、Xジャンプのようにオーディエンスが飛び跳ね、BABYMETALメンバーがステージ中央で隊列を組む。僕の位置からでは、前の人の頭の間からチラッと見える程度でしたが。

 

そして「Distortion」に入ると、メンバー3人が花道の先にある円状のステージへと移動。そこがせり上がってくることにより、壇上の3人をしっかりと視認できるようになる。このステージは後方の人にも優しくてありがたい。僕のすぐ後ろでモッシュピットがガンガン唸っているため、じっくりと観ることはままならないですが。

 

序盤にちょっと気になったのは、SU-METALのヴォーカルがいつになく調子悪目だったところでしょうか。ハイトーンの伸びが若干か細く聴こえ、安定性もやや欠ける印象でコンディションが整っていなさそう。

 

特に「Elevator Girl」はロクにヴォーカルが聴こえない瞬間がありましたが、これはさすがにマイクというか音響の問題でしょうね。後半になるにつれて気にならなくなってきたので、体が温まってきたことで本来の調子を取り戻せたのかもしれません。

 

中盤には「Believing」「Brand New Days」「Starlight」といった、ミディアムナンバーが連続で登場し、熱気が少し落ち着くことに。大会場ならではのライティングが一番効果的だったのが「Brand New Days」で、レーザー光の乱舞に、大型スクリーンに映る幻想的なイメージ映像が、没入感をかなり高めていました。単純な歌メロだけであれば「Starlight」の方が好きなんですが、ライヴ映えという点ではこちらが一番だったと思います。

 

スクリーンにデカデカとトム・モレロが映る「メタり!!」では、後半の"ここで踊らにゃいつ踊る?メタり!メタり!"の部分にて、本日の主役であるMOMOMETALが、歌舞伎役者のごとく見得を切る。そのまま座らせていたオーディエンスを一斉にジャンプさせ、中盤で少し落ちた会場の熱量がエンジンをふかし直したように湧き上がりました。

 

その後は「ギミチョコ!!」、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」という初期の鉄板曲で、熱気を落とす事なく後半へ。後者では、寝起きでバタつく様子を表した振り付けを笑顔で行っており、「そういえばBABYMETALって、元は普通のアイドルだったんだよな」という事実に改めて気付かされました。海外まで活動規模が大きくなり、楽曲もどんどんシリアスになっていったから、こういう姿を見るのはちょっと新鮮。

 

本編では、前述した「メタり!!」の一幕くらいしか前面に出てくることはなかったMOMOMETALが、最も注目されたのはアンコールから。桃太郎をモチーフとした映像が流れ、「桃から生まれたメタ太郎!」というフレーズに導かれるように、フロア中央の天井から吊り下げられた、ゴンドラのような台に立ったMOMOMETALがゆっくりと降りてくる。これは、高所恐怖症の人からすれば一発アウトな演出だ。

 

ここで配られた神器が一斉に桃色に光る。僕の装着してる神器は調子が悪いのか、みんなの奴が一様に光っているなか、全然反応を見せず、指でグリグリ力を加えたりしてようやくビカビカと光だす有様。しっかりしてくれよ、おいっ。

 

最初の歌い出しをMOMOMETALが一任した「META!メタ太郎」で"META!"のシンガロングを巻き起こして、アンコールの口火を切ったあと、ラストはメロスピ曲「Arkadia」。

 

この曲はBABYMETALの曲の中でも、一際メロディックメタルとしての魅力がストレートに伝わる曲のため、ライヴで聴く事ができるのは嬉しい限り。ただ前日には「Road of Resistance」をやっていたらしく、その曲でウォールオブデスに参加したかった身としては、ちょっとばかし「外された」感じが残るのも事実かな。

 

 

こうして1時間半ほどのフルセットのライヴが終了。NEX_FESTでも感じましたが、今のBABYMETALは走り回らせるようなアグレッシヴな曲をバンバン出すのではなく、ややテクニカルというか、変わり種の曲も積極的に聴かせる方針になっているみたいですね。

 

個人的にはライヴで聴きたいタイプの曲なら、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」みたいな王道の疾走曲あたりになるんですが、変化球な曲が多いのも、型にハマらないBABYMETALらしさと言えるのかもしれません。

 

冒頭に記したとおり、横アリは自宅からかなり遠い位置にあるんですが、この日は開演が17時と早かったので、帰宅時間が遅くなりすぎないのはありがたい。他のライヴも休日はこのくらいのスタート時間でやってくれるとありがたいかも。

Paledusk 『PALEHELL』

  • 様々な音楽性をブッ込んだ個性的すぎるサウンド
  • ヘヴィさと共存する超ポップなメロディー
  • 再生時間は短いのに中身は超濃密

 

初期は割りかし普通のモダンメタルコア/ポストハードコアバンドだったものの、ある時期を境に大きく音楽性が変容、デジタルサウンドやヒップホップ、トラップなど異ジャンルの音楽を臆面もなくブッ込むようになり、唯一無二の超個性派ヘヴィロックをプレイするようになったPaleduskの新作EP。

 

このバンド、何年か前にYouTubeでMVを見た時は「ああ、よくいるポストハードコア系ね」くらいしか思わず、特に掘り下げようともしなかったので、たまたまシングル「HAPPY TALK」を耳にした際は面食らいましたね。「え!何コレ!?」って。

 

そんな尖ったセンスが評価されたのか、BRING ME THE HORIZONやリル・ウージー・ヴァートといったアーティストの楽曲制作に、ギタリストのDAIDAIさんが携わることになったのもよく知られているところです。

 

ここ近年色々な楽曲をデジタルシングルとしてリリースしてきましたが、ここにきてフィジカル音源がようやく発表されました。このバンドがCDリリースするのって、結構稀みたいですね。

 

本作はリリース済みのデジタルシングルに新曲をプラスした全7曲、20分ちょいのコンパクトな1枚。曲ごとの時間も短いので、聴き疲れることなくサッと聴き通せるのですが、短い中にもバンドの個性がとんでもないくらい濃密に詰まっていて、非常に面白い作風に仕上がっているなと。

 

オープニングのM1「PALEHELL」は、モダンで密度の高いヘヴィサウンドで攻め立てるも、サビに当たるメロディーは、ポップと言い切ってしまえるほどにキャッチーで、聴けば1発で覚えてしまうのでは。

 

先行配信されたM4「RUMBLE」は、聴き手を置いてけぼりにしてしまうほどとカオスに振り切った変態的展開を経て、大きなスケールを描くコーラスへと至る様が非常にドラマチックな名曲。中盤の山場として充分以上に機能しています。この曲のMVを最初見た時のインパクトはデカかったな〜。1曲の中に収まる情報量じゃないもん。

 

M5「I'm ready to die for my friends」は、モダンメタルコアファンキーモンキーベイビーズが歌ってても違和感ないようなJ-POPメロが絡むという、ありえないファンタジーが実現したような奇天烈な楽曲だし、ラストのM7「Q2」は、パワフルなシャウトで畳み掛ける疾走曲ながら、ハードコア/メタルコアとしてはありえないほど希望に満ちたメロディーが支配的。CROSSFAITHのKoieさんがさすがのスクリームを披露しているのですが、怒りとはまったく違うポジティヴな感情が表出しています。

 

メタル、ハードコア、テクノ、ヒップホップ、J-POP、トラップなどなど、貪欲かつ何でもありの闇鍋的サウンド。普通ならヒッチャカメッチャカになってしまいそうですが、非常にキャッチーなメロディーを用いて、うまく1曲にまとめあげた手腕が活きており、十把一絡げなメタルコアとは完全に一線を画していますね...。好き嫌いは別として、衝撃度はかなりのものでしょう。

 

音楽性はかなり尖っているものの、前述したように聴き疲れを覚えたりすることはなく、これはひとえに音楽の根底にキャッチーさがあるからかな(それ故に「ポップすぎて受け付けない」という人もいると思いますが)

 

日本のメタルコア/ハードコアシーンでは、今やかなりの数の実力派バンドが現れていますが、こと"個性"という点においては、このバンドが抜きん出ているのではないでしょうか。ここまで各曲がキャラ立ちしまくってるメタルコアは、他を探してもそうそう見つかるもんじゃないと思います。

 

ここまでやりたい放題やっておいて、いまだに「作曲・編曲のアイディアが枯渇する気配がない」と言い切るソングライターのDAIDAIさんって、ひょっとして天才なのでは?

 

 

個人的に本作は

"短い中にありえないほどの音楽的エッセンスが詰め込まれた、超個性派エクストリームミュージック。どれだけカオスになっても根底にはキャッチーさがある"

という感じです。

 


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DIR EN GREY 『19990120』

  • 25年前のデビュー作リメイク
  • 初期ヴィジュアル系ロックを色濃く残すアレンジ
  • 「残」のみ近年のヴォーカルワークを混ぜ込んだ仕上がり

 

世界を股にかけるヘヴィロック/エクストリームメタルバンドとなったDIR EN GREYが、メジャーデビューから25年を経て発表した最新シングル。

 

1999年にX JAPANYOSHIKIさんプロデュースのもと、『ゆらめき』『残 -ZAN-』『アクロの丘』の3枚のシングルを同日発売することでメジャーデビューした彼ら。本作はそのデビュー日をそのままタイトルに冠し、表題曲3曲をリレコーディングした内容となっています。

 

一時期「残」「羅刹国」「OBSCURE」など、過去の楽曲を大きく形を変えて、狂気性を大幅に増したエクストリームナンバーにリメイクしていましたが、本作に収録された楽曲群は、そこまで様変わりしているわけではなく、概ね原曲の姿を踏襲したアレンジに仕上がっている印象です。

 

フィジカル音源としての前作『PHALARIS』では、ヘヴィで狂気的でありつつ、深淵な世界観がどこまでも広がっていくような味わい深い傑作でしたが、本作の音はそこまでがっちり作り込まれている感はなく、良くも悪くも初期のヴィジュアル系ロックの色が表出しています。バンギャの方にとってはこういう音の方が馴染みやすいのかな。

 

僕個人としては唯一無二の孤高のヘヴィロックを貫いた作風の方が好きなんですが、本作のような音も、これはこれで肩肘張らずに聴きやすい。聴く上での消費カロリーは少なめで済むかと。

 

M1「ゆらめき」とM3「アクロの丘」は、原曲の雰囲気を強く残した仕上がり。現在のエクストリームサウンドが定着した彼らが、こういった曲をプレイするのは何だか新鮮に感じますね。ヴォーカルにヴィジュアル系特有の癖が薄らぎ(無くなったわけではない)、M3については途中の語りやラスト1分くらいの静かなパートが無い分、結構聴きやすくなりました。

 

M2「残」は、バッキングのサウンドはヘヴィさの少ない、初期の頃を思わせるような感じですが、ヴォーカルパートは近年の京さんらしい狂気的な歌い回し(叫び回し?)で占められていて、ラストのサビは低音グロウルも登場。初期の「残 -ZAN-」と、リメイク後の「残」を折衷させたような具合ですね。ヴォーカルが若干引っ込んだように聞こえるのが気になりますが。

 

全体的に、ヴィジュアル系時代が好きだった人向けのアレンジが施されているので、『UROBOROS』以降の圧倒的な個性とオーラを纏った姿が好きな人(僕もそっちです)には、ちょっと軽いと感じちゃう出来かもしれませんね。

 

この作風については、メジャーデビィー当時の姿をある程度再現するという目論見があってのことだと思われます。早くも発表された次なる新曲「The Devil In Me」は、現在の彼ららしさを煮詰めた楽曲になるのでしょうか。それとも本作の「残」のような、過去と現在を融合させたような形になるのでしょうか。

 

 

個人的に本作は

"過去のヴィジュアル系ロック路線を、大きく変化させずに現代に蘇らせた一作。強めの癖が和らいだこともあり、全体的に聴きやすい仕上がり"

という感じです。

 


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